チャンネル登録者数100万人を超える人気ラーメンYouTuberのSUSURU。彼のラーメン愛ほとばしる動画は、人気俳優や人気バンドすらとりこにする。そして、元AKB48/HKT48メンバーにして、現在はタレント、アイドルプロデューサーとして活躍する指原莉乃も、彼のラーメン愛に魅了された一人だ。ラーメンという共通点で対面を果たした二人は、ともに昨今のトレンドとなった「好きを仕事に」を体現する者同士でもある。その道のトップを走る二人が考える、走り続けるために必要なこととは。(取材・文:田口俊輔/撮影:河邉有実莉/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
新しい土地に行くときは必ず「SUSURU 地名」で検索
「今日は本当に思い出に残る一日になります」
取材が始まって間もなく、SUSURUは緊張した面持ちでこう切り出した。2015年11月からYouTubeチャンネル「SUSURU TV.」をスタートし、「毎日ラーメン健康生活」と銘打って、大手チェーン店から知る人ぞ知る名店まで、ひたすらラーメンをすすり続ける動画を投稿する大人気YouTuberだ。俳優の吉沢亮、ロックバンド・マキシマム ザ ホルモンのメンバーも彼のファンを公言している。
その彼が緊張をほとばしらせる対談相手は指原莉乃。2007年にAKB48の5期生として芸能界入りし、現在はタレント、アイドルグループのプロデューサーとして、八面六臂の活躍をみせる。その彼女は無類のラーメン好きであり、SNSやバラエティー番組でたびたびSUSURUを紹介するほどの熱心な視聴者だ。
指原がふと最近気になるラーメンについての話を振ると、まだどこか硬かったSUSURUの口は滑らかに語り始める。ラーメンがつないだ友好の輪だ。
SUSURU「指原さんのことはずっと拝見してきましたし、ありがたいことに『SUSURU TV.を見てこの店に行きました!』ともツイートしてくださっていて。それで実際にお会いしたら、全てのことに『ありがとう』『うれしい』と感謝されていて」
指原「私がSUSURUさんを見始めたのは3~4年前かな? 新しい土地に行くときは必ず『SUSURU 地名』で調べますし、引っ越すときも近くにSUSURUさんが紹介したラーメン屋がないか調べるぐらい、ずっと見ていますから。ラーメンは好きなのに、食事制限などもあってあまり食べられる環境になくて。なので、人が食べる系の動画を見ては『ああ、満足』ってなっているんです。なかでもSUSURUさんの動画は、ラーメンをしっかり紹介してくださるし食べ方もきれいで、間のナレーションも声がいいし、話の内容もキャッチーで耳に残る……語弊があるかもしれませんが、本当に、本当に、いい意味でシンプル。そこがすごく好きです」
SUSURU「その感想、一番うれしい。見やすさや、画面がパンパン切り替わっていくテンポ感をすごく意識しながら動画を作っているんですよ。そのこだわりの部分に気づいてもらえているのはうれしいですよ」
「やりたくないけれど、将来のためにやっておく」はよくない
この数年でトレンドとなった「好きを仕事に」という流れ。アイドルに憧れ、アイドルシーンのトップへと駆け上がり、今は「=LOVE」や「≠ME」などアイドルのプロデュースを手掛ける指原。かたや、好きなラーメンを食べ続けることが、今や仕事になったSUSURU。ともに見事に「好きを仕事に」を体現している。しかし、その「好き」を持続させるにも、たゆまぬ努力があったはずだ。
たとえば指原は、2013年の「AKB48 32ndシングル 選抜総選挙」で1位になり、AKB48グループのトップに立つまで、2008年のデビューから5年を要した。その間、自分自身の見せ方をいかにして築き上げてきたのだろうか。
指原「みなさんが思うような答えじゃなくて申し訳ないんですが、私は先輩方、スタッフさんが作ったものの上に、スルッとうまく乗っかったタイプなんです。AKB48に入ったときは、すでに先輩方が土台を築き上げていらして。外に出ても……たとえば『笑っていいとも!』に出ていた頃は、タモリさんが常に気をかけてくださったからうまくいけただけ。気づいたらここにいた、という実感なんです」
SUSURU「いやいや、指原さんは裏側で努力をめちゃくちゃしているはず」
指原「何も考えずに走ってきたんです。ただただ、グループが仲良く、活動が楽しくて。『あれが嫌だった』という思い出より、みんな仲良くて楽しかったなっていう思い出のほうが多いぐらい。それにいまプロデュースしているアイドルも、いま手掛けているコスメも、自分が好きなものを形にしていたら、気づくとその好きな層の人が応援してくれるようになっていただけなんです。SUSURUさんは私が知った頃にはすでに超有名人ですけど、苦労はありました?」
SUSURU「僕も本当に、ただ好きなことをやっているだけです。YouTubeは『続けること』が大変なのですが、自然体でいれば長く続けられるし、『僕が好きなものを好きになってくれる人がいたらうれしい!』という気持ちのほうがモチベーション高くできますからね。なので動画も最初から対象年齢や『この層に向けよう!』とは考えず、自分のことを見てくれる人に対してマッチする動画を届けられればいいなって作っているんですよ」
指原「うん、『やりたくないけれど、将来のためにやっとくか!』っていうことはしないほうがいいですよね。自分がしんどくなっちゃったら長くも続かないし、きっとよくない結果にもなりますからね」
信じてくれる子のために、真剣に向き合わないといけない
SUSURUの初となる著書『毎日ラーメン健康生活 SUSURUが選ぶ!極上のラーメン84杯』(双葉社)の発売記念として、SUSURU TV.で4月に初コラボを果たした二人。「仕事をする上で最大の喜びは?」と聞くと、ともに「自分のしてきたことを褒められる瞬間」と答えた。苦慮したことでも答えは一致した。それは“グループ/チームである”ということだ。
現在3グループ・計35人のアイドルをプロデュースする指原。撮影・編集・脚本など、動画作りの全てをSUSURU LAB.の3人で運営するSUSURU。ともにチームの先頭として牽引する立場にある二人には責任感も付きまとう。
指原「やはり私もメンバーも人間なので、違うなと思うことがあれば、お互いに不満もたまっていくんですよ。その不満をぶつけられるときは大変だなと思います。けど文句を言われるのは当然。私も現役の頃は本当に申し訳ないのですが、秋元(康)さんにたくさん文句を言ってきたので(苦笑)」
SUSURU「へえ~! 抗議がきた場合はどうされるんですか?」
指原「たとえば長文のLINEが来たら、それよりも長い文を送ります。軽くスライドするだけでは全部見えないぐらいの長文(笑)」
SUSURU「アハハ!」
指原「きっと、送られる側はめちゃ怖いと思います。けど、怒っているんじゃないんですよ。『私はこう思っているよ』という、気持ちを全て真剣に、正直に伝えようと思ってのことで。やはりチームですからね。いつかはみんなが、多くの方に愛されるグループになってほしいと常に思っていますし、私を信じてついてきてくれた子たちのためにも愛されるグループにしないといけないなという責任感があるので、真剣に向き合わないといけないんです」
SUSURU「意見を伝えるのは大切ですよね。僕、毎日ラーメンを食べることは本当に好きなんです。ただ、『ラーメンを食べる瞬間をカメラで撮って、その動画をアップする』という作業に変わった段階で、好きなことの中に仕事の要素がたくさん詰まってくるわけです。その“仕事”をしているときは少しだけ『きついな』と思うこともあって。一時期、僕だけの稼働時間が増えて、一緒に動画を作ってくれている二人が今まで通りだったときは『なんで僕ばかり働いているんだ!?』と悩んだことがありましたね……まあ、僕はラーメン食べているだけなんですけど(笑)」
指原「SUSURUさんは、どうやって解決したんですか?」
SUSURU「登録者が増えてきたことで、『応援してくれる人たちのためにもやらないと。視聴者さんを裏切るわけにはいかない』という思いになれたのが大きかったですね。責任感が自分の中で芽生えてきて、『チームで上がっていこう!』となりました。こうした周りの力のおかげであることは、YouTubeを始めなければ絶対気づかなかったと思います」
与えられたこと以外の“プラスα”をこなすことが必要
キャリアは違えど、ともに自分の追い求めるものをまっすぐ楽しみながら追求する二人。同じような夢を目指す人たちにアドバイスするなら、何を伝えるのだろうか?
SUSURU「僕の場合は、『頑張ろう!』ではなく、息吸うぐらいの感覚で『ラーメンに触れる』ということを普段からやっています。この“息吸うぐらいに好き”という感覚が何事にも大事なんじゃないかなって。何かパッと振られたときに、とっさにラーメンの話ができるぐらいの人じゃないと、『この人、ラーメン好きなんだ』と思ってもらえないはずですからね」
指原「そういう意味では私、一つだけ人生で後悔していることがあって。それは『もっと勉強しておけばよかったな』と、すごく思うんです。この世界で生きるには、いろいろな知識が必要というのもありますし、そもそも私は『アイドルになりたい!』と思いこみすぎるあまり、勉強自体から遠ざかっていたタイプで(苦笑)。そのせいで、家で宿題以外の勉強をするという“努力の仕方”を身につけられなかったんです。知識はもちろん、『いろいろな努力の仕方をもっと早いうちから身につけておけば、もっと可能性が広がったのでは?』と、今になってすごく後悔しているんです。ぜひ若い方もベテランの方も、学べるうちに学んだほうがいいなと私は思いました」
SUSURU「与えられたことをこなすだけじゃなく、与えられたこと“プラスα”の部分を社会人になると求められますよね。僕も動画を始めるにあたって、ラーメンブロガーさんやライターさんのラーメン記事をよく読んで、その知恵を動画に落とし込むことをとにかく実践してきました。このラーメンの先輩方が残してきたものが、今の僕とSUSURU TV.にとっての大きな糧になっています。たとえ人が見ていなくても、小さいことでも積み重ねていくことは大事なことなんですよね」
指原莉乃(さしはら・りの)
1992年11月21日生まれ。大分県大分市出身。2007年、AKB48の5期生として芸能界入り。2011年には「笑っていいとも!」のレギュラーに選ばれ、タレント活動も本格的に開始。2012年6月からはHKT48のメンバーとして活動開始。2013年「AKB48 32ndシングル 選抜総選挙」で1位を獲得。2019年に48グループを卒業。2017年からはアイドルプロデューサーとしても始動、現在「=LOVE」「≠ME」「≒JOY」の3グループを手掛ける。また2021年にはYouTubeチャンネル「さしはらちゃんねる」、コスメブランド「Ririmew」を始動させるなど多岐にわたる活動を展開中。
SUSURU(すする)
1993年1月12日生まれ。青森県弘前市出身。2015年からYouTube上で「SUSURU TV.」をスタート。「毎日ラーメン健康生活」をモットーに、主に全国各地のラーメンに関するレビュー動画をYouTube上に投稿。2021年11月にはチャンネル登録者が100万人を突破した(2022年5月現在で105万人)。今年4月21日に初の著書『毎日ラーメン健康生活 SUSURUが選ぶ!極上のラーメン84杯』(双葉社)を上梓した。