「空いていなかったらどうしよう」不安を軽減
2017年6月にリリースされた小田急電鉄の公式アプリ「小田急アプリ」では、新宿駅にある2か所のトイレにある各個室の空き状況を表示する機能が備わっています。
小田急線新宿駅の構内図。赤枠で囲った場所がトイレで、西口側と南口側に設けられている(小田急電鉄の画像を一部加工)。
近年、鉄道各社が公式アプリをリリースしていますが、この駅トイレの個室空き状況がわかる機能は、2017年9月時点で「当社ならではのサービス」(小田急電鉄)とのこと。利用者からは「SNSなどで、ポジティブな反響をいただいている」といいます。詳しく話を聞きました。
――トイレの空き状況はどのようにしてわかるのでしょうか?
個室トイレのドアにセンサーを取りつけてドアの開閉を検知し、そのデータをもとに、連携するアプリで使用状況を表示する仕組みです。ドアが開いていれば「空き」、閉まっていれば「使用中」と判定されます。
――なぜこのサービスを思いついたのでしょうか?
新宿駅のトイレは西口と南口で離れているということもあり、「トイレを使いたい」と思ったときに、現地まで行かずにどちらのトイレが空いているかを把握することができれば、移動の負担や「空いていなかったらどうしよう」という不安などを軽減できるのではないかと考えました。
ITを活用したお客さま向けの施策を検討するなかで生まれたアイディアです。ご利用されるお客さまの視点を強く意識しつつ、社員であるわたしたちの“いち鉄道利用者”としての経験を振り返りながらチーム内でアイディア出しを行い、そのなかで「トイレ」というキーワードが出てきました。
導入拡大を検討 ほかの交通機関にも?
――現在は新宿駅のトイレのみ対応していますが、今後の展開はお考えでしょうか?
ほかの駅への導入も検討しています。具体的には決まっていないものの、新宿駅のように、トイレが離れて複数箇所ある駅からと考えています。
「小田急アプリ」では、新宿駅トイレの個室空き状況(下)が表示される。画像はイメージ(画像:小田急電鉄)
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「小田急アプリ」では、震災時に活用できる情報を記した沿線の「震災時支援マップ」を表示したり、あらかじめ設定した家族などの位置情報をそのマップ上に表示(ペアリング表示)したりする機能がありますが、これらも関東大手私鉄では初の取り組みだといいます。アプリのダウンロード数は、9月26日(火)時点で約5万5000件だそうです。
同アプリでトイレの空き状況を表示する機能は、通信大手のKDDIによるサービス「KDDI IoTクラウド ~トイレ空室管理~」を利用したもの。「IoT」は「モノのインターネット」などといわれ、IT機器に限らず幅広いモノをインターネットに接続させることを指します。KDDIは「今後、IoTでお客様がより便利にお使いいただけるよう、商業施設や交通機関に幅広く導入していきたい」といいます。
【画像】トイレ個室の空き状況がわかるしくみ
トイレ個室のドアに取り付けられたセンサーが開閉状態を検知し、その情報がアプリ利用者に伝えられる(画像:KDDI)。