「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
結婚会見を開いたあびる優と才賀紀左衛門('14年9月19日)
第73回 あびる優
「事実は小説より奇なり」などと申しますが、『週刊文春』7月28日号に掲載された《あびる優が告発120分 前夫・才賀紀左衛門の「モラハラDV」と7歳娘「違法連れ去り」》を読んで、「これはヤバい」と絶句したのは私だけではないはず。
タレント・あびる優と格闘家・才賀紀左衛門は2014年に結婚し、1児を授かりますが2019年に離婚しています。2020年12月19日配信の『AERA dot.』の才賀のインタビュー記事によると、才賀が勝手に離婚届を提出し、親権をあびるに譲らなかった原因を「優の酒癖の悪さ、お酒との関わり方を知っているからです。その悪癖を考えると、どうしても娘を渡すことができません」と、離婚の原因が暗にあびるにあると指摘しています。
こういう時、イメージ商売の芸能人はすぐに会見を開きそうなものですが、あびるは沈黙を守った。このことで、「才賀の言っていることが本当だ」「あびる優が悪い」と思い込んだ人もいたかもしれません。
「離婚したらタダの俺になる」と離婚を拒んでいた
しかし、今回の『週刊文春』であびるが独白したところによると、結婚直後から「お前は俺のATMなんだから、しっかり働けよ」などとモラハラを受け、暴力も振るわれていたため、離婚したかったそうです。しかし、才賀は「離婚したらタダの俺になる」と「有名人の夫」という肩書きを失うことを恐れて、離婚を拒んでいたというのです。なので、才賀が離婚届を勝手に出したことはあびるにとってはある意味ラッキーで、表で争うことをせず、離婚直後から東京家裁にお子さんの親権者変更と引き渡しの申し立てをしていたといいます。
昨年、親権者があびるに変更され、引き渡しが確定されたものの、才賀はお子さんをあびるに渡していない、つまり、今は違法に連れ去っている状態にあるそうです。同記事で、弁護士はイギリスやフランスでは、才賀のように裁判で引き渡しが決まったのに従わない場合は刑事罰が科されるけれど、日本にはそれがない。故に“連れ去ったもの勝ち”になっていると解説しています。
あびるは、金銭の支払いを求めることで、間接的に子どもの引き渡しを強制する間接強制執行の申し立てをし、高裁は才賀に「引き渡しをしない場合、1日あたり4万円支払うこと」を命じています。支払いの総額は700万円を超しているそうですが、一切支払われていないそうです。
才賀ブログの頻繁な更新を見てわく疑念
家裁の決定に従わない、お金も払わない。それだけで背筋がゾクっとするヤバさですが、それだけではないのです。お子さんは、ある時からあびるをママではなく、優ちゃんと呼ぶようになり、その理由を「ママじゃないから。優ちゃん。人間でもないし。動物だよ」とあびるを母親として認めていないかのような発言をしていますが、家裁の調査官は「(才賀による)強力な刷り込みがあったものと推察される」と、才賀が子どもを手元におくために、なりふり構わぬ手段を取った可能性を示唆しています。
子どもまでなした夫婦が別れを決断するまでには、第三者にはうかがい知れぬ事情がいろいろあるのでしょう。才賀にもいろいろ言い分はあると思いますが、だからといって、家裁の判断に従わないでいいことにはなりません。
親権の変更を世間に公表しないまま、ブログでは「育児を健気に頑張るシングルファザー」、事実婚のパートナーを得た後は「多様性を実現する新しい家族」をアピールしてきた才賀。
「家族が一番」を連発する才賀のブログはアメブロのパパ部門で1位に輝いていますし、妊娠中のパートナーもブログを開設するなど、今後も“家族売り”する気マンマンのように私には見えます。
『週刊女性PRIME』で2018年8月22日に配信された記事《小林麻耶さん、海老蔵と同じポルシェに乗り換え!? ブログ収入で安泰の日々》によると、アメブロでは有名人に対して、PVに応じて広告収入が入る仕組みになっていると解説しています。ブログを書いてお金がもらえるなんて夢のような話だと思う人もいるでしょうが、よく考えるとそう簡単なことではありません。まず、有名人になることが難しいわけですし、たくさんブログを書くにもネタがいるのです。その点、才賀の場合、「元妻が有名人」ということもあって知名度はあるでしょうし、「パパの子育て」というライバルが少ないブルーオーシャンでの競争ですから、断然有利なわけです。
しかし、お子さんがあびるのもとに行ってしまったら、ブログのネタも「健気に頑張るパパ」の肩書きもなくなり、更新ができなくなってしまうでしょう。才賀はブログをかなり頻繁に更新していますが、それって自分の懐のためでは? という疑念がわいてくるのです。
ジャガー横田の夫・木下博勝医師との共通点
それにしても、最近は「有名人の(元)妻を持つ夫」のお騒がせが目に付くように思います。
例えば、ジャガー横田の夫、木下博勝医師。YouTubeチャンネル「ジャガー横田ファミリーチャンネル」で、長男・大維志くんの高校受験の合否をオンタイムでさらして話題になりましたが、お子さんが無事高校に入っても“さらしグセ”が止むことはありません。今度は学校名を公表し、「寮母の作るメシがまずい」と個人が特定されかねない発言までして炎上しました。寮母発言に関しては謝罪したものの、定期テストの点数を公表するなど、当分この方針でやっていくようです。お子さんの話にかこつけて、「生物は全国模試で満点だった」とちょいちょい自分の話をするあたり、木下氏は自分のアピールをしたいのかなと思えなくもありません。
「有名人妻の(元)夫」は気質がオラオラなところもよく似ています。上述したとおり、才賀はあびるにモラハラを指摘されていますし、ブログを見る限り、現在のパートナーに対しても同じような感じです。
才賀の6月1日のオフィシャルブログでは《この日絵莉が体調悪くて僕が仕事の資料を絵莉に手伝ってもらおうと思っていた時、絵莉が「ごめん体調悪いから無理」と言われなんかムカつく。と僕は思って絵莉に「お前なんやねん!もう知らんわ」と言っていたら(後略)》と体調が悪いパートナーを気遣うことなく、自分の仕事を手伝わせようとする姿がモラハラではないかと話題になりました。
木下氏は過去に『週刊文春』で准看護師へのパワハラを報じられましたし(木下氏は事実無根と反論)、「ジャガー横田ファミリーチャンネル」を見ていると、大維志くんが礼儀を欠いた発言をしても注意することはなく、「それは昭和の考え方」ととがめるほうを非難しています。その一方で、ジャガーの意見に対しては同調しないなど、結構なオレサマ感が漂っています。でも、木下氏のクリニックの名は、ジャガークリニック。有名人妻の有効活用といったところでしょうか。
もっとも、妻の名前を利用して自分が前に出ようという、ある種の図々しさや野心がなければ、有名人を妻にしようとは思わないのかもしれません。逆に言うと、有名人でありながら、当時はほぼ一般人だった才賀を受け入れる、あびるのような有名人女性は、根が従順というかあまり計算高いタイプではないのかもしれません。
芸能人と一般人が出会えるようになった時代に注意すべきこと
日本では長いこと、カップルの収入や社会的地位は男性のほうが上であるほうが好ましいと考えられてきました。今から27年前、女優・田中美佐子は、7歳年下のお笑い芸人Take2・深沢と結婚しましたが、人気女優と駆け出しの芸人という“格差”のために、田中は自分からプロポーズしたものの、保留されてしまったと『徹子の部屋』(テレビ朝日系)で話していましたが、自分より稼いでいる女性にプロポーズするなんてとんでもないというのは、芸能界のみならず、一般人の世界でも“常識”だったのです。
しかし、ジェンダーフリーの時代が到来し、SNSも発達して、芸能人にコンタクトを取ることが絶対に不可能という時代ではなくなりました。お笑いコンビ・フォーリンラブのバービーは、インスタグラムのDMで知り合った6歳年下の一般男性と結婚しましたが、今後、一般人と芸能人というカップルも増えていくのかもしれません。けれど、忘れてならないのが、有名人と一般人カップルがこじれた場合、いろいろな情報がさらされてヤバいことになるのは、有名人のほうなのです。
夫婦は助け合うのが基本ですが、自分を利用しようとしていないか、野心が大きすぎないか。あびるのような有名人女性は、一度考えてみてもいいかもしれません。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」