ロンドンの大英博物館で、日本国外では最大級のマンガ展が開幕した。この意欲的なエキシビションが実現した裏側には、ひとりのキュレーターの惜しみないマンガ愛がある
「意外かもしれませんが、日本のマンガはイギリスと無縁ではありません」。大英博物館で開幕した『The Citi exhibition Manga』展のキュレーター、ニコル・クーリッジ・ルマニエールはそう話す。この展覧会は、日本初の職業マンガ家である北澤楽天、岡本一平から、手塚治虫、鳥山明、萩尾望都、尾田栄一郎といった現代の作家までを取り上げ、日本マンガの成り立ちと独自の表現方法、つまり“マンガの読み方”を伝えるもの。単行本や原画に加え、コスプレやコミックマーケットなどの資料、マンガに着想を得た現代アート、井上雄彦の描き下ろし絵画やスタジオジブリを取材したドキュメント映像と見どころも豊富だ。
ニコル・クーリッジ・ルマニエール
大英博物館アジア部IFACハンダ日本美術キュレーター。セインズベリー日本藝術研究所研究担当所長も務める。写真は去る3月31日に閉店した東京・神保町のコミック高岡にて。彼女が東京在住のときに行きつけだったマンガ専門書店で、本展の会場内に店舗が再現されている
しかしなぜイギリスの博物館でマンガ展を? その疑問に彼女は先のように答え、こう続けた。「たとえば、日本で初めて吹き出しを用いた『正チャンの冒険』はイギリスのコミック『Pip, Squeak and Wilfred』に影響を受けたと言われています。現代の作品にもイギリスの作家ルイス・キャロルの不思議の国のアリス』をモチーフにしたものも多い。マンガにはイギリスと日本の文化的な“交わり”が見られるのです。もちろん大英博物館も日本のマンガと深い関係がある。日本の視覚文化の系譜に連なる葛飾北斎や河鍋暁斎の作品を収蔵しており、近年はマンガの原画もコレクションに加わっています」
“漫符(マンガの独特の表現記号)”をテーマにしたこうの史代の『ギガタウン 漫符図譜』。そのキャラクター“みみちゃん”が本展にも登場し、来場者にマンガの読み方を伝える
大英博物館での原画展ののちに完成した星野之宣の『大英博物館の大冒険』(『宗像教授異考録』14・15巻/小学館 に収録)。主人公の宗像伝奇(むなかた ただすく)が、大英博物館の収蔵品を狙うテロリストと戦う本作には、ルマニエールもキャラクターとして登場
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大英博物館が収蔵する、中村 光の『聖セイント☆おにいさん』第10巻/講談社 のグラフィック。ブッダとイエスが東京・立川で共同生活をする、ルマニエールお気に入りのコメディ
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SOURCE:「A Display of Passion」By T JAPAN New York Times Style Magazine:JAPAN BY MASANOBU MATSUMOTO, PHOTOGRAPHS BY KIKUKO USUYAMA JUNE 05, 2019
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