2023年YBCルヴァンカップ決勝の舞台は国立競技場。振り返れば20年前の2003年、浦和レッズが初戴冠を果たしたヤマザキナビスコカップ決勝の舞台もこの場所だった。Jリーグ開幕から10年、初めて凱歌をあげた記念すべきファイナルを振り返る――。
2003年のヤマザキナビスコカップ決勝に駒を進めたのは、浦和レッズと鹿島アントラーズ――前年のファイナルと同じ顔合わせとなった。
その1年前、決勝に初進出したレッズは高い壁に跳ね返され、0-1で敗れていた。
今度こそ初タイトルを――。
雪辱を胸に、選手、チームスタッフ、クラブ関係者、ファン・サポーターは国立競技場に乗り込んだ。
今にも雨が降り出しそうなあいにくの空模様だったが、スタジアムは満員の観衆で膨れ上がった。スタンドの8割近くを埋めたレッズのファン・サポーターが見守るなか、先発メンバーが入場してくる。
GK㉓都築龍太
DF②坪井慶介
DF③ゼリッチ
DF㉙ニキフォロフ
MF⑥山田暢久
MF⑧山瀬功治
MF⑬鈴木啓太
MF⑭平川忠亮
MF⑲内館秀樹
FW⑩エメルソン
FW⑪田中達也
レッズが誇る2トップ――“エメタツ”のスピードを警戒したのか、連覇を狙う鹿島は3バックを採用。だが、リトリートするわけではなく、陣形をコンパクトにして守備ラインを高く設定していた。
そんな真っ向勝負を挑んできた鹿島に対して、浦和も立ち上がりから局面、局面で勝負を挑み、ゲームは加熱していった。
早くも13分、スコアが動く。前夜にニューヒーロー賞に輝いた田中が右サイドから左足でクロスを入れると、山瀬が頭で合わせてレッズが待望の先制点を掴み取る。
鹿島の反撃を落ち着いて凌いでいたレッズに大きなピンチが訪れたのは、前半終了までの約10分間だった。
37分にコーナーキックの守りでエメルソンと坪井が激突し、一時的にふたり少ない状況に陥ってしまう。エメルソンは前半終了間際にピッチに戻ったものの、坪井は戻れないまま。この危機的状況でレッズ守備陣が踏ん張った。41分に至近距離で打たれたシュートは都築がブロックし、難を逃れた。
ピンチのあとにチャンスあり――。坪井が戻った後半、レッズは立ち上がりからラッシュをかける。48分に平川のスルーパスを受けて抜け出したエメルソンがGKもかわして追加点を奪うと、56分には左サイドでボールを受けた田中がカットインからミドルシュートを突き刺す。60分に鹿島の小笠原満男が退場となると、ゲームの流れは一層レッズへと傾いた。
試合途中から大雨に見舞われたが、レッズサポーターのボルテージは高まる。ニキフォロフと坪井が相手2トップを封じ込め、返す刀で速攻を繰り出していく。86分にはエメルソンがダメ押しとなる4点目を決めて勝負あり。『We are Diamonds』の大合唱が鳴り響くなか、試合終了を告げるホイッスルが鳴った。
ベンチの前ではハンス オフト監督を囲むように歓喜の輪が生まれ、ピッチ上では山田が、鈴木が、坪井が、そして途中出場の長谷部誠が、ハイタッチと抱擁を繰り返す。
苦節10年――。熱烈なファン・サポーターに支えられ、レッズがついにクラブの歴史にタイトルを刻んだ。この記念すべき初戴冠は、翌04年のステージ制覇、06年のリーグ初優勝、07年のAFCチャンピオンズリーグ制覇へと繋がっていくのだ。
(取材・文/飯尾篤史)
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