きょうだいコンプレックスに悩んだという(写真左から)有村藍里、田中みな実、浅田舞、武田鉄矢
「今年のお盆は帰らないですんでホッとしました。不謹慎かもしれないけど、妹と顔を合わせるのは、私にとってコロナ並みにきついので」
「オンライン帰省の段取りを長女の私にやらせようって魂胆ですよ。家の手伝いも、夫婦ゲンカの仲裁も、昔から面倒なことは私にばかり押しつけてきたんです。勉強のプレッシャーもすごかったのに、なぜか3つ下の妹は野放し。のびのび育って、社交的で甘え上手。そんな妹と比べては落ち込んで、みじめな気持ちになってしまうんです」
“自分は劣っているダメな人間だ”と思う
「幼いころから母に、優等生の姉と常に比較されてきました。姉は学区内でいちばん出来のいい高校、私は2番手だったので“お姉ちゃんは名門校なのに”と言われ続けたんです。ところが、大学になると私が国立、姉が公立で立場が逆転。にもかかわらず、母に合格を報告すると“お姉ちゃんがひがむから露骨に喜ぶな”って……」(60代女性)
「母は妹ばかり気にかけていて、私にはやさしくない。同じことをしても、妹だけが褒められているみたいに感じます」(40代女性)
「きょうだいコンプレックスを心理学の専門用語で『きょうだい間葛藤』『同胞葛藤』と言いますが、これは単純に“嫌い”ということではありません。ほかのきょうだいのほうが親に愛されているのではないかと感じ、“自分は劣っているダメな人間だ”と思う。その気持ちがきょうだいゆえに割り切れず、ときには相手に激しい憎しみを抱く、複雑な感情です」
「きょうだいへのコンプレックスをごまかしたまま成長すると、親の介護、遺産相続などの問題でもめることにつながり、骨肉の争いを生んでしまう原因にもなります」
浅田舞を追い詰めた「妹コンプレックス」
「子どものころにきょうだいで同じスポーツをやらせて、一方が才能を発揮すると、親はその子どもに労力や関心を注ぐようになります。それだけでもおもしろくないのに、片方ばかりが評価されるのは非常に悔しい。他人であればよきライバルとして戦い、切磋琢磨しながら友情を築くこともできるでしょうが、きょうだい間では難しい。ドロドロした関係になりがちです」(碓井さん)
有村藍里を整形に走らせた「顔面格差」
「依然として、男性よりも女性のほうがきれいであることへのプレッシャーが大きいように思います。たまたま姉妹のどちらかがかわいいと言われやすいと、片方は非常に悔しく、きょうだい仲に傷が入ってしまう」(碓井さん)
「弟のほうが、男であることを理由に進学などで優遇されていた」(50代女性)
「親の関心も入学祝いの品物も、長男である兄と妹の私では全然違った」(40代女性)
「特に地方では、男の子──それも長男は家の跡継ぎという感覚が強いため、別格扱いをされることがあります。大昔はそれがよしとされてきましたが、今はそんな時代でもありません。“なぜ長男ばかり”と不満がたまり、ほかのきょうだいたちとの軋轢のもとになっています」
武田鉄矢が苦悩した エリート兄との確執
「特に、いちばん上の子どもは、親にとって初めての子育てなので神経質に育てられがちな反面、たっぷりと愛情も手間もかけてもらえる。ちょっとしたことができただけで喜ばれ、期待もされます。ところが次の子が生まれると、これまでひとり占めできていた親の愛情を突然、奪われた感覚になってしまいます。
《母親は兄を誇りに思っていて、いつも兄貴ばかりかわいがっていて……僕は自分のことも見てほしいって思ってました》と、幼少期の苦悩を雑誌で明かしている。自身がフォークシンガーとして成功したことをきっかけに、兄との立場が逆転したものの、兄が亡くなる寸前まで、わだかまりは解けなかったそうだ。
「武田さんの場合、優秀だったお兄さんに母親の愛情が注がれていましたが、優秀だから愛されるパターンばかりではありません。言うことを聞かない、手のかかる子どもをよりかわいいと思う親もいるからです」(碓井さん)
「優秀だから愛されるのであれば、子どもは頑張ればいいでしょうが、逆となれば努力のしようがない。余計にこじれて心のしこりになります」
きょうだいを平等に愛するのはNG!?
「きょうだいと比べて、どっちが上で、どっちが下だという考えは捨てるべき。それぞれの個性を認めることで、相手に対する悔しさや葛藤を減らすことができます」
「謎解きブーム」の仕掛け人である松丸亮吾(24)は、メンタリストのDaiGo(33)を兄に持つ。慶應義塾大学を卒業した兄への対抗意識から東大受験に挑み現役合格したあと、謎解き問題を作るようになったとか。“DaiGoの弟”の呪縛を自らの力ではね返したのだ。
「“こんなコンプレックスがあったから頑張れた”というふうに、悔しさをバネに生きる力へと変えることが大切です」(碓井さん)
「自分をいちばんに愛してほしいと願うきょうだいそれぞれに、“どちらも同じようにかわいい”と言っても当然、納得はしないでしょう。子どもと2人きりのときに“あなたのことがいちばん好き”と、伝えてあげてください。そのひと言で子どもは心に余裕を持つことができます。自分の個性を信じることができて、親もわかってくれている。その安心感が重要なのです」
(取材・文/高橋ももこ)