覚えてる? 懐かしのアイスたち
斬新なパッケージが話題に
「昭和の時代に家庭用冷蔵庫が普及して以降、アイスはますます身近なものになりました。明治期には考えられないほどアイスの種類も豊富になり、私たちの生活を彩ってくれる欠かせない存在です」
「懐かしアイスと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、雪印乳業から1978年に発売された『宝石箱』です。バニラアイスの中にフルーツの香りがついたカラフルな氷粒がちりばめられていて、まさに宝石箱のようにキラキラと輝くカップアイス。CMには絶大な人気を誇るピンク・レディーが起用され、“唇に宝石よ!”という決めゼリフも話題になりました。
『宝石箱』と同様に、斬新なパッケージで話題を集めたのが『アイスバーガー』だ。
「ドライアップルが入ったラクトアイスをスポンジ生地で挟み、全体をチョコレートでコーティングしたハンバーガー型のアイスです。マクドナルドが日本に上陸し、ハンバーガーが若者の間で大ブームになった時代背景を受けて生み出されました。当時のハンバーガーの容器を模したプラスチック製のパッケージデザインもかなりのインパクトがあっておもしろいですね」
「丸い棒に挿したバニラアイスをチョコとナッツでコーティングした円柱状のアイスバーで、つい最近まで売られていたので誰しも一度は親しんだ味ではないでしょうか。1979年に九州限定で発売された後、全国発売されるようになった経緯もあり、発売当初は九州で人気を誇る、ばってん荒川さんがCMキャラクターを務めていました」
『うまか棒』と同じく、長きにわたり愛され続けてきた定番の棒アイスといえば『ダブルソーダ』が挙がるだろう。
「1965年に発売された『ソーダアイス』を前身として、1983年にエスキモーブランドで発売されました。至ってシンプルなソーダ味のアイスなのですが、持ち手の木の棒が2本あって、真ん中から割ることができるのが最大の特徴。きょうだいや友達とはんぶんこできるアイスというコンセプトだったのですが、なかなかうまく2等分できずに、いびつな形で分け合うことになった……なんて思い出を持つ人も多いようです」
「バニラアイスといえば青系パッケージ」の立役者
「1953年の前身商品発売以降、世代を超えて愛されてきた“ザ・日本のバニラ”です。バニラアイスのパッケージは青系のものが主流ですが、そのイメージのルーツは『バニラブルー』だといっても過言ではありません。
「ドイツ語で“愛する人”という意味の『リーベンデール』は、北海道産の乳原料を使うといったこだわりの商品でした。1980年代は高級バニラアイスの競争も激しく、1984年にはハーゲンダッツなどの外国ブランドも日本に上陸してきました。そのなかでも洗練された白いパッケージと繊細な味わいを誇る『リーベンデール』はひときわ目立つ存在だったと思います」
「アイスは含まれる乳固形分や乳脂肪分の違いによって“アイスクリーム”“アイスミルク”“ラクトアイス”に分けられます。そのなかでも植物油脂を使ったラクトアイスの世界を開拓したのが『イタリアーノ』。安価ながらも高い満足感が得られる味わいを表現していて、ガム製造などで香料のノウハウを持つ“フレーバーの魔術師”ともいえるロッテならではの商品です」
「ミルクアイスでチョコをコーティングするという、当時としては新感覚の味わいでした。セミスイート、マイルドの2タイプに加え、ストレート、コニャックレーズン、アーモンドなどのラインナップも増えました。現在はホームユースの『キャデリーヌ マルチ』のみ販売されています。当時のアイスパッケージには値段が大きく表記されていたのも、懐かしいですね」
「アイスキャンディーの中にかためのゼリーのようなグミが入った、独特な食感が楽しめる商品です。幼少期に食べてすごくハマった記憶があります。
「チョコレートをソーダアイスで包み、さらにソーダ味のアイスキャンディーでコーティングするという3層構造のアイスバーです。チョコレートとソーダの組み合わせというのはなかなか想像できないと思いますが、その斬新すぎる味わいがクセになるアイスでした。ポップなゴリラのキャラクターにも子ども心をガッチリつかまれましたね」
「実は流通の関係で、アイスの新商品が市場に出る曜日がほぼ決まっています。スーパーでは月曜、コンビニでは火曜に新商品が並ぶことが多いので、ぜひチェックしてみてください」
シズリーナ荒井さんセレクト!
懐かしアイス 10選
『宝石箱』雪印乳業/1978年
『アイスバーガー』森永製菓/1979年
『明治うまか棒』明治乳業/1979年
「うまか」=おいしいという博多弁の商品名。九州から全国に広がったロングセラー商品。
『ダブルソーダ』森永乳業/1983年
『リーベンデール』雪印乳業/1982年
『イタリアーノ』ロッテ/1972年
『バニラブルー』雪印乳業/1974年
『キャデリーヌ』江崎グリコ/1984年
『グミキャンバー』赤城乳業/1990年
『ソーダコング』カネボウ食品/1991年
お話を聞いたのは……
アイス評論家
シズリーナ荒井さん
取材・文/吉信 武