ついに背番号10がベールを脱いだ。
それもピッチに立ってからわずか、いや、たったの3分で——。
3月19日に行われたリーグ第5節のジュビロ磐田戦。3−0のリードで迎えた後半、ダヴィド モーベルグは関根貴大に代わって、右サイドで出場した。47分にはこぼれ球を拾うと、挨拶代わりにいきなりミドルシュートを放つ。
おそらく、狙っていたのだろう。
1分後の48分だった。
右サイドで相手のルーズボールを拾ったモーベルグはドリブルを開始。相手3人に囲まれていようとも、まったく躊躇することなく、単騎でゴール前に進入していく。そして、巧みなフェイントで相手を翻弄すると、間髪入れずに左足を振り抜いた。
対応していたジュビロ磐田のDF陣にとっては情報が少なく、予想や想像を超えていたところもあったのだろう。
それを加味したとしても、ドリブル時に見せたフェイントのしなやかさ、ドリブルからシュートに至る予備動作の短さが際立つゴールだった。
「いろいろな方面から期待されていたことは分かっていました。それだけにチャンスをクリエイトできて、ゴールにつなげられたことをうれしく思います。みなさんから、自分のストロングポイントについてよく聞かれましたが、今日(の試合で)、それを表現できたと思っています」
登場からたったの2分45秒でゴールという結果を残したモーベルグは、そのままゴール裏へ走っていくと、背番号10を指さし、歓喜の拍手に応えた。
“ここに浦和の10番あり”。
その姿は頼もしく、誇らしく見えた。
「周りからの期待に応えた行動でした。スタンドに10番やスウェーデン国旗がたくさんあって、エネルギーをもらったのと同時に驚きがありました。これからもっともっといいプレーを見せていければと思っています」
役者がそろえば、自ずと結果はついてくる。
磐田戦は、過去6戦の不安を払拭するかのようなゲームだった。
8分には開幕戦以来のスタメン出場となった犬飼智也が、コーナーキックから得意のヘディングシュートを決めた。試合立ち上がりに先制点を奪う、理想的なゲームの入り方だった。
11分にはキャスパー ユンカーが、ゴール前でテクニックを見せて追加点を挙げた。相手からボールを奪った江坂任のプレスも特筆すべきながら、ストライカーらしくゴール前で仕事をしたユンカーのプレーは、今季の浦和レッズに必要な要素だった。
1点を返された35分には、伊藤敦樹がPKを獲得した。犬飼とともに攻守にわたってチームをオーガナイズし続けたアレクサンダー ショルツがPKを決めて、追いすがる相手を突き放した。
ここまでの試合は攻めながらも得点を奪えず、消耗していったなかで崩れる、もしくは劣勢に立たされることが多かった。磐田戦は、早々に先制できたことで、プランどおりに、もしくは優位に試合を運ぶことができた。
背番号10が、最高のデビューを飾ることができたのも、前半に躍動した選手たちの働きがあったからだ。
この展開を、浦和レッズのスタンダードにしていかなければならない。
(取材・文/原田大輔)