勝ち点3を懸けた45分が始まる。
90分ではなく45分なのは、すでに前半の45分間を終えているということだ。
川崎フロンターレを埼玉スタジアムに迎えた明治安田J1リーグ第28節は、8月24日に行われた。しかし、荒天の影響により前半を終えて中止。約3カ月後の11月22日に、後半開始から再開される。
3カ月前の試合だけに、まずは前半をおさらいしておこう。
3分にカウンターから縦にパスをつないだ浦和レッズは、大久保智明がポストに直撃する惜しいシュートを放った。
浦和レッズは10分にも左サイドを崩すと、逆サイドから走り込んだ石原広教がシュートを放つなど、好機を作り出した。
一方の川崎フロンターレも大島僚太を中心に攻撃を組み立て、突破力のあるマルシーニョが何度かフィニッシュを狙うなど、攻撃の迫力を見せた時間帯もあった。
スコアが動いたのは22分。石原のクロスにブライアン リンセンが競り合うと、流れたボールを大畑歩夢が拾い、詰めた渡邊凌磨が左足でゴールを決めた。
浦和レッズは、渡邊が決めた1点のリードを奪った状況で、再開する後半を迎えることになる。
再開試合の条件として、主に「原則として8月24日の試合中止時点で出場していた選手で試合を再開する」とあるが、当時と大きく状況が異なるのは、チームを指揮する監督だろう。
当時の浦和レッズは、ペア マティアス ヘグモ前監督が指揮していたが、その後、監督交代となり、現在はマチェイ スコルジャ監督がチームを率いている。
そのため前半の45分とは、異なる戦い方で後半に臨むことになる。
また、90分ではなく、45分という試合時間を考えると、選手たちのペース配分も当然、大きく変わるだろう。
ましてや川崎は1点のリードを奪われた状態からのスタートになるため、再開直後から勢いを持って攻めてくることが想定される。
そこで活きてくるのが、前節にあたるサンフレッチェ広島戦(第36節)の経験と自信だ。
ボールを保持する力とパスワークを駆使する力のあった広島に、押し込まれる場面も多かったが、90分を通して無失点に抑え切った。
また、14本ものシュートを浴びせられた前半の45分間も、西川周作を中心とする守備陣が奮起して耐えしのぐ力も見せた。
加えて、攻撃ではカウンターから幾度もチャンスを作り出し、前半終了間際には、石原、渡邊、関根貴大とつないで最後は松尾佑介がゴールを奪って1-0で折り返した。
ここ3試合を振り返ると、第25節の柏レイソル戦は1-0、第35節の横浜F・マリノス戦は0-0、第36節の広島戦も3-0と、いずれも無失点だった。
川崎は司令塔でもある脇坂泰斗が怪我により戦線を離脱しているため、再開試合には出場できない可能性が高いが、山田新、家長昭博、さらには大島が織り成す攻撃を抑えるだけの自信を、浦和レッズは備えている。
ただし、リードした1点を守ろうとする姿勢だけでは勝ち点3は得られないだろう。
相手にとって試合時間が45分間ならば、浦和レッズにとっても45分間である。
リードや時間を計算することなく、2点目、3点目を奪いに行くことで勝利は得られる。
(取材・文/原田大輔)