年末の忘年会シーズンが落ち着いたら「新年だしダイエットを始めよう!」という人も多いと思う。でも普段から食事制限ダイエットやジムでのトレーニングをしているけど、なかなか痩せられない……と悩んでいない? 結果が出ない原因は、自分の体質的に合っていないからかも。そんな時は、個体差に合わせて適切な栄養素をとる「オーソモレキュラー」がおすすめ。細胞から栄養状態を整えることで、体の代謝が円滑になり脂肪を燃焼しやすい体になる方法を、あんどう口腔クリニック院長・安藤麻希子さんの著書『魔法の7つの食習慣 オーソモレキュラーダイエット』よりご紹介(「」内は本書より引用)。
現代人は栄養不足?
現代はコンビニ食やスーパーのレトルト商品など手軽で便利な商品が生活を支えてくれる。しかし、便利な一方で本来食材から取れるはずの栄養素が不足しているという。
安藤院長によると「ビタミンやミネラルが加工の過程で減少しています。食事の大部分がそういった商品であればエネルギーや糖質、脂質がとれても、実はタンパク質やビタミン・ミネラルが不足している、ということがとても多いのです。特にダイエットに関心の高い20代女性は、国が定めた食事摂取基準の推奨量をほとんど下回っています」
「オーソモレキュラー」って?
オーソとはギリシャ語で「正しい」、モレキュラーとは「分子」という意味をつなぎ合わせた造語。日本語でいう「分子整合栄養医学」や「分子栄養学」としても少しずつ認知されるようになってきた。
「分子栄養学の特徴はのひとつは、『個体差』を重視した考え方をもつことです。年齢や性差だけではなく、もっと細かく個々の状態に応じた栄養素を補給することで、病気の改善や日々のパフォーマンスアップが可能になります。例えば、『遺伝子的要因』『性別』『年齢』『成長期』『妊娠』『授乳中』『ストレス』『病気』『生活環境』『活動量』『食事内容』『消化力』『腸内環境』などさまざまな状況に応じて栄養必要量にも違いがあります」
古代の医学、アーユルヴェーダでも個体差が重要視されており、体質が違うとある人にとっては良い食材や食事法も別の人にとっては有害になることもあるという。では、一体どのような個体差があるのか? 分類を見てみよう。
5つの「個体差チェックリスト」であなたのタイプを見つけよう!
オーソモレキュラーには5つのタイプがある。各チェックリスト内の太字が1つ、もしくは細字が3つあったら、チェックリスト下にある各タイプが自分の体質かも。早速、5つのチェックリストに取り組んでみて。
【個体差チェックリスト①】
- 消化力ピロリ菌感染があるor感染症
- 便秘、軟便・下痢など便の形状はよくない
- おならが臭い
- 油物を食べると下痢や軟便になる
- 便器にベタっと便がつく
- 胃薬をよく飲む(胃酸抑制剤を服用している)
- 胆石などで胆のうを切除した
- 食欲がない・食が細く小食
- おならやげっぷが多い
- お腹が張る(膨満感がある)
- 朝食はあまり食べられない
- 毎日決まった時間に排便がない、時間がかかる
- 肉やタンパク質の量が多いと胃がもたれる
- 逆流性食道炎と診断されたことがある
- 発酵食品・食物繊維で胃腸の調子が悪くなる
上記に当てはまる人は……「消化力低下タイプ」
「これらが当てはまる場合、あなたの消化力は弱いかもしれません。消化力が弱いことを知らずに、タンパク質や脂質を意識してダイエットに取り組むと、最初はなんとか無理してタンパク質食材やプロテインドリンクを飲めても、徐々に消化力を越え、次第に腸内環境が悪くなり、違う不調に悩まされてしまうことはよくあることです」
【改善策】消化へのアプローチが最優先
胃の不快感や食欲が出ないといった原因のひとつが「ガス」による膨満感。胃の不快感や便秘・下痢などの症状がある場合は、消化へのアプローチを最優先に行うことが大切だという。過剰な細菌増殖を抑えガスの発生を減らす作用を持つ「胆汁酸」は肝臓で作られているため、肝臓がしっかり機能することも消化力アップには重要。
◆しっかり咀嚼する
◆酸味の食材を取り入れる
◆消化酵素サプリを取り入れる
(胆汁の分泌をサポートするタンポポ茶、杜仲茶を食事に取り入れる)
【個体差チェックリスト②】食後高血糖**食後に眠気が起きる
- BMI25以上
- 脂肪肝と診断された
- 中性脂肪が高いと指摘された
- 糖尿病もしくは糖尿病予備軍
- パンや麺類、丼ものなど糖質をよく食べる
- 糖尿病家系だ
- 年齢が40歳以上
- 睡眠不足である
- 夕食の時間が遅い
- 朝食を欠食する
- メンタル状態が悪い
- ストレスが多い
- 糖質制限をすると調子がいいと感じたことがある
- 運動や身体を動かすことが嫌い
上記に当てはまる人は……「食後高血糖タイプ」
「このタイプの方は、糖質を含む食事をとると血糖値が急上昇しやすい方です。またその後過剰なインスリン分泌があると血糖値は急降下します。高血糖により太りやすくなるのはもちろん、血糖値がジェットコースターのように乱高下することで、精神状態にも影響しイライラや不安などといった症状が現れる場合があります」
【改善策】血糖値に注目!
自分の血糖値状態を知ることがファーストステップ。最近では糖尿病患者さんの血糖値管理用センサー「Free Style リブレ」が発売されていてグルコースの推移をおおまかに把握することができる。また、食事を摂ると糖質ですぐに血糖値が上がってしまうので、まずは食べ順を意識することが大事。食前にレモン水や飲んだり、お酢を一食あたり大さじ1摂取することでも血糖値上昇を抑制する働きがある。
◆自分の血糖値の変動を知る
◆精製穀物やイモ類の摂取量に気をつける
◆食物繊維をしっかりとる
◆レモンや酢を上手に活用
◆食後のウォーキングや運動
◆睡眠をしっかりとる
【個体差チェックリスト③】慢性疲労朝起きるのが辛い
- 倦怠感、疲労感が強い
- 寝ても疲れがとれない
- 低血圧傾向だ(収縮期血圧100mmHg以下)
- 低血糖をおこしやすい
- 疲れているのに眠れない、昼夜逆転傾向がある
- 塩分への欲求が強い
- 睡眠の質が良くない(寝つきが悪い、夜間途中覚醒する)
- コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲料を1日に3杯以上飲む
- 月経異常や性欲減退がある
- アレルギーがある
- 腹部周りが最近太くなった
- やる気が出ない
- 食事の準備や片付けがとても大変
- ストレスが多い
上記に当てはまる人は……「慢性疲労タイプ」
「このタイプの方はストレス状態が長く続き、仕事や家事にと頑張り続けてきた方によく見られるケースです。最終的に疲弊しきった状態では、低血糖や低血圧になりやすく、午前中に不調が現れはじめ、朝起きるのが辛く、会社や学校に通うのも大変になっていきます」
【改善策】栄養とストレスケア
ストレスが多く慢性的な疲れがある場合は、食事量を制限してしまいがちだけど欠食することは不調を助長してしまう。そのため疲労感が強まり、体は餓死状態で低血糖があることもストレスと感じるため、こまめな食事や補食がとても大切になる。特に、朝起きるのが大変で午前中の不調が多く、寝付けない方は朝食をしっかり食べて体内リズムを回復させよう。
◆こまめなエネルギー補給
◆朝食を食べる
◆副腎をサポートする栄養素の補給
◆十分な睡眠
◆ストレスケア(森林浴、瞑想、深呼吸、軽めのウォーキングなど)
【個体差チェックリスト④】鉄欠乏性貧血月経量が多い
- 身長が急に伸びている
- 気分が落ち込みやすい、泣くことが多い
- 爪がもろく、へこみやそり爪がある
- 赤身肉など動物性タンパク質を食べることが少ない
- 胃の状態が悪い(ピロリ菌感染、萎縮胃、胃酸抑制剤の服用など)
- 動悸、息切れ、めまい
- 氷などの硬いものをかじりたい気持ちがある(異食症)
- 妊娠中、授乳中
- 成長期、月経のある女性
- 疲れやすい
- 甘いものへの欲求が強い
- 肌、粘膜などが弱い
- 喉の飲み込みが悪い(喉につかえた感じがある)
- 頭痛、肩こりがある
上記に当てはまる人は……「鉄欠乏性貧血タイプ」
「頭でわかっていても、甘いものが食べたくなる衝動が抑えられない方はまずこのタイプを疑いましょう。食事量そのものを制限し、肉や脂質を極端に避け一見健康的のように見えるサラダや植物性タンパク質の豆腐や豆乳などを摂っているケースが多いです。月経のある女性の食事量そのものの減少は栄養素全般の不足、特にタンパク質、鉄や亜鉛といったミネラルが不足しやすく、月経不順、肌やメンタルトラブル、不眠、疲労感などさまざまな不調の原因になります」
【改善策】鉄欠乏の原因によって対策もさまざま
鉄は体の中でタンパク質とセットで働くため、タンパク質の摂取もマスト。特に摂ってほしいものは動物性タンパク質、赤身肉やレバー。鉄欠乏性貧血の女性が同時に補給したい亜鉛やビタミンも多く含まれるからおすすめ。そのほかにも、小松菜やがんもどき、生揚げなども鉄分を多く含む。ビタミンCやクエン酸を一緒に摂ると鉄の吸収率を高める。
◆鉄欠乏の原因を知る
◆鉄を多く含む食材、特に動物性タンパク質を食事にとりいれよう
◆酸味と一緒に摂って吸収率アップ
◆胃腸環境も整えよう
【個体差チェックリスト⑤】基礎代謝低下低体温
- 食事の欠食、小食が多い
- 長年エネルギー制限のダイエットを繰り返している
- 厳格な糖質制限を行ったことがある
- 橋本病と診断されている
- 筋肉がついていない(筋肉量が減っている)
- 運動不足で座っている時間が長い
- 40歳以降の年齢
- 寒がり
- 手足が冷える
- 浮腫みやすい
- 便秘
- 疲れやすい
- 汗をかきづらい
- 太りやすい
上記に当てはまる人は……「基礎代謝低下タイプ」
「自分では気が付きづらい基礎代謝ですが、『何となく太りやすくなった』というのは代謝低下の危険信号です。安易なエネルギー制限は逆効果になる可能性があります。食べたら太りやすいため、食べない方向に走りがちですが、少しずつエネルギー補給しながら、運動もとりいれましょう」
【改善策】エネルギー不足を解消
このタイプの人は、エネルギー制限のダイエットや過度な運動は消してやらないで。食事・栄養を適切にとってしっかり代謝を上げていく必要が。三大栄養素の中でもタンパク質は食事誘発性熱産生が高く、タンパク質を消化吸収する時に熱が生まれエネルギーが消費されるから、3食の食事に必ずタンパク質を意識しよう。
◆こまめエネルギー補給
◆甲状腺に特に必要なミネラルの補給
◆タンパク質もしっかりとれる3食の食事
◆温活
◆腸活
いかがでしたか? 今まで「食事制限をしても痩せない」「すぐに体重が戻ってしまう」とダイエットがうまくいかなかった人も、分子整合栄養医学から自分の体質を知って適切な身体を整える方法を身につければ、目標の結果が得られるかも。ぜひ生活の中に取り入れてみて。