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「いま、児童相談所(以下、児相)のあり方に対する論議が巻き起こっています」
「こういった虐待事件が起きるたび、“児相は1人の職員が数十人もの問題があるケースを抱えていて大変だ”とクローズアップされ、児相側も、人手が足りないとか、予算が足りないといった言い訳をする。マスコミもその論調に乗っかって、児相の人員を増やせ、予算を増やせとなるのが常でね。マスコミは、官庁の意にそぐわないことは言わないだらしない権力追随型。報道の自由度で世界67位の国たるゆえんです」(同教授)
「そもそも児相はいらない。不要だと思うんです」
児相が「いらない」理由
「児相の職員は県の職員で、以前は土木関連に携わっていたような職員が、たらい回し的に就いている。児相の職員で最も多いのが児童福祉司ですが、わずかな期間、研修を受けただけでその職に就く。なんら特別なトレーニングもなしにね。つまり、その道の専門家とは言いがたい」(水岡教授)
「厚労省は児童虐待防止法(以下、児虐法)を何度も改正して児相の力を強化してきました。国連はそれを4回も実地調査して、多くの子どもたちが家族から引き離され、親の同意もなく家庭裁判所の許可がなくても最大2か月間も収容されていることを問題視しています。明確な保護基準を設定し、司法検査を導入することも必要。そうした仕組みは虐待の抑止にもなるんですが、まったくそうしようとしていないのが実態です」(同)
「児相はいわば“子ども収容所”。そこでは暴言、暴力、虐待、わいせつな行為などが横行していて、家庭で虐待を受けていた子どもたちが被害に遭っているんです。乱暴に言えば、児相職員が子どもたちを拉致して強引に入所させている。国連は、児相で人権侵害があり、一時保護を閉鎖しろとも言っているんですけどね」(同)
児相が存続する裏にある「児相利権」
「終戦時は戦災孤児、浮浪児が多かった。その子たちの先行きが危ぶまれるだけではなく、治安的にもよくなかった。そういう時代に児童福祉法ができて、子どもたちを収容するシステムができたんですね」(同)
「そこで省益を失いたくない厚労省は児童虐待といった部分に注目し、省益確保、成長分野として児相を拡大しはじめた。養護施設などからの突き上げで“子どもを回してくれ”という要求が児相に殺到したこともあってね。それで児虐法をつくった。これは児相の所長が意のままに子どもを拉致してしまうもので、国家的な誘拐です」(同)
「児相には財政的インセンティブ(誘因)があるんです。実は子ども1人を1か月、児相に入れると、35万円の単価になるんですね。それに子どもの見込み数をかけたものが、児相の年度予算になる。児相は“子どもの数と予算は比例しない”と否定します。たしかに児相の予算は半分が人口に比例していますが、残りの半分は子どもの数に比例しているんです。そうして年々、児相の予算は膨らんできています。児相の職員はある意味、ブラック企業のセールスマン。彼らが子どもたちを拉致して児相に入れることを“拉致ノルマ”と呼んでいます」(同)
虐待は警察へ一本化すればいい
「虐待も本来的には傷害事件でしょう。それは警察の分野なのです。そこへ途中から厚労省が割って入ってきた。だから、虐待は警察へ一本化すればいい。警察を持ち上げる気はさらさらないのですが、少なくとも警察は法律的なプロですからね。児相よりは専門的でマシですよ。米国は子どもの権利条約を批准していませんけれども、虐待を扱う基準が明確で、警察が担っていますので、日本よりはいいと思う」(同)
「児相のような施設で働くための専門学校もありますし、訓練を受けながら、一生のキャリアとして働けます。さらに、虐待の通告受理と調査をする施設、対応を判断する施設、それを実行する施設、啓発や予防をする施設など、役割や権限を分けた組織を設け、それぞれが相互に関与しながら、自治体や学校、警察、裁判所などと連携しているんです」(同)
「いや、本気でやれば、できると思いますよ。でも、現況のように省益を優先し、ある側面では互いが介入しないような縦割りの日本ではとうてい無理でしょうね。現在、厚労省は専門性を持たせようと、新たな国家資格をつくることを考えていますが、そうなると、また厚労省の天下り先が増えるだけ。省益拡大につながるでしょう」(同)
みずおか・ふじお◎経済地理学者。一橋大学名誉教授。経済・社会の空間理論や、社会福祉学などを研究。主な著書・共著に『経済・社会の地理学』(有斐閣)、『児相利権:「子ども虐待防止」の名でなされる児童相談所の人権蹂躙と国民統制』(八朔社)など。