ESS社の最高峰DAC「ES9038PRO」を搭載
今回はOPPO Digitalから先に発売されたUSB DAC、「Sonica DAC」を紹介する。
本モデルで一番のトピックはOPPO Digital初となる、ESSテクノロジー社の最新、最高峰のDAC素子「ES9038PRO」が採用されたことだろう。ESSテクノロジーと言えば高音質DACでは知らぬ人はいないと言われるほどのメーカーだ。その最新ハイエンドモデルであるES9038PROは、2016年1月のCESで発表されたばかりのDACで、現時点でその素子を搭載した製品は、アキュフェーズDC-901やエアーQX-5Twentyなどごくわずか。OPPOでは、BDP-105やHA-1など以前からESSテクノロジーのハイエンドDAC素子を積極的に製品に採用していたが、その意味では、いつES9038PRO搭載モデルが登場するのか、待ち焦がれていた人も少なくはないだろう。
LAN/USB/アナログと多彩な入力に対応
Sonica DACの主な機能を紹介する。本機は基本的にPCとUSB接続しデジタル信号をアナログ信号に変換する、いわゆる「USB DAC」にカテゴライズすべき製品ではあるが、ソレ以外の面でも実に多機能といえる。対応メディアとしては、USBメモリーやUSB HDD等の「USBストレージのダイレクト再生」機能やLAN経由でのミュージックサーバー内の音源を再生する「ネットワークオーディオプレーヤー」機能、あるいはBluetooth / AirPlay接続による「ワイヤレスオーディオプレーヤー」機能、TIDAL/Spotifyなどの「音楽ストリーミングサービス再生」機能までこなす(※TIDALは日本では未サービス)。対応ファイル形式も幅広くPCMなら768kHz/32ビット、DSDなら22.6MHzまで可能だ(ただしUSBタイプB端子よる接続時のみ。他の入力ではPCMが192kHz/24ビット、DSDが2.8MHzまでとなる)。
この他アナログ入力も装備している。出力端子は通常のRCAアンバランスに加えてXLRバランス接続も用意されている。ES9038PROに内蔵されている32ビット精度の音量調整機能も備えていて、デジタルプリアンプとして使用できる(アナログ入力の場合は、いったんA/D変換されてからの処理となる)。もちろんボリュウムをバイパスする機能もあり、純粋なUSB DACやネットワークプレーヤーとしても使用できる。さらにボリュウムのバイパス機能は、アナログ入力だけ有効にすることも可能なので、たとえばAVアンプのフロントLRプリアウトを本機のアナログ入力端子に接続することで、2chオーディオシステムとマルチchのAVシステムの連携をスムーズにはかることも可能だ。なお、ヘッドフォン端子は搭載していない。
リモコンの代わりに「Sonica」アプリで操作可能
機能が充実過ぎて少々製品紹介が長くなったが、ここで試聴に取り掛かりたい。試聴環境はいつも通り筆者の部屋で、Sonica DACは、トライゴンのパワーアンプ・モノローグと直結とし、デジタルプリアンプとして評価したい。モノローグとの接続方法は、比較試聴のうえでRCAアンバランス接続とした。
試聴方法は(1)ノートPCとUSBケーブルでつないだUSBタイプB接続、(2)USBメモリーの直結再生、(3)Spotifyによるストリーミング再生、の3つ。(1)では、Windows PCを使い、再生ソフトはfoober2000を用いた。なお今回もノイズフィルターを使い再生環境の向上を行なっている。
ちなみに本機にはリモコンが付属しない。基本的な操作は本体だけで行なう仕様で、単にUSB DACとして使うには問題ない。もちろん、ネットワークプレーヤーやUSBストレージ再生、ストリーミング再生等の機能を使う場合は、ネットワーク環境にSonica DACを組み込み、iPad/iPhoneなどのiOS端末やアンドロイド端末等で純正アプリ「Sonica」を使うことが前提となっている。なおネットワーク接続は有線・無線ともに用意されている。
今回は無線LANでの接続を行なったが、初期設定にはSonicaアプリをインストール済の外部端末が必須だ。本体側でネットワーク接続を起動し、アプリでいくつかのステップを踏み、ガイダンスに従って簡単に接続できた。Wi-Fiのパスキーの入力が、タブレット端末側で行えるのは便利な機能だろう。もし純粋なUSB DACとして使いたい場合は、ネットワーク接続やワイヤレス機能を停止もできる。
マイケル・ブーブレの『It's Time』から「Feeling Good」(44.1kHz/24ビット/FLAC)と、トニー・ベネットとレディー・ガガの『Cheek To Cheek』から「Lush Life」(96kHz/24ビット/FLAC)を使った。
OPPOらしい端麗辛口なサウンドは、しなやかさも併せ持つ
今回の環境では、(1)のPCとの接続で聴いた『Feeling Good』がもっとも印象がよかった。ややタイトながら切れ味のいいブーブレのヴォーカルや、管楽器の響きの立ち上がりも悪くない。OPPOらしい端麗辛口なサウンドと言えるだろう。一方で(2)のUSBメモリー再生も決して劣らず、「Lush Life」の冒頭のピアノ出だしの響きがしなやかで、レディー・ガガの声もふくよかなフォルムでセクシーだ。
(1)のPC接続では、ネットワークやワイヤレス機能のオン/オフで音は比較的変化する印象を受けた。接続するシステム次第だが、USB DACとして使うのならば、前述した機能はできるだけ停止した状態とし、本機の潜在能力を最大限引き出すようなアプローチをすべきだろう。Sonica DACはそんな意味でもハイエンド・オーディオの流儀で作られたDACであり、導入の際には慎重にセッティングを行ないたい。
最後にSpotifyの試聴を行なってみた。Sonica DACはいわゆるSpotify Connectと呼ばれる機器のようで、カジュアルな音楽ストリーミング再生にもぴったりだ。Sonicaアプリには、Spotifyアイコンが備わるが、これはSpotifyアプリへ遷移するためのショートカットボタン。Spotify再生には、Spotifyアプリ側の「接続可能なデバイス」にてSonica DACを選ぶ必要がある。
本機で聴くSpotifyの音は圧縮音声とはいえなかなかのサウンドだ。特に解放感のある響きが印象的で、OPPOらしいキリッとした音の出だしもいい。Spotifyは筆者も使っていて、気軽に音楽をチェックするにはありがたいサービスだ。Sonica DACの様なオーディオ機器で利用できるのは、これからのスタンダードなってくるだろう。
OPPOのSonica DACは、PCとのUSB接続を基本に多様な機能を備えた、高品質デジタルオーディオセンターといえる存在だろう。PCとのUSB接続、USBストレージ再生、LAN、CDとの接続、Bluetooth、そしてストリーミング。多様化するいまのデジタルオーディオに対して、音源機器としてなんでも任せられる。しかも単体プレーヤーとしてはもちろんのこと、デジタルプリアンプとしても、だ。基本となる音質レベルが高く、また対応デジタルフォーマットも圧倒的なので、さまざまユーザーの環境に対応できる、極めて柔軟性が高い。個人的には価格は高くなってしまうかもしれないが、ボリュウム回路がアナログだとベストだったのだが。
たとえば、もっともシンプルにシステムを組むのなら、本機とアクティヴスピーカーをつなげば、きわめて手軽に最新デジタルオーディオ環境が構築できる。ソレ以外のシステムでも充分に応えてくれる機能は有しているから、どんなユーザーにも安心してオススメできる一台と言えるだろう。
デジタルファイル再生が主流となりつつあるいまの時代に、ピタリとミートして、しかも末永く付き合えるだろうマルチプレイヤー、それがSonica DACの姿に違いない。
(木村雅人)
<SPECIFICATIONS>
OPPO Digital Sonica DAC オープン価格(想定市場価格は¥98,000前後)
●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:~768kHz/32ビット/PCM、~25MHz/1ビット/DSD(USBタイプB)、~192kHz/24ビット/PCM、2.8MHz/DSD(DLNA)
●接続端子:デジタル入力5系統(USBタイプB、USBタイプA×2、同軸、光)、アナログ入力1系統(アンバランス)、アナログ出力2系統(アンバランス、バランス)LAN1系統他
●備考:Wi-Fi対応、Bluetooth対応、バランス出力HOT=2番ピン
●寸法/質量:W254×H76×D360mm/4.7kg