この世の果て?!失われゆく「トドワラ」をゆく | 北海道
北海道東部、根室海峡に突き出るようにかぎ針状の形をした、全長約26kmの砂の半島・野付(のつけ)半島。海流によって運ばれた砂礫が堆積し、やがて陸地となった地形を砂嘴(さし)と呼び、野付半島の砂嘴は日本最大級といわれています。
この独特の地形上に広大な干潟、トドマツ、ミズナラなどの原生林、葦原や高原湿地帯など多様な自然環境とそれに適応した野生動物が生息し、特に日本有数の野鳥生息地としても有名です。
この島の美しさと希少性が認められ「北海道遺産」や「ラムサール条約湿地」にも指定されています。
そんな野付半島ですが、年々進む地盤沈下の影響で海水に沈んだ原生林は立ち枯れ、風化も加速しています。その殺伐とした姿が「この世の果て」「世界の終わり」など終末感漂う風景としてひそかに人気を呼んでいます。
過去には北海道出身の人気アーティスト・GLAYのCDジャケットに起用されたり、その他有名アーティストのプロモーションビデオにも登場し注目を集めました。
しかし、年間約1.5cmの速さで地盤沈下が進み、このままいけば約100年後には海の下に沈んでしまうと予測されています。そんな危機的状況に置かれているのです。
野付半島の最大の景勝地「トドワラ」。トドワラとは“トドマツの原っぱ”という意味で、かつてはトドマツやエゾマツなどの豊かな森が広がっていました。しかし地盤沈下の影響で海水の侵食が進み、立ち枯れの森と化しています。
そのトドワラは今、昨今の爆弾低気圧や高潮の影響で木々が倒壊し洗い流され、さらに朽ち果てて一部は土壌に還り、規模はかなり縮小しているのが現状です。
失われゆくトドワラと対照的に、立ち枯れながらもその姿を維持しているのが「ナラワラ」です。ナラワラは“ミズナラの原っぱ”を意味し、主に広葉樹林の原生林です。海水に侵食され、一部のミズナラが白骨化のように立ち枯れています。
ナラワラは野付半島を縦断するフラワーロード沿いにビューポイントがありますが、こちらは散策路などが設置されていないため遠望からの観賞となります。
トドワラまでは、野付半島ネイチャーセンターから徒歩でアクセスも可能です。センターからはじまる遊歩道は片道約1.3km、徒歩約30分程度の距離です。
※最新の情報は関連メモにある公式サイトなどでご確認ください。
(文:Mayumi Kawai)