「自宅を秘宝館化させて公開している人物がいる」
そんな情報を得たタイムアウト東京編集部は、その家の主を訪ねるべく埼玉と東京の境、八潮市に向かった。
主の名前は兵頭喜貴(ひょうどうよしたか)。写真家であり、ラブドール愛好家である。
きっかけは一軒家購入
八潮秘宝館が誕生したのは2015年、兵頭がこの一軒家を購入したことがきっかけだ。
自宅ということで自由に創作活動ができるようになったため、公開を始めたという。
4回目となる今回は過去最大規模で、テーマは「別府秘宝館・ミリタリー」。
これまでに鬼集してきたドールを中心に自宅の1、2階のスペースで構成される。
1階は日本軍の特務機関の研究所、2階はソ連海軍特殊医療部隊の拠点をイメージしており、その奥は、ベトナム戦争ゾーンになる。
見どころは、2011年に閉館した別府秘宝館から入手した「万歳の女」だそう。
ロウでできており、艶やかに光るボディやリアルな表情が美しい一体だ。
過去に別府秘宝館に展示されていたときには、こたつの上に乗せられた「万歳の女」をオジサンがイタズラしているというシチュエーションだった。
ドールに囲まれて過ごしたい
兵頭が、ドールの収集を始めたのは、17年前に空き地のゴミ山から焼けこげたマネキン「沼田ミナミ」を発見したことがきっかけ。
「ドールに囲まれて過ごしたい」という願望からそれ以来、集めたラブドール、マネキン人形、人体模型を併せると20体以上の人形(ひとがた)を所有している。
また、幼少期から「女サイボーグ」に興味を持ち、アニメ『ボトムズ』、映画『メカゴジラの逆襲』、なかでもリドリー・スコット監督のSF映画『ブレードランナー』に登場するセバスチャンの部屋からは多大な影響を受けた兵頭。
セバスチャンは、レプリカントと呼ばれるアンドロイドの設計を担当した生体エンジニアで、廃墟のようなアパートで人形や小人に囲まれて暮らしている人物だ。
2階はそんなセバスチャンの部屋を理想に、兵頭の妄想が爆発した楽園が広がっている。
作り込まれた世界観
この空間を怪しく装飾するのは、かつて病院で使用されていた医療機器、人体模型、薬瓶など。
これらの収集品には様々なストーリーがあり、「産婦人科」、「小児科」の看板は兵頭が産まれた病院から譲り受けたものであったりする。
そのほか、事情があって流れついたものや、オークションで発掘した引き取り手のいないお宝などだ。
部屋をじっくり眺めていると細部まで作り込まれた世界に驚かされる。
「生き生きと写すこと」
兵頭は、2002年よりドールを被写体に廃墟などで撮影した作品の個展を開催。
2016年にはパリの国立民族博物館ケ・ブランリ美術館の『ペルソナ』展にて、オリエント工業のラブドール「金剛寺ハルナ」との披露宴の模様を記録した動画が上映された。
最後にドールを撮影するときに決めていることを尋ねると「生き生きと写すこと」と教えてくれたのが印象的だった。
ドールに生と愛が吹き込まれた八潮秘宝館で、兵頭の突き抜けた妄想の世界に浸ってみてはいかがだろう。詳しい情報は公式ブログにて確認してほしい。