多くの選手が今季限りでユニホームを脱いだ。第2の人生のスタートに向け、次の進路が決定した選手もいれば、未定という選手もいる。それぞれの新しい人生に挑戦する男たちの思いを伝える「第2の人生へプレーボール」。今回は阪神のアカデミーコーチ就任が決まった伊藤和雄投手(32)を紹介する。
振り返れば苦しいことばかりだった。肘、肩、足、腰…。プロ10年間、伊藤和はケガに泣かされ続けた。初勝利は9年目の2020年6月27日・DeNA戦(横浜)。唯一の白星は大切な思い出だが、2軍監督時代から期待してくれた矢野監督へ恩返しができたと思っていない。
「1軍で活躍できていないので。去年は31歳で主力になっていないといけない年齢。バリバリやらないといけなかった」
鮮烈な光を放った瞬間もある。育成選手として迎えた14年の開幕前。伊藤和は面白いように空振りを奪い、快投を重ねた。「自分でも何であんな球を投げられたのか分からない。育成に落ちたのが悔しかった」。投球フォームをシンプルな形に戻したことも奏功し、支配下に返り咲き。ブレークの予感が漂ったが、またもや故障に阻まれた。
今年11月に恩師の古葉竹識氏が急逝。再会を心待ちにしていた矢先の訃報だった。名将が東京国際大の監督に就任すると知って進学を決めた経緯があっただけに、感謝の思いは尽きない。
「プロに入れたのも古葉さんのおかげ。ピンチになると強気にいけ!と言われました」
来年からタイガースアカデミーコーチとして再出発する。「まずは一緒に楽しむことが大事だと思う」。恩師の教えとケガに苦しんだ経験を生かして、新たな一歩を踏み出す。
◆伊藤 和雄(いとう・かずお)1989年12月13日生まれ、32歳。埼玉県出身。186センチ、95キロ。右投げ右打ち。投手。坂戸西から東京国際大を経て、2011年度ドラフト4位で阪神入団。プロ1年目の12年10月3日・中日戦(ナゴヤドーム)で初登板初先発(敗戦)。13年シーズン終了後に育成契約となるが、14年4月に支配下復帰。通算成績は50試合1勝3敗1ホールド、防御率4.71。
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