「40歳になって、こういうオファーをいただけるなんて想像してなかったですから。だから土田尚史さん(スポーツダイレクター)から話を聞いたとき、『それ、本当に言ってます?』って、半信半疑な感じで(笑)」
「チームとして良いシーズンを送ったばかり。次はもっと良いシーズンになりそうな感じがありましたから」
「尚史さんはレッズに30年近くいて、レッズへの思いが強くて、ずっとレッズのことを考えている方。そんな尚史さんが、レッズはここ数年問題を抱えている、チームを立て直すためにも僕というピースが必要だ、と言ってくれた。
「ただ来るだけじゃ、『なんだ、こいつ』と思われる。プロの世界はそういうところ。そんなレベルの選手が何を言おうが、何をしようが、チームに良い影響を与えられるわけがない。レッズに行くなら、ピッチに立てるだけのクオリティを示さないといけないし、ゲームに出ることにチャレンジしたい。出て、勝つことにも挑戦したい」
「諦めが悪いのか、負けん気が強いのか、相手が代表選手だろうと絶対に負けないと思ってやっていた。次は俺に出番が来るんじゃないかって。それこそ修一とは本当にバチバチでしたから(笑)。でも、その積み重ねが成長に繋がっていく。今のレッズはもっと雰囲気がいいですけどね(笑)」
「周作とはプレースタイルは違いますけど、こういう止め方をするんだとか、盗めるものがあれば自分の中に取り入れています。ゼッツ(彩艷)は18歳でこんなにスケールが大きいんだとか。でも、ここはまだまだだなって。パワーは俺や周作よりも遥かにあるけれど、車で言えば、車体はでかいけど、エンジンはまだ小さいとか、いろんな視点で見てしまいますね」
「周作とゼッツに話しているのは、GKは試合にひとりしか出られないわけだから、出た人をしっかりサポートしようと。誰が出るかは監督やコーチが決めること。そこまではバチバチやるけど、試合に出る選手が決まったら、その選手がいい環境でプレーできるようにサポートしたい。それがグループだと思っています。もちろん、彼らは十分理解していますけどね」
「でもね、僕からは何も言わないようにしています。人から言われるより、自分で気づいたほうがいいので。僕も若い頃、土肥さんに聞くことはなかったんですよ。土肥さんのプレーを見て、いいなと感じたことを自分のプレーに取り入れていた。
「だって、僕とは22歳の差がありますから。まだ18歳のゼッツには長いサッカー人生が待っている。調子が良いときもあれば、悪いときもある。怪我をすることもあるだろうし、結婚して、子どもが生まれ、代表に選ばれたり、海外に飛び出したり。サッカーを長く続けていたら、いろんなことが起こるので、そういうのをすべて乗り越えて行ってほしい」
「浜さんも、まさか僕が40歳まで続けるとは思わなかったんじゃないですか。浜さんは変わらないですね。激しいし、熱いし。でも……丸くなったかな(笑)。若い頃は、浜さんにバシバシしごかれていたので(苦笑)」
「ものすごく熱い夏のある日、台湾かどこかの若い子が練習参加したことがあって。僕と2歳上の遠藤大志くん、その子の3人で浜さんの指導を受けたんですけど、いつ『もう無理です』って言おうかな、っていうくらいきつかった。
「若い頃ってガムシャラじゃないけれど、ある程度やったほうが将来のベースになるのは間違いない。そのレベルに達しない練習だったら、楽だと感じるかもしれない。サッカーってシーズンが長いですから、メンタルを鍛えることも大事なんです」
「言い過ぎですよね、たぶん」と塩田は苦笑する。
「でも、そこが特徴なので。ベンチからでも試合に入り込みたいし、気づいたことは伝えていきたい。ありがたいことに声が通ってしまうので、直接関与できるというか。あと、マキ、周作、(興梠)慎三もそうだけど、年齢が上の人に対して周りが声掛けするのって難しいと思うんです。彼らには実績があるし、浦和に長くいるわけなので。
「浦和レッズのエンブレムの付いたユニフォームを着て試合に出られたのは嬉しかったし、準公式戦でしたけど、準備をしてゲームに入ると、アドレナリンが出るというか、改めて楽しいなと。それに、勝利すると、爽快な空気感になる。それを次は埼スタで経験できたら最高だなって思います。だから、もっともっと頑張ってゲームに出たい」
「周作とゼッツの間でバランスを取って、と思われがちですけど、僕自身はそんなことは思ってなくて、ゲームに出たい。ゲームに出て勝ちたい。このチームでトロフィを掲げたいと思ってやって来たので」
「大きい声では言えないですけど、またかよとか、なんだよとか、悔しいし、ムカつきますよ。家に帰ってもモヤモヤしていますし。もちろん、それを顔に出したり、態度に出したりすることはないですよ。
「正直、恥ずかしいんですよ。周りのGKはみんな、200、300と試合を重ね、周作はもうすぐ500試合に到達するのかな。それなのに40歳で100試合にも到達してないなんて。ただ、達成できたら、両親とか、家族は喜ぶと思います。子どもに花束を持って来てもらって。
(取材/文・飯尾篤史)