幼児でもきっぷが必要になる場合も
「新幹線で幼児にも座席を使わせていいのか」
日本の鉄道では基本的に、大人に連れられている幼児は無料で列車に乗車可能です。そのため、列車が混雑している場合は幼児が座っている席をきっぷを買っている人に譲る必要があるのだろうかと、インターネットの質問サイトなどでしばしば話題になることがあります。いったい、ルールではどうなっているのでしょうか。いよいよ夏本番を迎え、旅行や帰省で鉄道を利用する人も多いと思いますが、その際の参考にしてもらえればと思います。
JRでは原則として、1歳未満の「乳児」と1歳以上6歳未満の「幼児」は、運賃(乗車券)と料金(特急券など)が不要、つまり無料で乗ることが可能です(6歳になっても小学校入学前の3月いっぱいまで「幼児」扱い)。しかし、そうならないこともあります。
・「幼児」の人数が多い場合
「おとな」もしくは「こども」1人につき無料なのは「幼児」2人までで、3人目からは「こども」の運賃、料金が必要です。
・「幼児」だけで乗車する場合
「こども」の運賃、料金がかかります。
・「幼児」「乳児」が1人で指定席やグリーン席(自由席グリーン車を除く)、寝台などをひとつ利用する場合
「こども」の運賃、料金がかかります。
具体的にはどうなるのか、続いて見ていきましょう。
「指定席」と「自由席」で変わってくる状況
幼児を連れて列車に乗る際、指定席を利用し幼児にも座席を使わせるときは、幼児のきっぷも購入せねばなりません。たとえば新幹線、また特急に「おとな」2人と「幼児」1人で乗る場合、具体的には「おとな」2人分の運賃と料金(乗車券と特急券)、「こども」1人分の運賃と料金が必要です。「幼児のきっぷは指定席の券(特急券)だけでいい」というのは誤りなので、注意しましょう。
ただし、幼児を大人のひざの上にのせるなどし、座席を使わない場合、「おとな」2人分の運賃、料金のみで乗車できます。グリーン席(自由席グリーン車を除く)の場合も同様です。
このため「幼児の指定席利用」は、正規のきっぷを購入していればルール上、問題ありません。
では、自由席はどうでしょうか。幼児を連れて新幹線や特急の自由席に乗る場合、先述した人数制限を超えなければ、幼児に座席を利用させてもそのぶんの運賃、料金は不要です。具体的には「おとな」2人と「幼児」1人の場合、「おとな」2人分の運賃と料金のみで乗車でき、幼児も座席が使えます。
しかし難しいのが、「自由席で混雑している場合」です。「幼児はお金を払っていないのだから、大人のひざの上にのせて、きっぷを買っている人に座席を譲るべきだ」という考えも成り立つかもしれません。
無料で自由席に乗っている幼児、席を使う権利はあるのか?
混雑している新幹線や特急の自由席で、無料で乗車している幼児は座席を利用してよいのでしょうか。
これについて、ルール上は幼児が座席を利用していても問題ありません。また実際、JR関係者に取材した情報をまとめると、混雑時、座席の上に荷物が置かれていたら車掌が声をかけることはあっても、「幼児をひざの上に」と車掌が声をかけることは基本的にないようです。
ただ先に「難しい」と表現したのは、この点については「ルール」ではなく、「マナー」的な問題になってくるため。自由席で幼児に座席を使わせていて、通路まで人があふれるほど混雑してきたとき、人によって判断が異なるかもしれません。
「マナー」や「良心」という意味では、正当に幼児が座っている指定席を譲ってもいいわけで、よって、「正解」を明確にするのは難しいのが現実です。ひとついえるとしたら、幼児のぶんもきっぷを購入して指定席に乗車するほうが、「権利」が“金銭的にも裏付け”され、座席のトラブルが起きにくいかもしれない、ぐらいでしょうか。
東海道新幹線限定になってしまいますが、夏と冬に一部列車で子ども連れ専用の「ファミリー車両」が設けられるので、そうしたものを利用するのも一案です。座席が1人分多く用意され、ベビーカーや大きな荷物があっても利用しやすい、といった特徴があります。
JR東海によると、車掌に「子どもの泣き声がうるさい」といった苦情がきたり、デッキで子どもをあやしている乗客を見かけることがあり、そうした状況や、「子どもを連れてもっと気楽に新幹線を利用したい」という声から「ファミリー車両」が生まれたとのこと。これについて「仕方がない」「合理的だ」「世知辛い」、それぞれ思う人がいるかもしれませんが、せっかくの家族旅行、楽しい思い出を作れるよう、うまく計画したいところです。
※東海道新幹線の「ファミリー車両」は列車、席数、販売場所が限られており、今夏についてすでに満席になっている日があります。