ピエール瀧の作品は幻となるのか
<映画の上映は有料かつ鑑賞の意思を持ったお客様が来場し鑑賞するメディアであり、テレビ放映またはCMなどのメディアとは性質が異なります>(作品HPより)ということが、決断の大きな理由だ。
「やらない」がベター
「元TOKIO・山口達也の強制わいせつや、ノンスタイル井上の当て逃げ、脱税騒動の板東英二など、収録ずみのバラエティーでは、存在がなかったように出演部分をカットしたりトリミングして放送されたこともあります。その技術が“神編集”と言われていますが、現場が大混乱したのは間違いないですね」
「ピエール瀧の地元、静岡の局で制作された彼がメインMCを務める番組は、過去に収録されたものだとテロップで表示し対応しました。『作品に罪はない』ということであれば、この処置で問題ないと思います。でも、コンプライアンスに細心の注意を払わなければならない現在では、余計な苦情や抗議を避けるために、『やらない』という判断が一番ベターなんでしょうね。
そういう意味では、今回の映画のノーカット公開という、ユーザーの判断で選ぶというのは大きな変化だと思います。有料のBS放送や、お金を払って購入するCDやDVDなどの回収や販売停止の対応も、今後は変わっていく可能性があります」
破天荒なパフォーマンス
「例えば同じく薬物で逮捕されたASKAは、チャゲアスやソロの作品の回収と販売停止となりましたが、約3年後に販売が再開されました。ほかにも酒井法子や槇原敬之や岡村靖幸、古くは井上陽水や研ナオコなど、作品が完全に封印されることはありませんでした。電気グルーヴの作品も、今後、再発売される可能性は高いです」
「ピエールの破天荒なパフォーマンスやトークは、電気グルーヴの大きな魅力のひとつでした。でも、この一件があったことで笑いづらいものになり、本人も以前のようなパフォーマンスをしにくいのではないでしょうか」(同)
「近年だとアニメ『おそ松さん』の1話に“問題”があり(製作側は「製作委員会の判断により」とし、具体的な理由は発表していない)、配信の停止と、DVDとBDは1話未収録となりました。そういう意味ではピエール版『いだてん』も、幻の作品となることは間違いないですね」(同)
<取材・文/渋谷恭太郎>