長いシーズンを送っていれば、誰でもミスを犯すことはある。完璧なプレーヤーは存在しないと言っていい。
ノルウェーで11年のプロキャリアを築き、浦和レッズ加入2シーズン目を迎えるマリウス ホイブラーテンは、センターバックを組む井上黎生人を慮っていた。9月21日のFC東京戦でクロスボールをうまく処理できず、オウンゴールを献上した直後に相棒のもとに駆け寄り、すぐに声を掛けた。
「あんまり考え過ぎるな。まだ時間はあるからしっかり切り替えて、みんなで勝利を目指そうって」
センターバックはミスひとつが失点につながるポジション。マリウスも長いプロキャリアを振り返れば、母国の名門FKボデ/グリムトにたどり着くまでに何度もミスを重ねて、成長してきたという。
ノルウェーのリールストロムSKでキャリアをスタートさせ、常に前を向きながらステップアップしてきたのだ。
「2週間後には忘れられるものです。もちろん、ミスをしたときは嫌な気持ちになる。ただ、そこで落ち込まないことが大事。黎生人に関しては心配していない。試合中に気持ちをリセットできていた。すでに起こってしまったことはやり直すことができないからね」
同じポジションで闘ってきたパートナーとして、可能なかぎりのサポートをしていくつもりだ。大事なのは、ミスを犯したあとにいかに修正できるか。成長できるチャンスでもある。
「難しいですが、そこからどのように立ち直るかで選手は変わってくる。ここで素晴らしい選手と普通の選手との違いが出る。もちろん、黎生人は前者だと思っている」
井上本人も自らに矢印を向けて、「この経験を無駄にしないようにここから成長していきたい」と話していた。
ひとりのミスを全員でカバーし合っていくことで、団結力はより高まる。マリウスは力を込めていう。
「チームはよりひとつにならなければいけない。負けるときも、勝つときも同じ。一体感こそが僕らの強みです」
次節の9月28日は、アウェイで3位のヴィッセル神戸と戦う。得点力の高い大迫勇也、武藤嘉紀らと対峙することになるが、簡単にゴールを許すつもりはない。チーム一丸となってクリーンシートで仕切り直し、鉄壁の守備を取り戻すつもりだ。仲間のためにも、雨降って地固まることを証明してみせる。
(取材・文/杉園昌之)