「今まで、俺、プロじゃなかったです、正直……」
「それまでの自分は、ただの甘ちゃんでした(笑)。でも、去年あたりから、やっと自分で自分のことを、『プロサッカー選手』って言えるようになったんです。世界が変わった感覚がありますね」
「やれる、っていう手応えを掴めたので。それまでは、できるかな、できるかな、っていう感じで、正直に言えば、オドオドしながらやっていたんです。でも、今は堂々とできている」
「選抜にもずっと入っていたし、試合に出るのが当たり前、勝つのが当たり前で、良いことずくめでした。楽にやれていたから、何も考えていなかった、というのが正直なところで」
「試合に出られないのは初めてだったから、プロになって落ち込む時期があった。その後、ケガをしてもっと落ちてしまって。そうした経験を経て、メンタルってすごく大事だなって感じるようになりました」
「哲さんも、2番手として来たわけじゃないですけど、サブに甘んじることになった。3番手、4番手も辛いんですけど、2番手の辛さ、歯がゆさってすごくあるんですよ。ましてや哲さんは、マリノスでずっと出ていた選手。それでも文句は絶対に言わないし、ひたむきに努力を続けていた。その振る舞いは、本当に尊敬できるものでしたね」
「やっぱり浦和の選手って個が強いと思うんです。性格もプレースタイルも。僕も大学までは個性の強さで勝負していて、それで多くのものを勝ち取ってきたんですけど、浦和に入って、自分の個性ってこんなものなのかって。それで、チームに馴染むように、溶け込むように、周りに合わせてやっていたんですけど、一昨年までは全然うまくいかなくて。これ、本当の自分じゃないなって」
「周作くんと哲さんはすごい実力の持ち主だし、(岩館)直くんは真面目で、当たり前のことを当たり前のようにできる。そうしたGK陣の中で、自分は何が長けているのかな、と考えると、思い切りの良さ、チャレンジャー精神、臆せず周りに強く言うところ。みんなを奮い立たせるところ。そこで違いを出せるのかなって」

「1回出て活躍するのは、運が良ければ誰にでもできる。いかに安定して高水準で維持できるかが大事――そう、哲さんが言っていて。2番手の状況でメンタルが揺らいでいるようでは、この先、試合に出続けるようになったとき、もっとプレッシャーが掛かる。メンタルの部分はすごく意識しています」
「ハマさんはすごくストイック。自分のこだわる部分に全力でフォーカスしてやってくれているので、日々の練習から休まるところがないというか。常に集中、ピリッとした空気で、試合に出たときに気が抜けない状態を、練習のときから作っている。コミュニケーションもしっかり取ってくれるんですけど、わざと取らずにこっちを観察しているようなときもあって、そのへんの距離のとり方は、さすが代表でコーチを務めてこられた方だな、と思います」
「もちろん、ずっと2番手に甘んじているつもりはないけれど、本当にその通りだと思う。周作くんにいつアクシデントが起こるか、出場停止になるか分からない。その試合がACLの決勝かもしれない。浦和はそういう舞台に立つクラブ。だから、常にいつ、どんな試合で出番が来てもいいように、準備をしたいと思っています」
(取材/文・飯尾篤史)
