ピエール瀧
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──かなり衝撃の大きいニュースでしたね。
「あれほど才能がある方ですし、このまま順調にずっと成功され続けるのかなと思っていたので驚きました……。ただ、ニュースを見る限り、そこまでピエールさんを悪く言う人が多くなかったというのが印象的でした。一部で、“高架下の自転車置き場で立ちションをしていた”という近隣住民のこぼれ話も報じられていましたが……」
──毎日のように続報が出てきて、めまぐるしかったです。
「日本では珍しい薬物ということもあり、ワイドショーがコカインの使い方などをたくさん特集していたのも記憶に新しいです。あるニュース番組ではコカインの化学式まで紹介していましたし、ほかの番組でも覚せい剤などほかの薬物との比較をフリップにまとめていましたが、かなりしっかりとした出来でした。
──辛酸さんが普段からウォッチされている海外セレブも薬物がらみの報道が多いですよね。
「海外セレブのケイト・モスもかつてコカインで話題になりましたね。なりふり構わず、机でなく地べたに粉のラインを引いて吸ってたというワイルドな逸話もあるとか。適当な台すら近くになかったのでしょうか……。まさにコカイン番長です。
──今回のピエールさんの事件は過去作品の放送自粛やCDなどの音楽、出演しているゲームまで販売停止・回収となったことについても賛否がありましたね。
「コンプライアンスが厳しい現代。すぐ芸能人が引退したりとか、作品がお蔵入りになっていますが、作品制作に関わったスタッフの気持を考えると残念ですよね。クスリも心中もやった太宰治が教科書に載っているわけですし、もうちょっと心を広く持ってもいいんじゃないかとは思いました。
常人には見えないモノ
──ピエールさん、電気グルーヴさんについての印象は?
「ピエールさんにお会いしたときは普通に面白い方だなと思いましたし、高校生のとき電気グルーヴが好きで、彼らが出したプレイステーションのゲームもやっていました。すごくシュールなゲームで、流れてくるボールペンにキャップをかぶせていくだけといった、今思えば“すごい発想だな”というミニゲームがとても印象的でしたね。
──ワイドショーなどでも「クスリの力を使って生み出された彼の作品はドーピングなのでは」といった厳しい声も各所から聞かれましたね。
「是非は置いておくとして、確かに報道の後だと、色々と“クスリの力なのでは?”と穿(うが)った見方をしてしまうというのは事実としてあるかもしれません。インスタをのぞいても少し気になる写真が……。
──麻薬取締部もピエールさんのインスタを常にチェックして“キメている日”を見極めていたのかもしれませんね……。ピエールさんが罪を償ったあと、電気グルーヴがどうなってしまうのか気になりますが。
「電気グルーヴが手がける音楽は海外でも相当な人気だと聞きますし、今後、活動の場は日本でなく世界になるのかもしれません。
──大混乱を生んだ今回の逮捕劇、ネットでも非難の声が多くみられました。
「人は誰しも何かに依存していると思うんですね。それは例えばチョコレートやタピオカ、アルコールかもしれないし、あるいはペットの犬や猫を溺愛しているかもしれない。スマホやゲームも脳の報酬系を刺激し、依存性が生まれるという意味ではドラッグと同じかもしれません。
──その関係かどうかわかりませんが、カラオケ店に行ったら、デンモクの履歴にほかの客が入れたであろう『Shangri-la』が多くみられました。
「確かにニュースで曲がたくさん流れることで“歌いたくなる”ということはありますよね。私もASKAさんが逮捕されたとき『SAY YES』が頭のなかでずっと回っていました。光GENJIの赤坂さんのときは『ガラスの十代』だったり……。逆に飢餓感が煽られるのでしょうか。
辛酸なめ子/漫画家・コラムニスト。
東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)『おしゃ修行』(双葉社)『魂活道場』(学研)、『ヌルラン』(太田出版)など。