江頭2:50のYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」の勢いが止まらない。2月1日の初投稿後、4月15日深夜にはチャンネル登録者数200万人を突破。わずか74日という短期間での200万人達成は、国内では嵐に次ぐ2位のスピード(YouTuberランキングサイト、ユーチュラ調べ)。その後も順調に登録者数を増やしている。
お尻に筆を挿して書道をする「お尻書道」、お尻から粉を吹いて絵を描く「バンク尻ー」など、YouTubeのガイドラインギリギリの企画から、歌、トークなどと、幅広いジャンルの動画の中に一貫しているのは、江頭2:50の「やりたいことを全部やる。面白いこと全部やってやる。99 人に嫌われても1人が笑ってくれたらそれで勝ち!」という信念だ。その思いが視聴者に伝わっていることは、愛の溢れたコメント欄を見ても分かる。
そんな「エガちゃんねる」の制作を手掛ける藤野義明氏にメールインタビューを行った。なぜこれほど多くの支持を受けているのか? 制作の舞台裏に迫る。
藤野義明氏Profile=制作会社「ばんぺいゆ」代表。テレビ番組などでプロデューサー、演出・ディレクターを務める。「エガちゃんねる」のほか、「さまぁ~ず×さまぁ~ず」「トゥルさま☆」「7.2 新しい別の窓」「あいつ今何してる?」等、多くの人気番組を手掛けている。過去には「『ぷっ』すま」「内村プロデュース」「エガちゃんピン」なども担当。
誰のハンコもいらないYouTubeでやっちゃおう
――江頭2:50さんとYouTubeを始めることになったきっかけを教えてください。
江頭さんとは「『ぷっ』すま」を担当していた頃にお会いして、それから約15年ほどお付き合いさせていただいてます。
10年ほど前に「江頭さんとテレビではできないような番組をやりたい」と思い、dTVで「がんばれ!エガちゃんピン」という番組を始めました。しかし、ネット番組でもコンプライアンスが厳しくなっていく中でその番組も終了し、地上波では江頭さんが準レギュラーのように出演していた「『ぷっ』すま」「めちゃ×2イケてるッ!」「とんねるずのみなさんのおかげでした」の3番組が一気に終わりまして…。
そこでまた江頭さんと何か新しいことをスタートしたいと話していて、江頭さんと相談した結果、YouTubeで「エガちゃんねる」を始めることになりました。
――テレビ局や定額動画配信サイトなどに企画を持ち込むことも可能だったと思うのですが、YouTubeを選択された理由は?
正直、面白いこと、江頭さんがやりたいことができるならどこのメディアでも良かったのですが、コンプライアンスとかいろいろあって、上の方々から絶対に弾かれてしまうんですよね。なので誰のハンコもいらないYouTubeでやっちゃおうということでYouTubeで始めることにしました。(始めた頃は江頭さん、YouTubeのことよくわかってない状態でした笑)
――江頭2:50さんは体を張った企画から、トーク、ロケ、バラエティー番組のオマージュなど、「NGなし」で多彩なジャンルに挑まれています。制作をするうえでのコンセプトやこだわっている点、苦労している点を教えてください。また、江頭さんと相談して決められた「ブレない軸」「この方針だけは守る」のようなことはありますか。
江頭さんの座右の銘「1クールのレギュラーより1回の伝説」という言葉は常に念頭に置いて番組を作っています。
ただYouTubeの場合、過激すぎるものは広告がつかなくなってしまうので、配信しているものの中には結構広告が付いていない回があります。でも、そういったことも楽しみながらやっていければと思っています。
またYouTubeでは、今までテレビ等では出していなかった江頭さんの素の部分も見せていきたいと思っています。もちろん過激な江頭さんも魅力的なのですが、僕は素の江頭さんも大好きでして。ただし素の部分を見せることは、今までの過激な江頭さんのイメージを崩してしまう可能性もある。なのでA面B面バランスを見ながら、新たな側面を少しずつ皆様にお見せできればと思っています。
本日(25日)、江頭さんのモーニングルーティンの動画が公開されたのですが、江頭さんが自宅を初公開していて、さらに江頭さんが初めての自撮りに挑戦しています。こちらは今までで一番江頭さんの素が出てますので、ぜひ見ていただきたいです。こんなのテレビでは100%できませんし(笑)。
江頭さん本人が楽しめる企画作りを
――企画はどのように決められているのですか?
基本は江頭さんと話し合って、江頭さんがやりたいことを中心に企画を作っています。あとYouTubeの場合は視聴者の皆さんからの声もダイレクトに届くので、皆さんの希望から企画に展開していったりというのもありますね。
――それぞれの企画で江頭2:50さんの面白さや魅力を引き出す工夫がありましたら教えてください。
気を付けているのは「江頭さん自身が楽しんでいるか」。江頭さんが楽しんでると、それは視聴者の皆さんに伝わって、皆さんも見ていて元気になれるのかなと思うので、江頭さん本人が楽しめる企画作りを心がけてます。
――特に印象に残っている回はどれですか?
「やりたいこと、面白いことは全部やろう!」と江頭さんと「エガちゃんねる」を始めて、お尻に筆をさして書道したり、お尻から粉を吹いて絵を描いたりしたら、そういうのは全部広告審査に落ちてしまいました。そのようにこちらが手応えあったものは広告審査に落ちてしまったり、女性からは全くウケないんです(笑)。
逆に、配信するのが不安だった「猫の爪を切る」というほのぼの動画が女性に人気だったりして…。
何が人気になるのかはまだ探り探りやっている状況ですが、広告を諦めさえすればやりたいことをやれているとは思います。
江頭さんはコメントをしっかりチェックしています(笑)
――収録中や打ち合わせ時などでの、江頭さんとの印象的なエピソードを教えてください。
今までネットから遠い世界に住んでいた人が、YouTubeを始めて急にど真ん中にほうり投げられてしまったみたいなところがありまして。
意外と視聴者の皆さんからのコメントをしっかりチェックしていますね(笑)。江頭さん、動画自体は恥ずかしくて見ないんですが、コメントはしっかり見ていて、「あれ評判良かったね〜」とか「全然ダメじゃん!」とか会うと言ってますね。
エゴサを覚えたというか(笑)。今まではそんな会話は全くなかったので、その進化は見ていて楽しいです。
――登録者100万人、そして200万人を突破したときの心境を教えていただけますでしょうか。また、「エガちゃんねる」や江頭さんが、これだけ多くの人を引きつけた理由をどう分析していらっしゃいますか?
正直なところ、1年以内に100万人を目標にしていたので、みんなまだ実感がわいていないところはありまして、うれしいのはもちろんですが、それよりも驚きが勝ってるかもしれません。
このスピードはやはり江頭さんが今まで芸人人生で積み上げてきた「信頼」、そしてYouTubeでもめちゃくちゃなことをやってくれるだろう、いろいろとぶっ壊してくれるだろうという「期待」があると思います。
これだけ早く増えたというのは、逆を言えば期待を裏切ってしまうと落ちるのも早いとは思っているので、現状に浮かれることなく、皆さんの期待に応えられるようなものを粛々と作っていこうとは話しています。
YouTubeはより強力なメディアへ
――最近は新型コロナウイルスの影響で、テレビもYouTubeも制作スタイルに大きな変化が出て来ています。この状況をどうとらえていらっしゃいますか。
広告費が削減されることにより制作費が減ってはいますが、営業停止にされているわけではないので、そこはありがたく感じながら、皆さん家にいる時間が増えた中で、少しでも元気になってもらえるようなものをできる中で粛々と作っていこうと。
その中で、各番組もちろんそうだと思いますが、やはり「この状況をどうプラスに持っていけるか?」がポイントになっていて、5月はその切り口で各番組新しい挑戦をし続けて、それはそれで新鮮に見られたと思います。ただ6月に入るとそれも飽きられてしまうフェーズになってくるので、チャレンジの連続には変わりないかと。
これから少しずつロケ・収録の規制も緩和されていくとは思いますが、その中でまたできることを探っていこうと思っています。テレビやYouTubeも早く通常通り撮影ができるようになることを祈っています。
――この期間は、YouTubeをはじめ、SNSでより多くの動画が公開されたと思います。多くのテレビ番組を手掛けてきた藤野さんだからこそ見える「YouTubeの可能性」がありましたら教えていただけますでしょうか。
テレビの良さ、YouTubeの良さはそれぞれ前提としてある上でですが、「YouTubeの可能性」としては、テレビでは不可能なこと、そんなこと提案したらバカだと思われるようなことがYouTubeではできてしまう、ということでしょうか(逆もまた然りなのですが)。
星野源さんの「うちで踊ろう」は誰でも自由にコラボできるようにしていたり、錦戸亮さん、赤西仁さん、山田孝之さん、小栗旬さんがプライベートな場所から1つの画面で話している。テレビではいろんなしがらみで絶対できないキャスティングが、YouTubeでは個人的なつながりだけで実現できてしまう。1つのハンコも無く思いついたその日に生配信ができる機動力もあったり。
そんなメディアに、今テレビの番組作りのノウハウ・技術を持った人たちも参入してきているので、YouTubeのメリットとテレビで培った人の技術がうまくマッチングできれば、より強力なメディアになっていくのではないかと思います。
海外ロケも予定
――最後に「エガちゃんねる」の今後の目標や、したいことなどを教えていただけますでしょうか。
テレビでは絶対に実現できないような地方ロケ、海外ロケを江頭さんと計画していたタイミングでコロナの感染が拡大し始めたので、コロナが収束したらそれを実現させていきたいですね。詳しくはまだ言えないのですが、みなさんをワクワクさせるものをお届けできたらと思います。(ザテレビジョン)