透明なら光が差す! 物々しくなくてスッキリ
都市部の高速道路などは、両サイドが高い鋼製の防音壁(遮音壁)で覆われていることがあります。たとえば外環道の埼玉県区間は、外から見るとまるでシェルターのように、道路を覆うような防音壁が設置されています。高架下を併走する国道298号も同様ですが、外環道の高架橋が上空にあるため暗く、昼間でもライトを点灯して走るクルマも少なくありません。
こうしたなか、新しい道路を中心に採用が増えているのが、透明の防音壁です。東京、環状2号線の豊洲と築地を結ぶ区間では全面的に採用されており、一部区間は上空まで透明の板で覆われているほどです。
2018年に暫定開通した東京の環状2号線の豊洲~築地区間では透明の防音壁を全面的に採用。一部はトンネル状になっている(2020年6月、乗りものニュース編集部撮影)。
このほか、ドライバーの目線くらいの高さは透明、その上は鋼製にすることで見通しをよくしたり、鋼製壁の上方を透明板にしたりといった部分的な使用も見られます。
防音壁メーカーのひとつ積水樹脂(大阪市北区)によると、透明の防音壁は平成の初め頃から登場し、徐々に増えているといいます。やはりメリットは「光が差す」ことだそう。
透明にすることで、たとえば高架下にできる影の範囲を小さくできるほか、一般道では特に「店の看板が防音壁で見えなくなるので透明にしてほしい」といった要望も多いそうです。新規道路の建設にあたり、当初は鋼製の防音壁で計画したものの、住民説明会の結果で透明に変更するケースも、ままあるといいます。
劣る防音性 景観との両立に工夫
透明の防音壁の多くはポリカーボネート(自動車のヘッドライトカバーなどに使われる)製で、一部、アクリル製もあるといいます。ガラスなどは割れた場合の安全性に問題があるため、「NEXCOの厳しい安全基準を満たすうえでも、(耐衝撃性に優れる)ポリカーボネートが現実的な素材」(積水樹脂)だそうです。
しかし、鋼製の防音壁は内側に吸音材があり、音を吸収する一方で、透明の防音壁は音を反射してしまうのだそう。このため、仮に透明板を全面的に使用する場合は壁が高くなるケースがあるうえ、材質としてもコストは高くなるといいます。
そこで、前出した「鋼製板と透明板の組み合わせ」が使われるほか、道路の片側は鋼製壁、もう片側は透明壁を使うケースもあります。たとえば、東京と千葉を東西に結ぶ京葉道路がこの方式で、上り線側は鋼製壁、下り線側は透明壁で主に構成されています。
2018年に開通した外環道「千葉区間」のうち、江戸川の北の高架区間は、鋼製板と透明板を組み合わせた防音壁を採用(2018年6月、中島洋平撮影)。
積水樹脂によると、東西方向の道路の場合、南側が鋼製壁、北側が透明壁というケースが多いそう。これならば、道路に防音壁の影はできますが、民地への影は抑えられるわけです。北側の透明壁で反射された音を、南側の鋼製壁で吸収するという仕組みになっていることもあるということです。
ちなみに、防音壁の高さは音響のプロの意見をもとに決まるといいます。道路の幅、立地条件、想定される交通量など、様々な要素が考慮されます。
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