現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。今回は「衣料廃棄ロス問題」を特集。新品のまま衣服を捨てるアパレル業界のタブーに斬り込む。
ゴミ処理場に段ボール箱が次々と放り込まれる...その中身は全て新品の洋服。その数は約1500着。店頭に並ぶことなく切り刻まれて燃やされる。服の製造業者が、今回意を決して、その様子を取材班に見せてくれた。なぜこのようなことが行われるのか。
「得意先とのルールがあって、ブランド価値を下げないために廃棄となってしまっている」業者の1人が神妙な面持ちで話す。アパレルブランドで売る服は、こうした製造業者や問屋が発注を受けているものもある。発注後は海外などの工場に製造を委託し、できた製品をブランドに納めるが、キャンセルや売れ残った商品は、業者が抱え込むことになるという。
100円の新品コートも...廃棄ロスに新アプローチ
日本では1年間で29億着の衣服が供給されているが、半分以上の15億着が売れ残っているといわれ、その多くがブランド価値を保つために廃棄処分されている。こうした"衣服ロス"は今、大きな問題となっているのだ。そんな廃棄ロスの削減に取り組むアパレルショップが、東京や大阪を中心に10店舗を展開する激安店「カラーズ」だ。
100円のコートなど、新品のほとんどを1000円以下で販売。なぜここまでの安さが可能なのか。案内人・松下奈緒が聞くと、同店を運営する服の買い取り業者「ショーイチ」の山本昌一社長は「メーカーの過剰生産や納期遅れなどの理由でキャンセルされた品を並べている」と理由を明かす。業者から買い取り、店に届く品数は週に約1000点。「1000点入ったら1000点出ていく」「廃棄ロスをなくそうと立ち上げたビジネスなので必ず売り切る」と山本さんは胸を張る。
大阪にあるショーイチの倉庫には在庫が約100万点ある。もちろん全て新品だ。買い取った服を、業者が希望する条件を守りながら安く売るのが山本さんの商売。タグをハサミで切り、ノーブランド品として店頭やネットで販売する服も。
山本さんのもとには、連日、在庫を抱えて困った業者が訪れる。取引する企業は今や2300社にも上り、年商は16億円に達する。いまや業界で知らない人はいない買い取り業者に成長。山本さんの次なる目標は海外展開だ。「今の目標は日本だけでなく世界の在庫屋になること。世界も衣料ロスの問題が大きくなっている」と話す。
去年の暮れ、山本さんが飛んだのはアパレル輸出量世界2位の国・バングラデシュ。街中が業者であふれ、店頭には山積みの服が...。そんな活気ある街を歩く山本さんが目にしたのは、ゴミとして扱われる服の山だった。
「めちゃめちゃ在庫が余っていると思う。それを買って帰りたい」。さっそく地元の工場を視察。品質を確認した上で、「余った商品を売ってもらえないか」と交渉する山本さん。だが、工場側から「在庫を処分していることをブランド側に知られたくないから」と断られた。
その後も次々と工場を訪ね歩くが、輸送コストの問題から買い取り額で折り合いがつかない。成果が得られず落ち込む中、好転したのは滞在4日目のこと。あるブローカーが日本から買い取り業者が来たと聞き、接触してきたのだ。
大手も腰を上げた! 「ワールド」の新業態
55のブランドを持ち、2530店舗を展開するアパレル大手「ワールド」も衣服ロスに悩まされている。納期に間に合わせるため、半年以上前に売り上げを予測し新商品を発注するも、トレンド予測が確実に当たるわけではなく、100%売り切るのが難しいからだ。
一般的にアパレル業界では、定価で売れると見込んだ数の倍の服を作るといわれている。常に店頭に一定数が並んでいないと、店としての体裁が成り立たないからだ。しかし、この考え方が売れ残りを増やす大きな原因になっている。
「供給過剰を適正化していく動きは必ず出てくる」。ワールド・上山健二社長は、新たな展開を考える。
サステナビリティー(持続可能性)が声高に叫ばれる昨今、衣服ロスも、私たち消費者が考えるべき問題の一つになっている。私たちにとって身近な衣料はどう変化していくのか。