春は、花粉やほこりなどによる目の不調に目薬がありがたい時期です。パソコンやスマホの疲れ目をすっきりさせてくれるものなどもありますが、目薬のさし方については、量や、まばたきをする、しないなど誤解が多いといいます。
目薬の適量の理由
目薬を使うとき、1回に何滴さしているでしょうか。
ウェザーニュースで1回の目薬の量についてアンケート調査を行ったところ、1滴が57%と最も多い回答となる一方で、2滴が32%、3滴が6%、それ以上が5%と、2滴以上さしている人も少なくないようです(2022年4月7〜8日実施、8395人回答)。
横浜市立大学医学部眼科学教室主任教授の水木信久先生は、「目薬の適量は、片目につき1滴。気軽に使えるせいか、目薬については勘違いして使っている方が多い」と指摘します。
確かに、目薬は数滴さすことが多いかもしれません。目からこぼれてしまったり、目全体に行き渡っていないか不安なのです。
「目の中に溜められる涙の量は、20〜30μl(マイクロリットル)程度です。点眼薬の1滴の分量は、30〜50μl。つまり1滴でも十分な量があるので、2〜3滴さしてもあふれてしまいます」(水木先生)
目薬を多めにさすのは、無駄になるだけでなく悪影響の可能性もあるといいます。
「あふれた目薬に入っている成分が目の周囲の皮膚に付着すると、かゆみやかぶれのもとになったり、成分によっては色素沈着を起こすこともあります。
また、多量の目薬により涙を洗い流してしまうのも問題です。涙は油層・液層などの3層構造になっていて、角膜への栄養や酸素の補給、感染予防、傷の修復、目の乾燥を防ぐ役割をするためのさまざまな成分が含まれているからです」(水木先生)
目薬後のまばたきもNG?
水木先生によると、目薬のNGは他にもあるといいます。
「目薬をさした後のまばたきです。目薬を目全体に行き渡らせようと、まばたきする方もいるようですが逆効果です。目の構造上まばたきすると、目薬が目頭近くの管から鼻、喉の方へ排出されてしまいます。目薬をさした後は静かに目を閉じ、しばらく目頭のあたりを押さえると成分が吸収されやすくなります。
さし過ぎもよくありません。処方薬は処方の通り、市販薬でも使用上の注意にある1日の回数を守りましょう」(水木先生)
目薬の上手なさし方
正しい目薬のさし方を教えていただきましょう。
「点眼前に手を洗って清潔にします。目薬は片目に1滴ずつ。容器の先端がまぶたやまつげ、指に触れないようにしましょう。目薬をさしたら静かに目を閉じて、目頭を押さえしばらくそのままでいます。あふれた目薬はティッシュなどで優しく押さえ、ふき取りましょう。
また、特に高齢者の方などでは、しっかりと目に入らないことがあります。目から外れて瞼(まぶた)に落ちているケースもよくあります。そのため下眼瞼を引いて、そこにたらすように点眼する方法もおすすめです」(水木先生)
この時期は、花粉症による目のかゆみ対策で目薬を使う人も多くなります。
「洗眼用目薬で花粉やほこりを洗い流す場合も、1日の使用回数は守りましょう。抗アレルギー点眼薬は、かゆい時に点眼するのではなく、治療期間中は処方通りにさします。
メガネの着用や、こまめな掃除、洗濯物の内干しなどで、少しでも花粉が目に入らないよう工夫するのも大切です」(水木先生)
目薬は私たちの身近な薬です。正しく使うように心がけましょう。