「日本には、GKをやりたいと思っている子どもがたくさんいたんです」
「子どもの頃は、いろんなポジションでプレーするものですよね。今日はGKとしてプレーしたけれど、明日はフィールドでプレーする、ということもあると思います」
「GKをやりたいという気持ちが薄れていってしまうでしょうね。だから、GKをやりたいという子どもは大切にしないといけない。そもそもGKって、損な役回りなんです。例えば、試合中にPKを取られたとする。たまにGKのファウルでPKになりますが、多くはDFのファウルが原因です。それでも、GKは止めないといけない。理不尽ではないですか?」
「ミスをしたら最もヤジを受けやすいポジションであり、フィールドプレーヤーと比べて、専門的なプレーやミスが理解されにくいポジションでもあります。場合によっては、味方や監督にさえ理解してもらえないこともある。だから、失点した場合、GKコーチはなぜ失点したのか、どうすれば改善できるのかを監督に説明し、理解してもらわなければなりません」
「私自身、現役の頃はそういうふうに感じていました。今指導している選手たちには、同じ気持ちにさせないようにしています」
「どうやってリカバリーするのか。ミスは極力減らさなければなりませんが、ミスを怖がっていては、GKは育ちません。大事なのはミスをしたあと、どう対応するのか。逆に言えば、そこまでセットで考えられれば、それはもうミスではなくなるのです」
「だから私はスポーツ心理学を学んでいますし、フィジカルの勉強もしています。勉強を始めた当初は、専門家の方々に『私はこういうトレーニングを考えているんだけど、どう思いますか』『これができるようになるためには、どこの筋肉をどうやって鍛えればいいですか』と訊ねて回りました」
『聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥』ということわざを、ジョアンは地でいくスタイルだ。どの世界でも、成長するためには必要な姿勢なのだろう。
「自分自身を教育していかなければなりません。スペインのGKコーチは優れているという評判がありますが、本当でしょうか? スペイン1部のGKは外国籍選手が多いですし、バルサだってビクトル バルデス以降、カンテラ(アカデミー)から昇格したGKはいません。私自身、スペインで修士号を持っていますが、それだけではまったく意味がない。大事なのは、勉強し続けることなんです」
(取材・文/飯尾篤史)