ライバー配信者が抱える闇とは……(写真はイメージです)
「最近、ライバーとそのマネジメント事務所とのトラブルの相談が増えています。そのなかには高校生など若年層からの相談も少なくありません」
「ウチに入ると稼げるよ」
「芸能人が所属する芸能事務所と同様に、ライバーが所属する“ライバー事務所”というものが存在します。ライバー事務所の主な役割は芸能事務所と同じくマネジメント。動画の内容についてのアドバイスであったり、配信頻度についての助言といったサポートがあります。そのほか、オフィシャルパートナーやオーガナイザーなどとして、公式アカウント発行ができる代理店として活動することもあったりします」(舟橋弁護士、以下同)
「“ウチに入ると稼げるよ”などと誘われ事務所に入るのですが、特にマネジメントをしてくれない、また金銭面のトラブルが起こる。これらによって事務所との信頼関係が崩れ、ライバーは“やめたい”と思う。相談で最も多いのが、この“やめたい”という相談です。しかし、そこで事務所側が、“契約の縛りがあるからやめられないよ”、“やめるなら何年間は活動できないよ”、“契約の途中でやめるなら違約金が発生するよ”といったことを言い出すのです」
契約書はLINEやインスタのメッセージで
「ライバーというのは、“新しい職業”であることもあり、事務所に所属する際、契約書などきちんとした書面がないことがすごく多いんですね。ライバー事務所によるスカウト自体も、LINEやInstagramのメッセージで行われていることも多々。契約という大事な話が、それらのメッセージで行われており、書面に残されていない。
「スカウトされて、きちんと契約内容を吟味する人もいれば、スカウトされて嬉しいと飛びついてしまう子もいる。事務所が出す条件に盲目的に返事をしてしまって、“所属”となってしまう。配信収入の一部が事務所に入りますから、ライバーさんを抱えれば抱えるほど、事務所にとっては美味しい。
多くのライバーを抱え、頑張っている事務所ももちろんありますが、十分にマネジメントができていない事務所も多い。下請け的な事務所に仕事を丸投げしているところもあります。ライバー側は、“なんで最初の人たちじゃなくて、違う事務所と話しているんだろう?”なんて状況になることも」
「たとえば所属する際のLINEのメッセージで、“違約金がありますが、それでもいいですか?”と来て、それに対してOKした。そうなると、契約上は一応成り立ってしまいます」
“途中解約が出来ない”、“解約するには違約金がかかる”、“解約後、数年間は活動できない”。ライバー相談者たちの悩み。このような理不尽な言い分は、法律的にまかりとおるのか。
芸能業界における競業避止義務は…
「たとえば、“何年間か活動出来ない”、“同じような仕事は出来ない”といったことは、法的に“競業避止”と言ってよく争いになります。たとえば技術系の開発職にある人が転職する場合、会社で得たノウハウを持って転職します。そこで同じ業種に転職されると他社が元会社で得たノウハウなどで儲かって、元の会社は割を食うといったことがあり得ます。
ライバーが身を守るためにすべきこと
「たとえば大規模な企業とのコラボ案件があったとして、そういった仕事を事務所も与えていて、その途中でライバーが仕事をやめる、契約をやめますとなったとします。ライバーとライバー事務所は法律的には“準委任”という関係にある場合があります。この場合は民法の規定上、“いつでも契約解除をしてOK”というものがあります。ただそうは言っても、例えば、事務所に損害を与えるような一定の場合には契約を解除することによって発生する損害を払わなくてはならないという規定があります。事務所の辞め方や予定されていた仕事の内容によっては損害賠償が成り立つ可能性はあります。ただ、注意して欲しいのは、単純に契約書において違約金を定めてあるから、絶対に払わなくてはなりません、とはなりません。違約金を求められたりした場合には、必ず弁護士に相談した方が良いでしょう」
「ライバー事務所はやはり、まだ“出来立て”の事務所が少なくありません。顧問弁護士をつけるなど、法的な部分をしっかりやっていこうという事務所も出てきましたが、一方でまったく進めていない事務所があるのも実情です。ライバー事務所に所属することが悪いわけではありませんし、メリットも多くあります。他方でフリーでやることも楽な面もあれば、大変な面もあります。ただ、契約をするにしても、その際、事務所は何をやってくれるのか。そして逆に自分は何をやらなくてはいけないのか。事務所を辞めるときにはどのような制限があるか。対価はどうなるのか。まずこのあたりをきちんとはっきりさせるべきです。