滝沢ガレソ氏
「タレコミ」の中身
「強い立場の人、いわゆる『上級国民』たちに、一矢報いてほしい。きっとそう期待されているんじゃないかと思っています。
山本太郎さんとか、NHK党の立花さん、ガーシーさんが支持されるのと、同じ理由ではないでしょうか。あらゆることが既得権益でがんじがらめになっている今、世の中を是正するためには、組織を一度中からぶっ壊してくれる「破天荒」を送り込むしかない。そんな思いを感じます」(滝沢氏)
例えば「学校でいじめにあった」場合、子供たちの相談相手は親や先生などいわゆる「大人たち」になる。ただ、子どもからすると、大人相手は相談がしづらい。そもそも学校という組織は事なかれ主義であることが多いため、いじめの相談をしてもまともに取り合ってもらえないこともある。会社も同様だ。
「つまり、インフルエンサーが一種の『駆け込み寺』として機能しているんだと思います」(滝沢氏)
山本一郎氏に弁護士を紹介してもらう
その後、まとめる対象はゲームにとどまらず、社会全体の出来事へと広がっていた。そんな中“暴露系インフルエンサー”に変わっていったのは、ある事件がきっかけだった。
「とあるeスポーツの大手チームが、選手を無給で働かせていたという告発を取りあげたことがありました。複数の証言や証拠が寄せられ、ネットで公開すると大きな反響を呼び、そのチームは事実上の活動停止となりました。
最近では、熊本のある学校で生徒への体罰問題が浮上し、学校側が会見を開いた後に、“実は監督が裏でこんなことを言っていた”という告発を公開したことも大きな注目を集めました」(滝沢氏)
「まだ訴えられたことはありませんが、訴訟のための開示請求を受けたことは3回あります。ブロガーの山本一郎さんに弁護士を紹介していただき、開示請求を拒否することができました。
「正義感は敵」
「正義感は敵だと思っています。自分を殺し、世間の皆さんが読みたがるニュースかどうか、という軸だけで判断しています。
“社会を正そう”というより、単に“みんなで盛り上がろう”という気持ちに近いかもしれません。私が何をやりたいかより、皆さんが私に何をやってほしいかを考えています。例えば告発しづらいことを、僕が代わりに告発すると、皆さんが喜んでくれる。それが僕のモチベーションになります」
「自分のためにやっているわけじゃなく、むしろ自分を殺してやっている感じ」(滝沢氏)
世界で広がる「告発」
「他国でも同じような事情があって、“上級国民”に声をあげられなかった人々が、SNSを使って告発することが増えていると思います。同時に、日本人がアジア圏でやらかしたネタも、僕のところに送られてきます。
普段は大手企業のサラリーマン
「かつて僕に開示請求をした人に、いわゆる反社とつながっている疑惑がある人物がいました。他のところでも僕はきっと相当な恨みを買っていると思います。いつかさらわれたり刺されたりしてもおかしくないとは思います」
「会社では一生懸命やったところで、給料の少額アップと引き換えに責任や業務量がどかんと増すだけなので、基本的に省エネで生きています。典型的なサボリーマン、窓際族です。ほとんどの同僚からできないやつと思われていると思いますし、自分もその方が楽だと思っています。
「いまは特に目標もありません。かつてはフォロワー数を増やすという目標もあったのですが、50万人を超えると、あまり気にしなくなりました。強いて言えば、殺されないことが目標です(笑)」
【取材・文/泰梨沙子(はた・りさこ)フリージャーナリスト。テレビ局で海外ニュース翻訳、共同通信系NNAにてタイ駐在を経て独立。】