『サスケ』の2人。(左)奥山裕次(右)北清水雄太。出身地の埼玉県毛呂山町観光大使も務める
「いまだに、1店舗でCDが5000枚も売れるなんてことはないみたいで、関係者の人にも“本当にすごいことだよ”と言われますね。電車に乗ると隣の人たちが自分たちの曲の話をしていたり、自分のことなのになんだか不思議な感じでした」(奥山裕次)
「当時、メジャーデビューに向けて、作った曲を事務所の人に聴いてもらっていたんですが、2年くらいはボツばかりで……。『青いベンチ』も最初はボツ曲だったんです。とはいえ、2年近く頑張ってきたし、最後の思い出づくりに地元で500枚だけ出すか、くらいの感じでしたね。自分たちでできたばかりのCDを持って行って、置いてもらえるように頼みました」(北清水雄太)
「クラスが一緒だったんですが、学園祭をきっかけに仲よくなりました。それからよくよく話してみると、幼稚園も一緒だったことがわかったんです。家に帰って昔の写真を見てみたら、確かに一緒に写っていて、急激に距離が縮まりました」(奥山)
「高校卒業後、相方は東京に進学したんですが、僕は沖縄のホテルに就職したんです。だから2年間は離れて暮らしていたんですよ。当時は携帯電話がなかったので、文通していましたね」(奥山)
もともと芸人になりたかった
「2人ともお笑いが好きだったので、芸人になろうという話になったんです。でも、どうやってなったらいいかわからなくて……。そんなとき、世間でストリートライブが盛んだということを耳にして、2人ともギターをやっていたので、遊びの一環として大宮駅で歌ったのが、サスケができたきっかけです。カラオケに行くのもお金がかかるし、だったら自分でギター弾いて歌えばいいじゃん、というノリでしたね」(奥山)
「お客さんの反応がすごくよかったんです。圧倒的にみんなから人気でした」(奥山)
「通販もしていなかったので、大宮まで足を運んで買ってくださって。本当にありがたかったですね」(北清水)
「毎週200枚~300枚くらいコンスタントに売れていましたが、ランキングでは120位~130位くらいをウロウロしていましたね。まだSNSがない時代でしたが、インターネットの掲示板が少し流行りだしていたので検索してみると、《友達から教えてもらったけど、めっちゃいい曲!》とか《彼氏から聞いて好きになった》とか、たくさんの書き込みがありました。それを見て、すごい広がり方をしているなと」(北清水)
『青いベンチ』という、一見普通そうに思えて特徴的なタイトルだが、モチーフはあったのだろうか。
「青春期の誰もが感じる恋心を歌にしているので、その部分での“リアル”はあるんですけど、彼女を駅のベンチで待っていたりという10代の恋愛は、僕自身の実体験ではないです。
高校生の教科書にも載った
「“すごいことが起きているね”という話はしていました。音楽ランキングを掲載していた『オリコンウィークリー』という雑誌は毎週買っていましたね。やっぱり、順位が上がっていくと気分も高揚しますし、家族もそういうのを見せると喜ぶんです。友達から“CD買ったよ!”とサインを頼まれるのもうれしかったです」(奥山)
「5年間活動しましたが、その後はなかなか思うようにヒットが出ず、契約を終了することに。クビではあるんですけど、自分たちの意思でもあったという感じです。契約終了より解散を決めたことのほうが先でしたね」(北清水)
「解散を言われたとき、驚きはしましたけど、当時僕も含め、そういう雰囲気があったんだと思います。僕には1人で音楽をやる選択肢はなかったので、マネージャーという裏方の道に進みました。スケジュール管理やタレントさんの送迎などをしていましたね。大変なこともありましたが、それまでの経験でタレント側の気持ちもわかる部分があったので、とても充実した日々でした」(奥山)
「僕はソロでライブをしたり、ミニアルバムを出したりしていました。もともと、“歌うことは大好きだけど、人前に出るのが得意ではない”という相反した部分があるんですが、相方の奥山の存在があったからこそ一歩踏み出せたり、ステージに立てたりしていたんだなと実感しましたね」(北清水)
もう1度やってみるか
「記念に単発のライブをしようか、という話をしていたんです。あれよあれよという間に再結成になりました。解散期間中も『青いベンチ』がいろいろなランキングに入ったり曲が残り続けていて、それが僕らの財産としてすごいことだなという思いがあって」(北清水)
「5年間表舞台から離れていたので、やりたいけどできるかなという不安がありました。僕のなかではゼロに戻って、昔ストリートを始めたときと同じ気持ちで、“もう1度やってみるか!”という感じでしたね」(奥山)
「昨年から配信ライブで音楽を届けています。僕らにとって歌をステージで歌って直接届けることは活動の核でありすべてなので、早くたくさんの人に届けられる状態になってほしいですね」(北清水)
「配信ならではの楽しさもあったりするんですが、先日ひさびさにお客さんの前で歌う機会があったときに、ライブの楽しさに改めて気が付いて、熱量が違うなと思いました。なかなか元どおりの世の中にはならないと思いますが、配信と生のライブがバランスよくできるようになればいいなと思います」(奥山)