吉岡里帆が主演を務めるプレミアムドラマ「しずかちゃんとパパ」(毎週日曜夜10:00-10:50、NHK BSプレミアム)が3月13日よりスタートした。同作は、ろう者の父の耳代わり口代わりを務めてきた娘が、ひょんなことから出会った男性と恋に落ち、結婚するまでの親離れ子離れの温かい物語を描くホームコメディー。吉岡は、写真館を営む父・純介(笑福亭鶴瓶)と暮らす娘・静を演じる。
WEBザテレビジョンでは、ドラマの注目ポイントや共演者の印象、撮影エピソードなどを語ってもらった。
吉岡「出会えて本当によかったなと」
――ドラマの話を受けた時の率直な感想を教えてください。
主人公の純介と静の親子の在り方やコーダ(=聞こえない親を持つ聞こえる子ども)の心情に寄り添った脚本が素晴らしいなと感じました。聞こえない父と、聞こえる人々をつなぐために、2人がいろんな方法を試行錯誤しながら生活してきたという裏側がコミカルに明るく描かれるこの作品に出会えて、本当によかったなと思いました。
――共演者の笑福亭鶴瓶さんと、静と引かれ合う圭一を演じる中島裕翔さんの印象を教えてください。
笑福亭鶴瓶さんはテレビで拝見する印象と同じように、本当に面白くて笑いの絶えない方だなと感じました。純介が持つ父親の底抜けの明るさが鶴瓶さん自身とリンクしていて、一緒にお芝居をしていて楽しくて仕方ないです。鶴瓶さんがこれまでお仕事を通してさまざまな方と触れ合ってきた姿は本当にかっこよくて、笑福亭鶴瓶さんという偉大な方のお話をいつもそばで聞けるのがうれしいですし、役得だなと思っています。
中島さんが演じられる圭一は絶妙に難しい役柄だなと台本を読んで感じています。言動が人とは違う不思議なキャラクターですが、押しつけがましくも他人に興味がないわけでもなく、中島さんはごく自然に愛くるしい人物像として演じてらっしゃって、本読みの時に中島さんが圭一役で本当によかったと思いました。中島さんの演じる圭一だからこそ、静が心を開いていけるんだなと撮影していて感じています。
吉岡「間近で『鶴瓶の家族に乾杯』を見ている気持ち」
――撮影現場での印象深い出来事を教えてください。
栃木で撮影をすることが多い中、街行く人たちがみんな鶴瓶さんのお友達なのかと思うくらい、自然に交流が生まれていて、常に間近で「鶴瓶の家族に乾杯」(毎週月曜夜7:30、NHK総合)を見ている気持ちです。「鶴瓶さーん!」と街の方が手を振られると、それに対して、鶴瓶さんが自然に返事をしていて、「え!知り合いの方なんですか?」と聞くと「いや、知らん(笑)」みたいなことが何度もあって面白いです。“日本全国が庭”という感じが伝わってきて、一緒に撮影していると驚くことが多いです。先日の撮影でも、ロケ現場で鶴瓶さんとお話しされていた街の方がお団子を差し入れしてくださりました。街の人に愛されていて、耳が聞こえない中でも誰よりもコミュニケーションを取っているという純介の人物像にぴったりだなと思います。
――撮影の中で、印象的だったシーンを教えてください。
印象的なシーンはたくさんありますが、好きなシーンはけんかをするシーンです。純介と手話でけんかするシーンは、言葉でぶつけるより、もっと深いところでけんかをしているような不思議な感覚があります。圭一とのシーンでは、やっぱりデートのシーンがとても印象深いです。圭一が父を大事にしている静をちゃんと見てくれているのが分かるデートになっていて、とても良いシーンだなと思いました。
吉岡「勉強したいという意欲が日々増えています」
――純介の耳代わり・口代わりをする静を演じるうえで、意識したことや難しかったことはありましたか?
話しながら手話をすることに日々奮闘しています。静は純介と聞こえる人の間の通訳も担うのですが、通訳するときはしゃべらずにその人の話したタイミングを全部読み取って、区切りをつけて、手話を始めるという決まり事があるので、それを覚えて実行することが技術として大変です。話しながらスピーディーに行う手話と、純介に伝えるために、人の話を聞いてからその内容をかみ砕いて手話をするという違いを表現するのが難しいです。
――手話はどのように覚えられましたか?
実際にコーダのはせ亜美さんという方に教えていただきました。はせ亜美さんが、本当に優しくて、もっと頑張ろうと思えるような教え方をしてくださって、毎回、手話のシーンが終わると「さっきのシーンの表現がすてきだった」とか「ここすごいコーダっぽくて成長したなって思ったよ」などとても褒めてくださいます。はせ亜美さんが先生で良かったなと思いますし、はせ亜美さんのおかげで勉強したいという意欲が日々増えています。鶴瓶さんに手話を教えている江副さんも一緒に、撮影現場で手話を交えながら他愛もないおしゃべりをしたり、冗談を言い合ったり。待ち時間も本編で手話をする時の気持ちの入れ方や手話の出し方につながっていて、とてもお世話になっています。
――コーダの役を演じて、演じる前と後で見えてきたものや変化したものはありますか?
コーダ目線で世の中や人とのコミュニケーションに触れると、今までとは全然違うなと感じました。静は、父と周りの人が会話したものを通訳するという前提にあるので、誰よりも話を聞こうとします。でも、相手を見ながらも父親の純介に伝えるためという目的意識があるので、人と会話しているようで、実は父親と会話しているという不思議な構図になっていて、生活するうえで、2倍パワーがいるなと思いました。
――静にとって父・純介の存在をどのように感じていますでしょうか?
なくてはならない存在です。静も純介も、お互いがお互いを真っすぐ立てるために支え合っているという存在なのかなと思います。静にとって純介は、愛情を一番注いできた人で、自分の全てを注いでいくのが当たり前だと思ってきた人だと思います。
吉岡「意識すればするほど使っているなと(笑)」
――静と共通する部分や似ている部分はありましたか?
家族がとても好きで、家族の役に立ちたいと思っているという感情はとても共感しました。父親がカメラマンというのも共通点ですし、悩んでも立ち上がりが早いという部分は似ているかなと思います。
――静は純介の世話をしていく中で独特なクセが身に付きますが、吉岡さん自身の止められないクセなどはありますか?
「本当に」とか「すっごく」という言葉をよく使っているなと思います。恥ずかしくてあまり使わないようにしようと思っているんですけど、意識すればするほど使っているなと(笑)。行動面だと、人よりも水分をたくさん取ります。一日中、何か飲んでいる気がします(笑)。
――ドラマの注目ポイントを教えてください。
一番は純介と静の親子の形ですね。どれだけお互いがお互いを支え合ってきたのかという部分や、大事に思うが故に衝突しながらも二人で乗り越えていくという部分が毎話の見どころかなと思っています。耳が聞こえないことで誤解が生じた時、前向きに問題を解決していくさまが、耳が聞こえない人にだけではなく、たくさんの人の心を打つものがあるかなと思います。私は、台本を読んでいて毎回心打たれているので、ぜひ観ていただきたいなと思います。
読者の皆さんへメッセージ!
――最後に読者にメッセージをお願いします!
「しずかちゃんとパパ」は耳の聞こえないお父さんと、そのお父さんとずっと暮らしてきた静という二人の親子の物語です。一人の男性と出会って親離れ子離れをしていく過程の中で、いろいろな家族の愛や、立ちはだかる壁への向き合い方など、届けたいメッセージが詰まっている作品です。全然、重くなく、笑いながら見ていただけると思うので、楽しみに待っていてください。
第1話のあらすじ
野々村静(吉岡里帆)は地方都市の商店街で写真館を営む父の純介(笑福亭鶴瓶)と二人暮らし。純介は生まれつき聴覚障害を抱え、同じくろう者だった母は静が幼い頃に他界している。耳の聞こえる静は、幼い頃から純介の耳代わり口代わりを務めてきたため、相手をジッと見つめたり、身ぶり手ぶりで話すクセがある。そのクセは事情を知らない人々から「こび」とか「ガサツ」と受け止められ、傷つくことも多い。ある日、アルバイト先で面識のある道永圭一(中島裕翔)がケバブ屋でつるし上げられている場面に遭遇する。
第2話のあらすじ
静が純介と一緒に出席したスマートシティー化計画の説明会に、開発業者の一員として圭一が現れた。カタカナ交じりの説明で煙に巻こうとする業者に対し、純介は手話を静に通訳してもらいながら計画反対の立場を表明する。賛同する商店街のメンバーから怒号が飛び交う中、いきなり圭一が立ち上がり、子どもの頃のランドセルの思い出話を語り始める。ぽかんとする一同だが、静だけは圭一の言わんとすることを理解していた。