俳優の吉沢亮が毎回ゲストを迎え、名作椅子に座ってトークを繰り広げる本連載。第9回のゲストは、ミュージカル『プロデューサーズ』で共演をした井上芳雄さん。
これがミュージカルかって 思い知らされました
井上 吉沢くんは、今回の『プロデューサーズ』が初めてのミュージカルになるんですよね。
吉沢 そうです。もともと観るのが好きで、それこそ海外でも観ています。言葉がわからなくても泣けるし、歌や踊りからくる圧というか、普通の芝居では感じられないエネルギーがミュージカルにはあって、好きなんです。ただ、観るのとやるのとでは大違い。今回は福田(雄一)さんが演出ということもあって、ほんと大変です(笑)。
井上 福田さんのときは、とにかくふざけないといけないみたいな強迫観念があるから(笑)。でも、稽古で見ているかぎり、楽しげに歌ったり、踊ったりしていて、初めてのミュージカルで大変という感じはしないですけどね。
吉沢 いやいや、大変です。立ち稽古が始まって、ちょっと楽しめるようになってきたなという感じはあるんですけど、歌稽古のときや振り付けのときはもう吐きそうでした。
井上 そうだったの? 全然わからなかった。
吉沢 初めて全員で歌合わせしたとき、周りがすごすぎて、ひとりだけ素人が交じっている感じで、これがミュージカルかって思い知らされました。芳雄さんがまたすごくて、歌がうまいのは当たり前なんですけど、お芝居しているときと歌っているときの声のトーンがまったく変わらない。芝居の流れからすっと歌に入っていく感じがほんとに見事で、もう全然違うなって。
井上 ミュージカルってやらなきゃいけないことが多いんですよね。お芝居に加えて、歌ったり、踊ったりしないといけない。その準備というか、立ち稽古にいくまでにやらなきゃいけないことが多くて、慣れるまでは大変だと思う。ただ、歌も踊りももとはお芝居の一環でやっているもので、あくまでもベースはお芝居です。声量や歌い方というのはテクニックの問題で、もちろんあるに越したことはないんでしょうけど、その点を含めても、吉沢くんはまったく問題ないですよ。
吉沢 ありがとうございます。芳雄さんにそう言ってもらえるのはほんとにうれしいです!
歌も踊りも台詞も、全部覚えているはずがない!?
吉沢 僕は今から本番が来るのが怖いんですけど(注:10月中旬に取材)、芳雄さんはどうですか? 平気ですか?
井上 いや、怖いですよ。本番が近づくたびにいつも、全部覚えているはずがないと思いますからね。歌も踊りも台詞も、こんなにいっぱいのことをやっているから、全部間違わずにできるはずがないって。
吉沢 芳雄さんでも本番で間違えたりすることがあるんですか?
井上 それがね、あまり間違えないんですよ(笑)。
吉沢 さすがです(笑)。
井上 怖いと思っているのは本当なんです。でも、1カ月とか稽古をしてきて蓄積されたものはあるし、緊張はするけど、緊張するがゆえに頭がクリアになるみたいな感覚もあるじゃないですか。実際にお客さんの前に立つとテンションも上がるし。だから、怖さもあるけど、楽しみなほうが多いかな。
吉沢 またしてもさすがです(笑)。
今月の名作椅子
「FAT BARSTOOL」。座る人の体を包み込み、どのようなポジションでも座りやすいようにデザインされているため、そのフォルムからは想像できない快適な座り心地を実現。座面と背部は成形ウレタンが使われ、金属製の脚は光沢のあるブラックラッカー仕上げ。
各¥150,000/トム・ディクソン ショップ(トム・ディクソン)
PROFILEよしざわ りょう●1994年、東京都生まれ。映画『キングダム』(’19)で日本アカデミー賞ほか各映画賞の助演男優賞を受賞。2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」では主人公の渋沢栄一を演じる。ジャケット¥128,000、パンツ¥64,000/エンケル(ダブレット) その他/スタイリスト私物
PROFILEいのうえ よしお●1979年、福岡県出身。東京藝術大学在学中の2000年に舞台『エリザベート』でデビュー。以後、多くの舞台で活躍する一方、歌手活動やドラマへの出演など、活動の幅を広げている。ジャケット¥62,000、パンツ¥28,000、ニット¥18,000、靴¥20,000/ジョイックスコーポレーション(LANVIN en Bleu)
SOURCE:SPUR 2021年1月号「吉沢 亮のTAKE YOUR SEAT」
interview & text: Masayuki Sawada photography: Jimi Franklin styling: Daisuke Araki (Ryo Yoshizawa), Naoki Yoshida (Yoshio Inoue), Takashi Imayoshi (prop) hair & make-up: Masanori Kobayashi 〈SHIMA〉(Ryo Yoshizawa), Kumiko Mizuno (Yoshio Inoue)