高速道路の安全対策「聴覚」訴え効果あり
「この先、急カーブ」「速度回復、願います」――このような音声を、走行中のドライバーに車外から聞かせるという、高速道路の新たな注意喚起策が広がりを見せています。
NEXCO中日本は2020年2月5日(水)、屋外型の「指向性スピーカー」を用いた、音声による注意喚起システムを開発したと発表しました。音の伝わる方向を調整し、流したい範囲に限定して音声が届くというスピーカーで、路外からドライバーへ音声で注意喚起を行うというものです。同社ではこのシステムを2019年8月から試行し、一定の効果が確認されたことから、今回発表に至ったものです。
新たに開発された屋外型の「指向性スピーカー」(画像:NEXCO中日本)。
試行箇所は、東名高速 横浜町田IC下り線のオンランプ(高速道路へ流入するランプウェー)で、急カーブの事故対策を目的としています。ここでは、速度超過によりカーブを曲がりきれずに事故を起こすケースが多発しており、これまで舗装および標識による速度抑制策や、カーブの進行方向に沿って流れるように光る視線誘導灯を設置し、壁面への衝突を防ぐといった対策を行ってきたそうです。しかし、それでも事故が後を絶たず、そのたびに通行止めなどが発生していたといいます。
そこで、カーブの少し手前に指向性スピーカーを6基設置し、30km/h以上で走るクルマに対し「この先、急カーブ」という音声を発するようにしたところ、設置後3か月のあいだで車速は平均4%(1.7km/h)低下し、前年同期に3件発生していた事故はゼロになったそうです。
「音声」による注意喚起 渋滞対策にも効果
この「指向性スピーカー」は屋外型より先に、トンネル内で使用する屋内型が開発されており、中央道の渋滞ポイントである小仏トンネル上り線(神奈川県と東京都の境)の注意喚起策としても採用されています。ここでは、トンネル内の緩やかな上り坂で速度が低下し、渋滞の原因になっていることから、渋滞発生時にトンネル内で「速度回復、願います」という音声が流れます。
小仏トンネルでの運用開始当初、NEXCO中日本八王子支社は従来の施策について、トンネル付近で情報板や看板で速度回復をうながす文言を表示していたものの、それらは道路の左側にあるため、右側車線を走っているドライバーには目に留まらない場合がある、と話していました。音声であれば、すべての車両に伝えることができるというわけです。
横浜町田ICにおける屋外型指向性スピーカー設置個所(画像:NEXCO中日本)。
今回の横浜町田ICにおける対策についても、NEXCO中日本は、舗装や標識などの視覚だけでなく、聴覚に訴えかける点に効果があるといい、「視覚による対策では、どうしても注意を払っていただけないことがあります」と話します。なお、ドライバーが突然の声に驚かないよう、スピーカーの声のトーンも調整しているとか。
同社は今回の屋外型「指向性スピーカー」を今後、事故多発地点や渋滞ポイント、工事による交通規制区間の手前などに設置していくそうです。
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