「年齢にはこだわらなくなっちゃいました」。
30歳前の心境を、屈託のない笑顔で明かした田中れいな。
福岡・博多出身の田中は2003年、13歳で6期メンバーとしてモーニング娘。に加入。デビュー曲となった「シャボン玉」でセンターに立ち、以来、10年4カ月の在籍期間の多くでセンター、メインボーカルとして活躍し、グループをけん引した。
加入当時は中学生だった彼女も早いもので、11月11日で30歳に。「ステージが大好き」と話す田中は、グループ卒業後もライブ、舞台、ミュージカルと精力的に活動を続け、現在は、舞台「信長の野望・大志 -零- 桶狭間前夜 ~兄弟相克編~」(11月14日[木]開幕)にて、織田信長の妹・お市役での出演を控えている。
女性にとって、30歳“アラサー”というのは男性以上に節目を意味する言葉だろう。役者としても似合う役は変化してくるはずだ。そんな先入観に対する田中の答えが、冒頭の言葉だった。
30歳というタイミングで挑む今回の舞台への心境。思い返すモーニング娘。時代のこと。そして、来年のライブ情報も明かされた。
大人っぽく見られたいのか、若く見られたいのか。私は別に「このままでいいかな」という気分です
インタビューは誕生日前の11月初旬。モーニング娘。からスタートし、見られることが仕事であった田中れいなにとって、「若くありたい」と思う気持ちは人一倍強いだろうと想像をしていたのだが…。
田中れいな:この間も聞かれたんですが、実は、それほど特別な感情は出てこないんですよ。たしかに28歳、29歳になったときは、「もうすぐ30歳かあ…」という気持ちにはなったんですけど、実際に30歳間近になってみたら、普通ですね。ちょうど稽古の最終日と重なっていて、むしろ「みんな何をしてくれるのかな?」って、ワクワクしてるくらいです。
――30歳という節目を、ネガティブに捉える女性も少なくないと思うのですが、田中さんにはそのような感情はない?
田中:私はないですね。もっと大人っぽく見られたいのか、若く見られたいのか。その気持ちは女性それぞれで、私は別に「このままでいいかな」という気分です。ネガティブでもないし、多分、周りの反応が変わるだけかなと思っています。「いくつ?」と聞かれて、「30です」「えー!」みたいなのが、より「ええー!!」になるんじゃないかなって(笑)。
――それにしても、田中さんの10代後半からの変化のなさは驚きです。昨年、ハロー!プロジェクトのコンサートにゲスト出演した際も、モーニング娘。時代と同じ姿が話題になっていました。
田中:最近、家の整理をしているんですよ。そのときに連載記事を載せていただいていた「CD&DLでーた」(KADOKAWA、2006~2013年連載)の写真がたくさん出てきて、母と「懐かしいね」って見ていたんです。で、(今の写真と)並べたら、「どっちか分からんね」っていうくらい変化がなさ過ぎて。連載を終えたのがモーニング娘。を卒業した23歳のときだから、そのくらいのときから「今どっち?」っていうくらい変わってないなんだって思いました。
――変わらない努力はしているんですか?
田中:太らないようにとか、美容は頑張っています。でも、変わらないで頑張ろうと思っても、そんなにうまくはいかないと思うんです。逆に、変わろうと思ってもいきなり変われるものでもないし。だから、年齢へのこだわりはなくなっちゃいました(笑)。そのままの自分で、変わるなら自然に変わっていくと思います。
そう。「CD&DLでーた」の写真で、母と一緒に違いを見つけていたんですよ。「今とどこが違うかな?」って。そしたら、眉毛の上がり具合だったんですよね。実は私、眉毛が上がっているのがコンプレックスなんですよ。メイクで上げているわけでなく、元々上がっているんです。それがずっとコンプレックスになっていて。
――きつく見られるからですか?
田中:そうです。「眉毛が平行なら、もっと柔らかい顔になるのにな…」って、子供の頃から思っていて。昔の写真を見ると、本当に“つんく♂さん眉”なんですよね。ひらがなの“へ”みたいな。昔からきつく見られがちで。意識して下げ始めたわけではないんですが、今の写真と見比べると、「眉毛が下がったな」っていう違いは見つけられました(笑)。
モーニング娘。のとき、低い声を意識して直していた
インタビューの前に過去のコンサート映像、ラジオ番組などを見返したが、変わらない容姿に対し、声、口調の変化は一つ気付く点だった。
田中れいな:ラジオを聴き返したりしないから分からないです(笑)。でも、「モーニング娘。のとき、声を作っていたな」というのはありますね。加入して、テレビからの自分の声を聴いたとき、「低っ!」って思ったんですよね。それまで自分の声を外から聴いたことがなかったから、ちょっとびっくりで。それからかわいく聴こえるように、意識してしゃべるようになったと思いますね。
この間「怪盗レーニャ」(2010年、KBCテレビ / 田中をモデルにしたアニメ番組。自身が主演を務めた)のインタビュー動画を見返す機会があったんですよ。そしたら、(高めのトーンで)「れーなは~」「何々で~」ってしゃべっていて(笑)。それは自分でも面白かったです。声が低いのが嫌だったので、プライベートから高い声で話すクセをつけ、意識をして低い声を直しました!
――博多弁は変わらずですが、少しあった舌っ足らずさが消えて、口調も東京っぽくなりましたよね。
田中:そうですか? 「なんでそんなに博多のままなの?」って言われるんですけどね。でもそうなのかな? 自分では分からないです(笑)。
――30歳のことでもう一つ。役者を続ける上で、35歳、40歳と、今後のことを考えることはないですか?
田中:年齢のことは全く頭にないですね。年を考えていたらやっていけないし、頂いた役に合えばいいと思います。それに私、お芝居は好きですけど、「10年後もお芝居を続けていくために」というのは、正直考えたことはないんです。私にとっての一番は、やっぱりライブなんです。
ずっと言ってますけど、ライブは何歳になっても続けていきたい。ライブこそ、40歳だからこうしなきゃいけないっていうのはないじゃないですか。だから、先々の年齢を考えるということはないですね。
あっという間の10年。気付いたら“元”モーニング娘。
モーニング娘。在籍の10年。コンサートに加え、テレビ、映画、舞台、声優など、さまざまな仕事をこなしていた。その経験は、卒業後の大きな糧となっている。
田中れいな:でも、モーニング娘。のときは仕事が舞い込んでくるのが当たり前で、その当たり前のありがたさが分からなかったんですよね。そのありがたみも、卒業してすぐに実感したわけでなく、ここ2、3年でのことです。
いろいろな舞台に出始めて、いろんなジャンルの方とお話をさせていただく機会が増えてから、一つ一つの仕事に対して、もっと何かを残していこうと考えられるようになったと思います。お仕事をする上で、私を選んでいただいたことに、しっかり応えようって。モーニング娘。のときもその気持ちで出ていましたけど、今は意識の強さが違いますね。言われたからでなく、自分の意思で、ここで何をして、何を残せるのか。
――今振り返って、特に思い出される仕事は何がありますか?
田中:そんなの多過ぎて話しきれません(笑)。デビューから17年ですよ。30歳にならなくても、私はモーニング娘。を卒業した時点で加入当時のことがもう懐かしかったです。
――コンサート以外のことでは?
田中:家の整理でいろいろなものが出てきて、こんなお仕事もしたなっていうのは思い返しました。写真集ではいろいろな服を着て、水着も着たし。声優のお仕事、スポーツの応援(2006年、世界バレー応援サポーター / 2005年、楽天球団応援歌)もしたな、とか。
私(6期メンバー)のお披露目はさいたまスーパーアリーナだったし、そういう経験って、やりたいからといってできることではないし、すごい経験だったと思うんです。でも、デビューのときの風景は断片的にしか覚えていないんですよね。多分、やらされてる感満載だったところもあると思うので(笑)、今の自分でもう一度やり直せればいいのになって思いますね。
モーニング娘。の10年間はいろいろなことを一気に経験して、あっという間に卒業。気付けば「“元”モーニング娘。だ」みたいな感じです。
14歳のお市は天真爛漫。“妹感”は今回の見どころに
出演する舞台「信長の野望・大志」は、同名の歴史ゲームをモチーフに描くオリジナルの戦国絵巻シリーズ。今回は「桶狭間の戦い」に行く過程を、織田信長視点のSIDE信長、織田信行視点のSIDE信行の2パターン公演で披露する。物語の中、田中れいなが演じるお市は13歳、14歳頃の少女時代に戻るという。
田中れいな:14歳の市は、天真爛漫。姫だけど、所作も姫っぽくないですし、本当に元気な女の子ですね。とにかく信行兄(にい)が大好きな子で。今までの3作は信長兄に寄り添って、背中を押す役どころでしたけど、今回は信行兄には甘えるけど、信長兄には壁を作っている感じです。
もっと小さい頃の幼少期、少女時代、大人の市がシーンによって混ざってくるんですけど、大人の市には信行兄に懐いていた小さい頃のことをあまり覚えていないんですよね。そういうのは、私的には寂しいなって思っちゃいます。
――幼少期、少女時代のお市をどう表現するか。演技のプランは固まっていますか?
田中:子供の市と大人の市の差が伝わるように、子供の市は3歳児くらいの勢いでお芝居を作っています。13歳、14歳って、実際はしっかりしゃべれる年ですけど、変化が小さいと分かりづらいだろうなって。アホではないけど、舌っ足らずに「あにうえ~」っていう感じで大げさに。
2作目の「冬の陣」で幼少期の市を少し見せましたけど、それ以上に子供というか。あのときはただ勝気な子でしたけど、今回は甘える妹の姿になっていて、そこは今までの3作では出していなかった市の姿ですね。
――「冬の陣」幼少期のお市はかわいいと評判だったので、ファンは楽しみにしていると思います。ちなみに、SIDE信長とSIDE信行、どちらの出番が多いですか?
田中:今回は、どちらかというと信行のほうですね。
――では、舞台全体の見どころはどんなところになりますか?
田中:やっぱり視点違いの2パターン公演ですが、今回は今まで以上に、両サイドを見たときの「そうだったのか!」という驚きが大きいと思います。
私、歴史に疎いから、いつも台本を読みながらカイちゃん(信長役・鶏冠井孝介)たちに「ここってどういうこと?」って教えてもらってるんですよ。そこで分かる驚きが今まで以上に大きくて、答えが一致したとき、「信行って、そんな気持ちだったんだ…」ってすごく切ない気持ちになったんですよね。だから、皆さんも「よく分からないな」と思わずに、ちゃんと両サイドを見て、答えを導き出してほしいと思います。
舞台ならではの田中の歌声。来年は再びライブを開催
田中れいなの歌唱スキルはモーニング娘。加入時より評価されており、今夏に出演した全国ツアーミュージカル「赤毛のアン」では主演アン・シャーリー役として、22もの楽曲を披露。舞台「信長の野望・大志」シリーズでは毎作、主題歌、劇中を歌い上げている。そして、今作でももちろん新曲が用意されている。
田中れいな:今回の新曲はですね。実は、今聴いてきたばかりなんですよ(笑)。まだ自分では歌っていないんですけど、デモを聴いた感じでは、すごく寂しい雰囲気の曲。寂しいんですけど、私は「これ好きだな」って感じる曲でした。
――田中さんが歌うお市の歌は、本シリーズの大きな魅力になっています。ライブとは違う心構えはありますか?
田中:やっぱりシーンを大事に、というところ。先月のソロライブで「わらべうた」という舞台の曲を歌ったんですけど、そのライブ感覚が残っているから、さっき稽古で歌ったとき、めっちゃ大きい声を出してしまって。
セリフを消したらお客さんは舞台を楽しめないですよね。お芝居に添える私の歌なので、「私はBGM」というのを今日改めて意識しました。今回の新曲も、印象的なシーンに添えるように気持ちを入れて歌いたいです。
――最後に、来年の活動で報告できることがあれば教えてください。
田中:来年、またソロライブをやります! 詳細はこれからですけど、楽しみにしていてください!!
「信長の野望・大志 -零- 桶狭間前夜 ~兄弟相克編~」は、戦国の天下統一を目指す武将たちの物語。シリーズ第4作となり、織田信長視点のSIDE織田信長、織田信行視点のSIDE織田信行を交互に上演する。公演は、11月14日(木)~20日(水)、東京・かめありリリオホールにて。23日(土)、愛知・名古屋特殊陶業市民会館 ビレッジホールにて。(ザテレビジョン・文・撮影:鈴木康道)