『HERO』撮影現場での木村拓哉
俳優・木村拓哉(48)史上、“最大の恋愛ドラマ”は、『ロングバケーション』(1996年/フジテレビ系)でも『ビューティフルライフ』(2000年/TBS系)でもなく、実は『HERO』(2001年/フジテレビ系)だったんじゃないでしょうか?
『HERO』20周年、2人の恋模様は?
今からちょうど20年前の2001年1月クールに放送された『HERO』は、社会現象をも巻き起こすという名作となりました。
ストーリーは、元ヤンで高校中退という経歴ながら司法試験をクリアした型破りな検事・久利生公平(木村拓哉)が、生真面目な検察事務官である雨宮舞子(松たか子)とのコンビで捜査活動を行い、真相を突き止めていくというもの。平均視聴率34.3%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)という怪物並みの数字を残した伝説のドラマです。
さて、『HERO』は検事による事件解決ものドラマであり、恋愛ドラマではありません。
ではなぜ、恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラーである筆者が、『HERO』が俳優・木村拓哉史上、“最大の恋愛ドラマ”だと考えているのかーー。
久利生と雨宮のだらだら恋愛15年史
『HERO』では久利生と雨宮が惹かれ合うという恋愛要素も描かれていましたが、素直になれないふたりの関係は、2001年の第1期ドラマ全11話を擁しても遅々として進まず……。
第1期・最終話のラストで、那覇地検石垣支部に飛ばされることになった久利生は仲間たちにきちんと挨拶もせず、大きなバッグを手にそのまま東京を去ろうとしていましたが、そんな彼の前に雨宮が現れ、二人の関係性が少し前進したところで幕を下ろします。雨宮から“恋”に一歩踏み出した形ですが、恋人になることはありませんでした。
2007年公開の劇場版・第1弾では、空白の6年間が明らかに。雨宮が石垣島まで久利生に会いに行ったりしたものの、特に進展はなく、6年間、ほぼ放置プレイ。雨宮が「あれ以来、音沙汰ナシでしたね、久利生さん」とご機嫌斜めに愚痴るのも納得です。
ですが劇場版・第1弾のラストシーンで、久利生が雨宮に「約束します 離しません」というメッセージを伝え、キスをして終幕。こうしてふたりは晴れて恋人同士になり、めでたしめでたし、と思ったのですが、その恋の行方は2015年公開の劇場版でぼんやりと明かされます。
劇場版・第2弾で雨宮は検事となって再登場。しかし劇場版・第1弾の後、間もなくしてふたりはまた会わなくなったようで、この劇場版・第2弾で約8年ぶりに再会したとのこと。
ただ、この劇場版・第2弾の終盤で雨宮は、現在の久利生の検察事務官である麻木千佳(北川景子)に、久利生のことを「大好きだった」と言い、プロポーズされていた恋人の年上弁護士に結婚できないということを伝えています。
そして、久利生に対し「久利生さんと同じ道を歩きます、私」と告げる雨宮。すれ違っあとに雨宮が一瞬立ち止まるも、振り返らずに笑顔で再び歩いていくというのが二人のラストシーンとなりました。
恋愛偏差値40以下の久利生、その鬼の所業とは?
率直に言って、こんなにダラダラした恋愛は現実でもドラマでも、なかなかお目にかかれません。
この久利生公平という男、検事としてさまざまな難事件の真相を究明してきた、きれ者。ですが、あえて言葉を選ばずに言わせていただくと、恋愛に関しては恋愛偏差値40にも満たないダメンズですよね。
自分も雨宮のことが好きなくせに、積極性を見せることはごくごく稀で、恋の進展はたいてい雨宮任せ。恋愛に不慣れな雨宮がせっかく勇気を振り絞って一歩踏み出して、石垣島まで会いに行ったのに、ちゃんと恋人らしいことはしてあげないわけです。
検事の仕事に人生を賭けていて、捜査活動でいつもご多忙なのはわかります。それでも雨宮が好きなのもわかります。
ですから百万歩譲って、ドラマ・第1期から、劇場版・第1弾の6年間放置したのは許しましょう。忙しくて付き合えないなら、きちんとケジメを付けて、突き放してあげるという優しさもあったはず……とは思いますが、まぁ許しましょう。
けど「離しません」宣言してキスしていたのはいったい。
6年放置という過程を経て、とうとう結ばれた相手とまたすぐに会わなくなって、次の再会が8年後。鬼の所業にもほどがある。
そう、2001年に始まった久利生と雨宮の恋愛ドラマは、微妙な関係ながらちょっと進展し、2007年にようやくキスまでいき、しかしすぐに疎遠になり、2015年にまた微妙な関係に戻るという、……足掛け15年も『HERO』ファンをヤキモキさせているのです。
さらに言うなら、今後また『HERO』の続編が作られる可能性も少なからずあるでしょう。ですから、直近の劇場版・第2弾で結ばれたわけではないものの、気持ちを通じ合わせたふたりの恋愛模様は、20年経った2021年現在も“終わっていない”とも言えるのです。
こんなにも長く結論が出ない恋愛は、木村拓哉史上どころか日本のドラマ史上でも類を見ないのではないでしょうか。もし『HERO』続編があるなら、今度こそ久利生と雨宮の恋愛に決着がつくのか……。そんな2人の付かず離れずの関係がいつまでも気になってしまうのが俳優・木村拓哉史上、“最大の恋愛ドラマ”たる所以なのです。
PROFILE●堺屋 大地(さかいや だいち)●恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー、恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』(文藝春秋)、『日刊SPA!』(扶桑社)、『Business Journal』(サイゾー)などに寄稿している。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。
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