「1才未満の乳児には、はちみつを与えない」ということは、母子健康手帳にも明記されていて、はちみつのラベルにも基本的には注意喚起の記載があります。保健所などで行われる離乳食指導でも、説明がなされているはずです。
はちみつは健康にいいイメージがある食品ですが、1才未満の赤ちゃんに与えてはいけないのはどうして?
はちみつ以外にも注意するべき食材はあるの?
赤ちゃんの命を守るには、ママたちが正しい情報を正しく理解することが大切です。赤ちゃんの離乳食として、与えてはいけない食べ物について、管理栄養士の太田百合子先生に聞きました。
乳児ボツリヌス症とは?
乳児ボツリヌス症は、主にはちみつが原因で起こり、ボツリヌス菌の芽胞(がほう・菌の種のようなもの)が体内に入ることで発症する感染症です。
1才までは、腸内の菌の種類が大人とは違い、消化吸収の機能も未熟です。そのため、ボツリヌス菌芽胞が赤ちゃんの腸内に入ると、成長して増殖し毒素を出すことで、便秘などの症状が現れます。死亡率は高くはなく、病院できちんと治療すれば後遺症もなく完治することが多いです。しかし、重症化すると呼吸困難や呼吸停止に至ることもあります。
1才以降には腸内環境が整うので、乳児ボツリヌス症の心配がなくなってきます。また、母乳には影響しないので、授乳中のママがはちみつを食べても問題はありません。
窒息すると命の危険も!誤嚥が心配なNG食材
誤嚥とは、食べ物や異物が誤って咽頭と気管に入る状態のこと。赤ちゃんは大人より咀嚼力が弱く、気管が狭いため、食べ物や異物が詰まりやすく注意が必要。誤嚥によって窒息が起こると、命の危険があります。
子どもの誤嚥の原因で上位に上がるのがナッツ類。ピーナツやアーモンドは、そのままで与えると気管に詰まりやすく、離乳食期にはNG。また、こんにゃくゼリー、もちなども、誤嚥が心配なので赤ちゃんには与えてはいけません。
また、離乳食期に与えてOKの食材であっても、粒が大きいぶどうやプチトマトは、切らずにそのまま与えると、のどに詰まる可能性があります。必ず切って与えましょう。
ぎんなんは誤嚥の原因になるだけでなく、大人でもとりすぎると下痢を起こすことがあります。乳児では少量でも中毒を起こすことが心配されるので、3才を過ぎるごろまでは与えないようにしましょう。
生の魚や肉は当然NG。刺し身やおすしに要注意!
日本には、刺し身やおすしなど、魚の生食文化がありますが、離乳食の時期は野菜の一部や果物、加工品を除き、加熱したものを与えるのが基本。
赤ちゃんは細菌などに対する抵抗力が弱いため、魚だけでなく肉や卵などの食材は、中までしっかり火を通したものを与えましょう。刺し身を与えるのは、少なくても2才を過ぎてからで、新鮮なものを少量ずつに。
生もののなかでもとくに注意したいのが、イクラ。見た目がきれいで赤ちゃんが興味を持つかもしれませんが、塩分とコレステロールが多く、赤ちゃんの負担になるだけでなく、誤嚥にも注意が必要です。与えるとしても、1才以降に少量だけを、つぶして与えましょう。
いかやたこは、加熱されていても強い弾力があるので、形がある状態で与えるのはNG。赤ちゃんが食べられませんし、誤嚥の危険もあります。
お祝いや季節の行事などで親族が集まったときに、みんなでおすしを食べていると、ついつい赤ちゃんにもあげたくなるかもしれません。周囲の大人にも「1才を過ぎるまでは与えてはいけない」という注意点をママから伝えて、徹底してもらいましょう。
赤ちゃんは口の動きや歯の状態、消化器官などの働きが発達途中です。
大人とは違うので、発達の段階によって食べていいものと、まだダメなものがあります。
生後5カ月ごろから、赤ちゃんは離乳食でさまざまな食材、味、香りを体験します。発達の段階に合わせて与える食材を増やしていくことは、赤ちゃんの咀嚼や胃腸の発育を促し、食べる意欲や好奇心、探究心を育てます。
「間違ったものを与えるのが怖いから、ずっと母乳だけ」
「肉や魚はなんとなく怖いから、野菜だけしかあげない」
などと、ママが怖がって赤ちゃんに与える食材を制限してしまうと、赤ちゃんの成長を妨げてしまいます。
大切なのは、正しい知識を持って発達の段階にあったものをあげること。注意するべき食材には気をつけながら、発達の段階に合わせて食材を増やし、おいしく楽しい離乳食タイムをつくってあげましょう。(文・ひよこクラブ編集部)
監修/太田百合子先生(管理栄養士)
東京・こどもの城で長きにわたり乳幼児の栄養指導を行う。現在は大学や専門学校の非常勤講師のほか、講演会などでもご活躍です。
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