待ちに待った「ピザ 百名店」の発表
「食べログ ピザ 百名店 2021」が発表され、すでに多くのピザ好きがご覧になっていることと思います。前回の記事では今年の百名店について、ナポリピッツァジャーナリストのJaffaさんに解説をしていただきました。
今回は「食べログ ピザ 百名店」を見て、お店に行ってからメニュー選びで迷わないコツ!を教えていただきたいと思います。
教えてくれた人
Jaffa(ジャッファ)
ナポリピッツァジャーナリスト。日本人では唯一「真のナポリピッツァ協会ナポリ本部」から認定された公式ブロガーで、食べ歩きオールスターズ「食べあるキング」のナポリピッツァ担当。これまでに4千枚を超えるナポリピッツァを食べ歩き、ブログ「旨い!ナポリピッツァ」が人気。InstagramやTwitterで毎日ナポリピッツァの情報発信をしながら、TV、ラジオ、雑誌等でピッツァの解説、百貨店催事プロデュースやピッツァ職人コンテストの審査員、ナポリピッツァのメニュー開発なども手がけている。
マルゲリータとマリナーラの奥深さ
ピザ 百名店に掲載されているような人気店に行くと、ピッツァのメニューだけで10~30種類くらいあり、迷う人も多いと思います。しかもイタリア語で書いてあるから余計に混乱して、結局誰もが知っているマルゲリータを注文してしまうこともあるでしょう。
初回訪問時には「マルゲリータ」を頼むと決めている人も多いと思いますが、私は初めて行くお店では「マリナーラ」を頼みます。
マリナーラはトマトソース、ニンニク、オレガノだけのシンプルなピッツァなので、生地の旨みと焼きの良さ、トマトソースの塩梅というその店の基本を味わうことができるからです。
このマリナーラがおいしければ、何を頼んでも間違いないと言える基本メニュー。初めて来店した客が、いきなりメニューも見ないで「マリナーラ」と注文すると、ピッツァイォーロ(ピッツァ職人)は緊張すると言います(笑)。
また、マルゲリータが好きなら、ミルク感の濃い水牛のモッツァレラチーズを使った「マルゲリータエクストラ」や「D.O.C.」が良いでしょう。
マルゲリータエクストラは、トマトソース、水牛のモッツァレラチーズ、バジルというマルゲリータの上級バージョンのこと。「ブファリーナ」という名前で呼ばれることもありますが同じ内容です。
また、D.O.C.は、水牛のモッツァレラチーズとバジルは一緒ですが、トマトソースの代わりにミニトマトをたっぷり使った最高級のマルゲリータです。
本来「D.O.C.」とは「Denominazione di Origine Controllata(原産地統制呼称)」の略なので、チーズやトマト、トマトソースなどすべての食材に、D.O.C.(現D.O.P.)認定を受けた食材を使わなければいけません。
現在日本では一般的にトマトソースは少量、または使わずにミニトマトのみを使ったD.O.C.が多くの店で提供されています。
いずれにしてもミルクの風味が濃い水牛のモッツァレラチーズが窯の熱で溶かされて、ミニトマトやトマトソースと混じり合って乳化した部分が格別においしいので、マルゲリータを頼む時に水牛のモッツァレラチーズを使った物があればぜひ食べてみてください。
ビアンカとロッサの違い
初回にマルゲリータやマリナーラを食べたら、それ以外のピッツァも食べてみたくなりますよね? その時に見るべきポイントは、まずメニューの一番上です。
「Bianca(ビアンカ)」と「Rossa(ロッサ)」と書いてあることが多く、それぞれの下に色々なピッツァの名前が書いてあると思います。
ビアンカとは「白」という意味でトマトソースを塗らない、モッツァレラチーズを中心としたピッツァのことなので「チーズベース」という書き方をしてる場合もあります。
ロッサは、「赤」という意味で、トマトソースを塗って焼くピッツァのことなので「トマトソースベース」と書かれていることがあります。
2人で頼むなら、ビアンカとロッサから1枚ずつ頼むのが、バランスが良いと思いますが、そこはお好みでどうぞ!
選ぶのが面倒くさい場合の注文の仕方として「ビアンカで1枚、ロッサで1枚、お薦めのものをお任せでお願いします」なんて言うと「ツウ」っぽいです(笑)。
例えばマルゲリータでもチーズや生地をしっかりと楽しみたいなら、マルゲリータをビアンカで頼むと、トマトソースの代わりに生のチェリートマトとモッツァレラチーズ、バジルをのせたマルゲリータを焼いてくれます。
チーズや素材の味を中心に楽しみたければビアンカ、トマトソースのしっかりした味付けが好みならロッサを頼んでください。
それに合わせるワインも、ビアンカなら白ワイン、ロッサなら赤ワインというように、色で合わせると大抵は合うので覚えておくと良いでしょう。
メニューのピッツァに好きなものをトッピング
ピッツァのベースをビアンカかロッサか決めたら、次はトッピングです。
メニューがたくさんあるピッツェリアも、トッピングのバラエティを書いているだけなので悩むことはありません。
野菜好きなら「オルトラーナ(菜園風)」、色々な野菜をのせた野菜好きのためのピッツァです。これも「オルトラーナでロッサ」とか「オルトラーナをビアンカで」なんて頼み方をするとカッコイイですよ。
肉系が好きなら、ハムやサラミの他に、サルシッチャ(ハーブの利いた自家製ソーセージ)、ポルケッタ(イタリアのローストポーク)、チッチョリ(豚バラのコンフィ)、ラグー(煮込み)、ンドゥイヤ(豚挽肉と唐辛子を発酵させたペースト状のサラミ)などがあります。
肉好きなら「マチェライオ(お肉屋さん風)」というピッツァを覚えておくと、その店にあるハムやサラミなど、色々な肉をトッピングしたピッツァが出てきます。他にもキノコやオリーブ、半熟卵などもトッピングにはよく使われます。
自分の好みに合うトッピングを選んで、自由にのせてもらえるようになればもう「ツウ」。私はマリナーラに揚げ茄子、キノコ、ブラックオリーブ、サルシッチャ、ンドゥイヤをのせたものが食べたいと思ったとき、メニューの中でそれに近いピッツァを探して、足りないものを追加するようにしています。
チーズの種類もフィオールディラッテ(牛乳のモッツァレラチーズ)、水牛のモッツァレラチーズ、燻製モッツァレラチーズ、リコッタチーズなどがあり、合わせるトッピングにも相性があるので、ピッツァイォーロに相談してみましょう。
燻製の香りが好きなら、マルゲリータのモッツァレラチーズを燻製モッツァレラチーズに変えてもらうだけでも、自分好みのオーダーメイドピッツァができますよ!
尚、本格的なナポリピッツァの店に「タバスコ」は置いていないので、辛くしたいときには本場のように「オーリオ・ペペロンチーノ(唐辛子オイル)」とか「辛いオイル」とお願いするとスマートです。
おいしいナポリピッツァが食べたくなったら、ぜひ「食べログ ピザ 百名店」をお役立てください。
百名店には選ばれていないとっておきの一軒
2003年5月にOPENした「ピッツェリア・トニーノ」は、真のナポリピッツァ協会認定店。ナポリピッツァだけでなく、他の料理もすべておいしく、雰囲気も良い店として地域の人気店になっています。
入口から入って目立つ所にナポリから取り寄せた薪窯があり、審査が厳しいことで有名な「真のナポリピッツァ協会」の認定看板が飾られています。
客席から外を眺めると、都内では現在2本しか残っていない路面電車のひとつ「東急世田谷線」を見ることができ、トラムが走るヨーロッパの店みたいでかっこいいですよ。
店内はまるでイタリアのような空間で、1階と2階を合わせて62席もある広い空間です。
ピッツァ職人の谷口将司さんは、ナポリの名店で活躍していましたが、2020年に新型コロナによるロックダウンのため、イタリアから緊急帰国。その後、同店で働いているという、今のナポリを知る実力派ピッツァ職人です。彼が作るピッツァは、味も食感も姿もナポリそのもの。
「マルゲリータD.O.C.」や「マリナーラ」は安定のおいしさですが、現代ナポリの人気店で提供されているピッツァが、日替わりの黒板メニューに出てくるので、他の店では食べられない本場の珍しいピッツァをおすすめしたいですね。
過去の日替わりから紹介すると「モルタデッラハムとピスタチオペースト、燻製モッツァレラ、プチトマトのピッツァ」2,500円や「レタスのスカローラ風と自家製ソーセージ、燻製モッツァレラの三日月ピッツァ」1,980円などは、ナポリの人気店で去年まで現役で活躍してきたからこそと言える本場っぽいメニューです。
行く度に日替わりを見て、他では食べられないナポリっぽいピッツァを食べてみてくださいね。
※価格はすべて税込
<店舗情報>
◆ピッツェリア トニーノ
住所 : 東京都世田谷区松原3-28-10
TEL : 03-3324-3090
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。
文:Jaffa、食べログマガジン編集部
写真:Jaffa