6月14日(金)より公開される映画「柴公園」。街の公園を舞台に、柴犬を散歩するあたるパパ(渋川清彦)、じっちゃんパパ(大西信満)、さちこパパ(ドロンズ石本)ら3人のおっさんが会話劇を展開していく。今回、真っ白な柴犬・ポチを連れたポチママ(桜井ユキ)を取材。作品の見どころの他、柴犬だらけの撮影現場の様子など話を聞いた。
――ドラマ版そして映画版とポチママを演じましたが、桜井さんは元々ワンちゃんは好きでしたか?
好きです。4~5年前まで飼ってたんですけど、実家に連れて帰った時に両親が溺愛しちゃって、私も忙しい時期だったので預かってもらったら、いつの間にか父の犬になっていました。
でも結局一人暮らしで寂しい思いをさせるなら、実家で両親がかわいがってくれた方が犬にとっても幸せかなと。なので帰省すれば会えます。
――ちなみにワンちゃんの名前は?
コバヤシです。
――え?ワンちゃんの名前が!?
コバヤシチイです。
――ドラマ版でもポチ命名にまつわる話が出てきましたが、桜井さんのところのワンちゃんでもエピソードが作れそうですね?
チワワなんですけど、チワワって「私、かわいいでしょ?」みたいな顔をしてるじゃないですか。そこにあえてちょっとズレた名前を付けたくなって、名字にしようと。
それで「コバヤシ」になったんですけど、さすがに人前で呼びづらくて(苦笑)。飼いだした時に、すごく小さかったので、すこぶる簡単な理由から「チイ」を付け足しました。
――ポチママはこれまで桜井さんが演じてきた役柄とは系統が違いますね?
全然違いますね。近い役もなかったのですごく新鮮でした。私の役もですし、作品の世界観自体がこれまでにない感じで。すべてに置いてスペースがあるというか。そもそもワンちゃんありきの作品ですので、とにかく新鮮でした。
――これまでにない役柄ということですが、オファーが来た時は?
こういう役柄をやらせていただけるんだといううれしさがありつつ、果たして大丈夫だろうかと心配でもありました。これまで、割とキツイイメージのものが多くて。
でもポチママは、コミュニケーション障害的なところもありますが、どちらかというと柔らかい、トゲのないキャラクターですから。
ただ綾部真弥監督が、桜井さんのそういう部分をすごく見てみたいんだよねとおっしゃってくださったんです。あとは衣装やワンちゃんにも助けられながら、結果成立したかなと思っています。
――ワンちゃんがいる現場は大変そうだとは思いませんでしたか?
思いました。ワンちゃん待ちとかあるんだろうなと思っていたのですが、どのワンちゃんもプロなので、ワンちゃんNGのようなものは、ほぼほぼありませんでした。
むしろ渋川さん、大西さん、石本さんのせりふの量がとにかく膨大なので、それが大変そうだなと。そんな中で、ワンちゃんは癒やしでした。
――ポチママはポチを溺愛しているという訳ではありませんが、それでもポチとコミュニケーションは図っていたのでしょうか?
もちろんです。ポチは今回のワンちゃんたちの中でも、年齢的にもお仕事のキャリア的にも上で、肝の据わり方が違いました。
なので、最初に「よろしくね」と言った時にも、「あ、はあ」と軽くあしらわれた感じだったんです(苦笑)。目も合わせてくれなくて、最初は寂しかったです。あたるくんとかは愛嬌(あいきょう)があるんですが、ポチは達観している感じで。
でもだんだんと、過剰に人と距離を縮めようとしないところがかわいいなと思えてきて、ポチも徐々にかる~くしっぽを振ってくれたりするようになったんです。
――ツンデレタイプなんですかね?
いい感じの。撮影も後半になってきたら、ハイタッチもしてくれるようになりました。健康的な距離の詰め方というか、関係を育んでいった感じがあります。
――本作のドラマもそうですが、ここ数年でテレビドラマへの出演がぐっと増えました。周囲の反応は違いますか?
はっきり違います。これまで私は映画をやらせていただくことが多かったので、あまり感じていなかったのですが、去年辺りからテレビドラマをちょこちょこやらせていただくようになって、やっぱり影響力がすごいなと。
スーパーで買い物をしていたら話し掛けられたりして。毛玉のいっぱい付いたジャージーにキャップをかぶって野菜を買っていたら、女の子たちがこそこそ話していて、スーパーを出たら話し掛けられたんです。
「役者、目指してるんです!」ってとてもかわいらしい感じで。うれしかったですが、すごい格好をしていたので、恥ずかしかったです(笑)。
――桜井さんは子供のころから女優になると決めていたそうですが、実際に女優というお仕事をされていて、やっぱり自分の場所はここだなと感じますか?
思いますね。ここがなかったらと思うとぞっとします。おばあちゃんになっても役者で、と決めつけている訳ではありませんが、でも表現や、何かを生み出すということには携わっていきたい。表現者でありたいという希望と願望は持っています。
――ご自身で分析するのは難しいかもしれませんが、今回、桜井さんが演じたからこういうポチママになったと感じる部分は?
あまり人と話せずに、自分の世界の中で生きているところがありつつ、芯にある頑固さが、消すことのできない私自身の目ヂカラからにじみ出ているかなと(笑)。
――改めて、映画版が公開されるに当たり、作品の魅力を教えてください。
渋川さんが、何かのインタビューで「中身がないようでいて、やっぱりない」とおっしゃっていたんです。本当にその通りだなと思って。
――でも面白い?
そうなんです。でも日常ってそうですよね。もちろん起承転結のはっきりあるドラマや映画も面白いですが、ネガティブな意味ではなく、日常ってそんなものだと思うんです。
なんとなく散歩に行ったら人と出会って、何かに巻き込まれたりとか、そういう意味では、なんて壮大なドラマなんだろうとも思います。
一番自分の日常の目線と近いところで物語が展開してる。それがやっぱり魅力かなと。お三方の、そんなことで時間取る?みたいな会話も(笑)。
――そこから人間の面白さ、おかしみを感じます。
いいなこのせりふと感じるものがたくさんあります。いわゆる決めぜりふではなく、何気ないところから生まれる、そういった言葉の方が説得力があるんだなと思いました。ゆるい雰囲気の中で、やけに納得させられる映画です。
――桜井さんのファンの方には、映画でどこを見てもらいたいですか?
このシリーズでは、いつもより圧の弱い私が見られます(笑)。いつもいろんな圧が高めなので、私を見る時には、ちょっと気合を入れないとということがこれまで多かったかと思いますが、この作品では、ゆったり、リラックスしている時でも見ていただける私がいます。新境地にはなっていると思いますよ。(ザテレビジョン)