アクセルを踏み込めば、時速200kmを軽く超える高級スポーツカーを所有するJリーガーは数多くいるものの、値が張る"スポーツ自転車"を持っている選手はそれほどいないのではないか。
ドロップハンドルに20段以上の変速機がつき、タイヤは極細。ロードバイクと呼ばれる自転車である。浦和の荻原拓也のお気に入りは、フランスの老舗メーカーのラピエール。自宅にただ飾っているわけではない。
「シーズン中で連戦が続くときは、あまり乗れませんが、オフになったら、思い切り走ろうと思っています。山でも走りに行こうかなって。自転車はいいですよ。自分の力でペダルを回し、走るんですから。自転車を操っている感じも好きですね」
兄の影響で始めたロードバイクは、すっかり趣味になっている。気分転換にはもってこい。もちろん、安全面には気を使う。ロードバイク用のヘルメットをしっかり被る。お尻が痛くならないようにパット入りの専用パンツを履き、サングラスをかける。道路ですれ違っても、荻原とは気づかないかもしれない。
「走っているときは"無"になれるんです。心がきれいになる感じ。本当に落ち着きます」
平坦な舗装路を走れば、時速40km近くは出る。サッカーで鍛え抜かれた荻原の足でペダルを回せば、時速50kmくらいは出るかもしれない。足の筋力と持久力を鍛える上でも、いい運動になる。実際、荻原はユース時代には、自宅内にある固定されたローラー台の上で自転車に乗り、心拍数を上げてこいでいた。
「丸太のような太ももはロードバイクの効果もあるのか?」と聞いてみると、笑ってあっさり否定された。
「違いますよ。これはプロに入って、強度の高い練習を積み重ね、太くなったものです」
シーズンオフは浦和の厳しいトレーニングで鍛えたその足で自転車をこぎ、リフレッシュするつもりだ。埼玉のどこかの山道で、"サイクリスト荻原"が走っているかもしれない。
(取材/文・杉園昌之)
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