いつも一緒に居残り練習に精を出し、練習後にふたり並んで仲良く用具の後片付けをしている。プロ2年目の堀内陽太は、3歳上の先輩でもある武田英寿に感謝していた。
「毎日、雑用の仕事を率先して手伝ってくれるんです。本来、ヒデくんはもうその役割をしなくてもいいのですが、『いいよ、俺もやるよ。自分も若手だから』って。後輩の面倒見が良くて、本当に優しいですね」
互いにメンバー外でホームゲームに足を運ぶときは、車を持っていない堀内を乗せてくれるという。途中でコンビニに寄れば、軽食までおごってもらうようだ。
「つい先日もコーヒーとグミを買ってもらいました。『何でも買っていいよ』と言ってくれるのですが、そこは遠慮して、なるべく安く抑えています。数百円程度のものです。やっぱり、悪い気がしますから。(ファジアーノ岡山に育成型期限付き移籍した)早川隼平は『これも、これも』という感じでたくさん買ってもらっていましたけどね(笑)」
クラブハウスのロッカーも隣同士。他愛もないプライベートからサッカーの話まで、コミュニケーションを取る頻度は多い。リラックスしているときは堀内のおすすめのアニメ、漫画を紹介することもある。
「王道の人気アニメを教えることもあるのですが、ヒデくんの反応を見るかぎり、どれもあまり興味なさそうな……。たぶん、僕の推したアニメは見ていないと思います」
趣味はどうやら違うものの、サッカーの会話は弾む。毎週のように試合メンバーに入れるかどうかを話している。5月3日の川崎フロンターレ戦で今季の明治安田J1リーグ初出場を果たした武田からは刺激を受けた。
「ヒデくんは練習の成果をしっかり出しています。普段からいつも100%で取り組んでいますからね。試合に絡んでいない時期も『やってやるぞ』という感じで、よく話しているんです。僕にとっては良いお手本であり、良きライバル。負けてはいられないなって。
でも、あのキック精度、シュート力はすごいですよ。自分と比べると、インパクトが全然違います。練習では多少コースが甘くなっても、GKはとれませんから。僕が持っていなくて、ヒデくんの持っているものはいくつもあります。攻撃のポジショニング、前を向くプレーなどは吸収していきたいです」
ふたりとも、インサイドハーフでプレーすることを得意としている。多くのタレントがひしめく激戦区になっているが、若手たちは地に足をつけてレベルアップに励んでいる。J1リーグ、YBCルヴァンカップと連戦が続く5月。チャンスを虎視眈々と狙っている。
(取材・文/杉園昌之)