(左から)田中真紀子、小池百合子、蓮舫、丸川珠代
仕事の特性を生かし政界へ
「日本の選挙のやり方は討論会を頻繁に行う海外と違い、街頭演説が大事。だから、声がよく聞こえるという長所が生きてくる。選挙カーのアナウンスもそうだし、当選後には議会中のやじも同じ。アナウンサーのスキルは政治の場で力を発揮するんです」(八幡さん)
「彼女はそもそもキャスターをやりたかったのではなく、政治家を最初から目指していて、その過程で名前を大きくするためにキャスターになった気がします。彼女の父親(医療関係の貿易を営んでいた故・勇二郎氏)も政治家を目指した人ですしね」(八幡さん)
「都知事になりたてのころ、彼女のファッションからは『頑張るぞ!』という意気込みがにじみ出ていました。今はそれが全然見えない。『オリンピックの時期だから』『サステナブルの会見だから』と、テーマに寄せた服を選んでいるんだろうけど、そこに意志が見えないんです。
あと、以前の小池さんはミニスカートをよくはいていましたが、今はほとんどパンツルック。きっと、守りに入ってしまっているんでしょうね。でも、ファッションは自分の主義主張を表すもの。守りに入らなくてもいいと思う。だから、またミニスカートをはいてほしいですね」(BALENCIAKOさん)
「噛みつくのが蓮舫さんの役割なので、攻撃的なショートヘアや戦闘服的な白いジャケットを彼女なりに計算して選んでいる気がします。でも、いつも同じ服を着ているのって『女性政治家ってこういうものでしょ』『この程度でいいでしょ?』という気持ちの表れなんですよね」(BALENCIAKOさん)
「彼女は天才的なアジテーターですね。テレビに出る人が野党の政治家として成功するのは極めて簡単なんです。言いたい放題言えばいい。まさにワイドショーの世界の延長です。野党の立場として、滑舌よく与党を批判すると国民にウケるわけですから」(八幡さん)
「東大出身(東京大学経済学部経営学科卒)の女性らしい生き方を送っていると思います。世代的に彼女は、アナウンサー時代の職場でバリバリ働く男と同じように扱われなかったのでしょう。あと、経済学部を出た人材は社会的なことをいろいろとやっていきたいという気持ちを持っている。
期待の湧かないファッション
「白の上下にインナーは赤とか、着こなしがすごく古いですよね。女性政治家のコスプレをしているみたい。だから野暮ったくなってしまうんです」
『半沢直樹』(TBS系)で江口のりこ演じる国土交通大臣・白井亜希子が常に着用していたように、今や白いジャケットは女性政治家のアイコンだ。
「シャツもジャケットもおじさんみたいな印象。男にナメられないように女性っぽさを排除しようという意識が見えますが、そこに自分なりのセンスがない。まじめかもしれませんが、何かやってくれそう、変えてくれそうという期待も湧かないですね」(BALENCIAKOさん)
「政策はおろか、自分の主義主張もないのではないでしょうか。ただ自分がスポットライトを浴びることができそうな方向に寄っているだけの人でしょう」
「田中眞紀子さんは、きれいにスーツを着こなしていて素敵です。彼女には『国民が私という人を選び、票を入れてくれたんだ』という意識がある。
だから、世間が抱く政治家像に自ら寄せていくなんてことは決してしませんでした。
自分の着たいものを着て政治の場に打って出た。ほかの政治家は田中さんみたいに自分の見え方のブランディングをもっとちゃんとしたほうがいいし、小池さんもミニスカートをもっとドンドンはけばいいと思います」(BALENCIAKOさん)
女子アナが活躍の場を求める理由
「石井さんは元キャスターというより、頭のいい帰国子女がああでもないこうでもないとやっているうちに政治家になったと捉えたほうが適当だと思います」(八幡さん)
「ただ、ほかのアナウンサー出身の政治家と小池百合子は一緒にできないでしょう。たまに彼女と会うと、前回いつどこで会ったのかを完璧に覚えているし、本当に記憶力がいい。与党の一流の政治家になるにはある種の管理能力が不可欠ですが、なんだかんだ言って小池百合子は別格です」(八幡さん)
「この人こそ個性ですよね。いいとか悪いとかではなく、もう石井苗子そのまま。別に議員にならなくたって今着ている服をきっと着るのだと思います。本来、そうあるべきなんですよね。こういう議員がもっと増えてもいいのに」
「例えば、安倍昭恵さんってよくも悪くもフットワークが軽い人だった。だから、式典で場違いな格好をしてしまったのが本当にもったいないです。外見さえちゃんとすれば、国民からもっと好感を持たれる人だと思う。その点、田中眞紀子さんはファッションの重要性をわかっていました。実は、田中さんはちゃんとスタイリストをつけていたそうですよ」
「彼女の父親は元東大総長の加藤一郎で、母方の祖父は東条内閣の大東亜大臣・青木一男。資産家だから自分で選挙資金を出そうと思えば出せただろうし、機転も利くから政界で活躍できそうな素質がある。
「先ほども言ったように、まず“声が通る”というのがあります。あと、最近は状況が変わってきましたが、かつての女性アナウンサーはお飾りの役割しか与えられず、メインキャスターを任される機会がほとんどなかった。
彼女たちにとって、スキャンダルさえも人生の糧なのかもしれない。
世間に知られることは、政治家にとっても重要な要素なのだから──。
おもなアナウンサー・キャスター出身の女性政治家
☆は話題となったスキャンダル
小池百合子 ●1952年7月15日生まれ
現職/東京都知事
[経歴]
『竹村健一の世相講談』(日本テレビ系)アシスタントキャスター/1979~1985
『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)初代キャスター/1988~1992
第16回参議院議員選挙で初当選/1992年7月
☆学歴詐称疑惑
蓮舫 ●1967年11月28日生まれ
現職/立憲民主党所属の参議院議員、立憲民主党代表代行
[経歴]
第14回クラリオンガールに選ばれる/1988
『スーパーワイド』(TBS系)司会/1992~1993
『ステーションEYE』(テレビ朝日系)メインキャスター/1993~1995
北京大学留学/1995~1997
第20回参議院議員選挙で初当選/2004年7月
☆事業仕分けでのスーパーコンピューター開発批判
☆国会内のファッション雑誌撮影
☆度重なるTwitterでの失言
☆二重国籍問題
丸川珠代 ●1971年1月19日生まれ
現職/東京オリパラ担当大臣(自民党所属の参議院議員)
[経歴]
テレビ朝日アナウンサー/1993~2007
第21回参議院議員選挙で初当選/2007年7月
☆選挙権がないまま参院選立候補
☆やじで「愚か者めが」と発言
石垣のりこ ●1974年8月1日生まれ
現職/立憲民主党所属の参議院議員
[経歴]
エフエム仙台アナウンサー/1998~(現在は休職中?)
第25回参議院議員選挙で初当選/2019年7月
☆民間人に対するレイシスト発言
☆安倍首相辞任に関するTwitterでの発言
☆著述家菅野完との不倫関係報道
石井苗子 ●1954年2月25日生まれ
現職/日本維新の会所属の参議院議員
[経歴]
『CBSドキュメント』(TBS系)キャスター/1988~1993
第24回参議院議員選挙で初当選/2016年7月
☆プライベートのヌード写真流出
☆交通費から職員にボーナス支給疑惑
小宮山洋子 ●1948年9月17日生まれ
現職/ジャーナリスト(2013年1月政界引退を表明)
[経歴]
NHKアナウンサー/1972~1998
第18回参議院議員選挙で初当選/1998年7月
第46回衆議院議員総選挙(2012年12月)で落選
龍円愛梨 ●1977年3月31日生まれ
現職/都民ファーストの会所属の東京都議会議員
[経歴]
テレビ朝日アナウンサー/1999~2006
テレビ朝日報道局社会部記者/2006~2011
政治塾「希望の塾」(主宰:小池百合子)に参加/2016
東京都議会議員選挙で初当選/2017年
畑恵 ●1962年2月15日生まれ
現職/作新学院理事長
[経歴]
NHKアナウンサー/1984~1989
1989年、NHK退局。フリーランスのニュースキャスターとして『サンデー・プロジェクト』(テレビ朝日系)をはじめ、複数の報道番組を担当
EC(現EU)の招聘を機にパリ留学/1992
第17回参議院議員選挙で初当選/1995年7月
☆1996年夏、衆議院議員・船田元との「政界の失楽園」と呼ばれるほどの不倫関係が騒がれた。お互い関係を否定したものの、船田が長年連れ添った妻と‘99年3月に離婚すると、そのわずか2か月後に再婚した
林久美子 ●1972年9月7日生まれ
現職/タレント、コメンテーター
[経歴]
びわ湖放送(BBC)に入社し、報道部キャスターに/1995
2002年に退社し、講演活動や月刊誌などへの寄稿を行う。2003年からは湖東コミュニティネットワークのキャスターも務めた
第20回参議院議員選挙で初当選/2004年7月
参議院議員を2期12年務めた後、第24回参議院議員選挙(2016年7月)で落選
☆2019年に出演した政治バラエティー番組で「もう、選挙には出ません」と、事実上政治家を引退したことを明かした
◯お話を聞いたのは◯
八幡和郎さん●東大法学部卒。通商産業省入省。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官など歴任。退官後、徳島文理大教授、国士舘大大学院客員教授に。現在は作家、評論家として活動。
BALENCIAKO(バレンシアコ)さん●'93年ごろよりスタイリストとして始動。活動範囲は広告、ファッション、芸能。ブランドのディレクション、イベントのオーガナイズ、アートを通じた途上国への教育支援活動も。
(取材・文/寺西ジャジューカ)