ボートレース界で不祥事が相次いだことを受け、監督官庁の国土交通省の担当者が昨年10月、競艇事業を統括する「日本モーターボート競走会」に、全レース停止を意味する業務停止の可能性を伝えていた。その後も、職員らの違法な舟券購入が発覚。改善が進まない現状に、専門家からは国の指導の甘さを指摘する声も上がる。(宮畑譲)
◆八百長、給付金の不適切受給、予想屋と金銭やりとり…
ボートレースを巡っては、2020年に八百長事件で選手が摘発された後も、2021年に200人以上の選手が新型コロナウイルス対策の持続化給付金を不適切受給していたことが発覚。2022年にもトップ選手と予想屋との金銭のやりとりが明らかになった。
国交省モーターボート競走監督室の竹内和弘室長は昨年10月、競走会幹部に、不正防止のための選手への検査が不十分だと指摘。「職員の業務怠慢による不正行為が行われれば、競走実施業務は是正が確認されるまで、組織として行えない可能性がある」と発言した。
◆今夏は違法な舟券購入で職員20人超が諭旨解雇
競走会はレースで使うボートやモーター、審判員の登録、選手のあっせんなど競艇事業を統括し、業務停止は全国24レース場で開催停止になることを意味する。監督官庁の責任者の発言は文書にまとめられ、競走会で共有された。競走会関係者は「重い発言だ。全場停止となれば、選手への補償など巨額の損失も出る」と、危機感とともに振り返る。
だが、今年夏もボートレース江戸川(江戸川競艇場、東京都江戸川区)などで、職員が法で禁じられている舟券を購入していた問題が発覚し、20人超が諭旨解雇された。国交省は「組織的ではない」との理由で、法令順守を求める文書の指導にとどめた。
◆識者「不祥事が続くのは、組織の倫理観が低下しているから」
昨年の「業務停止」発言の真意を問う東京新聞の取材に、国交省の監督室は「業界にはさまざまな問題があると認識している。コンプライアンス(法令順守)などが進まなければ、業務停止をするという思いはある」と回答。競走会は「(発言の)指摘を真摯(しんし)に受け止め、検査業務の改善に取り組んでいる」とする。
企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「競走会には、公営ギャンブルを特権的に運営しているという意識が感じられない。不祥事が続くのは、組織の倫理観が低下しているから。国交省も信頼性が担保されるまで厳しく指導する必要がある。本気度が感じられない」と指摘した。
ボートレース 1952年に長崎県大村市で始まった公営ギャンブル。創設には公益財団法人「日本財団」の初代会長・故笹川良一氏が尽力した。現在、日本と韓国で開催されている。レースの主催者は地方自治体で、経費や委託料などを除く売り上げは、各自治体の会計予算に組み入れられている。一部は日本財団にも交付され、公益事業への助成金の原資となっている。
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