15歳で性犯罪に逢い、以後、犯人たちへの復讐を胸に、波乱の人生を送ってきた雪村葉子の手記を元に、ドキュメンタリータッチの主観映像で仕上げた映画『私は絶対許さない』が、4月7日より公開される。監督は、精神科医の肩書も持つ和田秀樹が務め、自身の専門を生かした心理描写を、前述の特殊撮影を駆使して綴っている。ここでは、映画初主演となった平塚千瑛(ひらつか ちあき)に、本作の撮影を振り返ってもらった。
――主演おめでとうございます。ズシンと来る映画でした。
ありがとうございます。確かに楽しかったという記憶はなかったですね。ただ、初めて挑戦する事がたくさんある作品だったので、私自身これから女優として歩んで行くのに貴重な体験をさせていただきました。本作に携わることができて本当に感謝しております。
――出演の経緯は?
オーディションを受けて決まりました。関係者の方が、2016年9月に発売した写真集「Birth」を見てくださったとの事で声がかかりました。
――オーディションの様子は?
監督とプロデューサーの前でまず本読みをしました。そしてその後に絡みや脱ぎがある事を知り、オーディションを終えてから原作を読み込んでみて、これは世に出さなければいけない作品だ! と私も強く感じましたので、是非この役をやらせて頂きたいと思いました。後に合格のお話をいただいた時は、本当にうれしかったです。
――その段階では、主人公葉子が二役、というのは決まっていたんですか?
いえ、その時点では決まっていませんでした。ただ、私が制服を着たらコスプレになってしまうとは感じていたので、(15歳の葉子の役に)西川さんが決まった時には、少しホっとしました(笑)。
――西川さんから平塚さんへのチェンジはどのように?
チラシからでは、この二人がどういう関係なのかよく分かりませんよね。でも、劇中で、あっ、ここでこうなるんだ! というシーンがありますので、その前後の葉子のギャップというかコントラストの意味が、見てくださる皆さんに伝わるといいなと思っています。
――葉子の役づくりはいかがでしたか?
本当に難しかったです。性犯罪のトラウマを抱えて、なおかつ復讐心に燃えているなんて、普通じゃ考えられないですから。 本を読んだりして、どういう心理状態になるんだろうって必死に勉強しましたけど、どうしても分からなくて......。悩んでいるときに、監督が、雪村(葉子)さんと実際にお会いする機会を作ってくださったんです。そこで西川さんと二人で、当時の状況を聞いて、役づくりの参考にさせていただきました。おかげで、役を深く掘り下げることができ、私の中で葉子に少しずつ近づいて行くことが出来たと思います。
私のシーンにも西川さんが登場してくるんです。そこでの二人(同じ人間だけど)の関係性について、私の中では、(いまの自分は)過去とは決別していると感じたので、過去は過去、いまはいまという風に思いながら演じたら、心情がうまくつながった気がしました。結果的によかったなと感じています。
――平塚さんが演じた葉子も、段々と心理状況が変わっていきます。
結婚してからは特に大きく変わっていったと思います。歪んだ愛情によって、自分がどんどん壊れていってしまって......。極限に行く前に、なんとか(旦那と)距離を置こうと決心して自分を取り戻していくあたりは、葉子の中でのまた新たな成長になったと感じています。すべてが言いなりだった葉子の中に別の感情が生まれてきたことが、また一つの分岐点になったと思います。
――幼少時の家庭環境もひどかったです。
本当にひどくて、信じられないですね。でもそうした環境は、中学生になってから始まったわけではなく、小さいころから言葉より先に手を上げる父親、自己中心的で葉子の味方になってくれないどころか、更に言葉の暴力などで葉子を虐待する母親。そんな環境の中で自分の気持ちを殺して我慢して生きてきて、自分は自分で守らなくちゃいけないという強さが備わって、育ってきたのかなと思いました。私は20歳の時に母親を亡くして父子家庭で育ちましたが、愛情だけは沢山かけてもらいました。葉子さんの家庭環境を考えると、その度胸が苦しくなります。
――実際にお会いした葉子さんはいかがでしたか?
こういう経験をした方、こういう家庭環境で育った方だとは微塵も感じさせないぐらい明るい女性で、しかも、周りを和ませてくれる、本当に優しい方でした。さらに、いろんな男性を引き込んでしまうような魅力もあって、ミステリアスさも兼ね備えているように思いました。そういう姿を拝見していると、すごく芯の強い方なんだなって感じましたし、生きる希望を人に与えられる存在なのかなとも思いました。
性被害に苦しんでいらっしゃる方はたくさんいると思いますが、――映画を見たら傷をえぐってしまうことになるかもしれませんけど――15歳の時に過酷な性被害に遭い、その後その苦しみや辛さ、悲しみを生きていく為のパワーに変えた一人の女性の生き方を見て頂きたいです。
――ちなみに、主観撮影ってどのようにしたのでしょう?
本当に目の前にカメラがあるんです。目線よりも少し上ぐらいですか(写真参照)。カメラマンさんがずっと横にいて、棒に固定したカメラを私のおでこの前ぐらいにずっと構えていて、私が上を向いたら上へ、下なら下へ、と動きをシンクロさせながらの撮影でした。撮影監督の高間さんと二人三脚の撮影でとても緊張しました。
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●映画『私は絶対許さない』
4月7日(土)よりテアトル新宿、
4月14日(土)より名古屋・シネマスコーレ、
4月28日(土)より大阪・第七藝術劇場にて公開ほか全国順次公開
※テアトル新宿の4月7日(土)20:30~上映前の初日舞台挨拶登壇者が決定
登壇者:平塚千瑛、西川可奈子、友川カズキ、隆大介、佐野史郎、主題歌の出口陽(元SKE48)、和田秀樹監督
<キャスト>
平塚千瑛、西川可奈子、美保純、友川カズキ、白川和子、隆大介、佐野史郎 ほか
<スタッフ>
監督:和田秀樹
企画・製作総指揮:和田秀樹
原作:雪村葉子(ブックマン社)
脚本:黒沢久子
撮影:高間賢治
制作:配給:緑鐵
配給協力:渋谷プロダクション