5月29日、日曜日の昼下がり。夏を思わせる強い日差しが照らすなか、浦和レッズの練習グラウンド・大原サッカー場のスタンドはゆっくりと埋まっていった。
親子連れもいれば、おそろいのユニフォームを着用した夫婦、カップルもいる。正午前、クラブハウスから選手がひとり、またひとりと顔を出すと、そのたびに拍手が送られる。
大きなヘアバンドを巻いたアレクサンダー ショルツがにこやかな笑顔で手を振ると、それに応えるように拍手が大きくなった。
練習の開始前には、スタンドに向かって選手たちが一列に並んだ。キャプテンの西川周作は一歩前に出て、「みなさん、こんにちは」と明るい声で挨拶。そして、力強い言葉で語りかけた。
「僕らは天皇杯の連覇を目指して頑張っていきます。リーグ戦へのひとつのきっかけにしたいです。這い上がっていく自信はあります」
昨年12月7日以来となるトレーニングの一般公開。対象はREXCLUB会員限定ながら、約3500人の応募から60組120人が招待された。少しずつではあるが、コロナ禍前の日常を取り戻しつつある。ファンサービスを大事にしてきた西川は、感慨深そうだった。
「見たことのあるファン・サポーターも多くいて、うれしかったです」
5月28日のアビスパ福岡戦に出場した選手たちはリカバリーメニューを終えて、クラブハウスに引き上げたが、それ以外の選手たちは強度の高いトレーニングで大粒の汗を流していた。
白熱のバトルが繰り広げられたのは、ゴール前の場面を想定したゲーム形式の練習。若手たちの元気の良さは、目を見張るばかり。高卒1年目の木原励は、反転から鋭いシュートを放つなど、豪快にゴールネットを揺らしてアピール。どん欲にゴールを狙う姿勢は、いまのチームに求められているものだろう。
積極的に強烈なミドルシュートを打ち続けていた大卒1年目の安居海渡、左足からコースを突く低い弾道のシュートを放っていた移籍1年目の松崎快といったリーグ戦で出場機会に恵まれていない選手たちは目の色を変えて、トレーニングに取り組んでいる。
リーグ戦では9試合勝利から見放されているが、いまのレッズにどんよりとした雰囲気が漂う気配は一切ない。むしろ、練習場はチャンスを持ち望む選手たちの意欲であふれている。
チーム内の激しい競争は、選手たちがリカルド ロドリゲス監督を信じている証拠だろう。まだまだ這い上がっていく可能性はあるはずだ。
6月18日のリーグ再開初戦は、ホームに名古屋グランパスを迎える。エネルギーを溜め込んだ選手たちが、起爆剤になるかもしれない。
(取材・文/杉園昌之)