「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「良いヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
工藤静香
第7回 工藤静香
『週刊文春』主催の企画「女が嫌いな女ランキング2018」で、トップに輝いた工藤静香。クイーンに輝いたのは今回が初めてですが、もとから女性に人気があるタイプではないように思います。
そもそも、工藤サンは女性ウケを気にしていないのではないでしょうか。
ソロデビューしてまもなく、『FU-JI-TSU』を歌っていた頃の工藤サンが『ザ・ベストテン』(TBS系)に出演した時のこと。結婚の話題となり、「どんな結婚式がしたいか?」と聞かれた工藤サンは「結婚式に限らず、すべて旦那さんに任せて、好きなようにしてほしい」と答えます。「夫に浮気をされたらどうしますか?」という質問には「自分に魅力がないんだから、しょうがないんじゃないですか?」とオトコを責めず、すべてオトコに合わせるスタンスを明らかにします。
その一方で、おニャン子クラブ時代を振り返る際、「コンサートの時に静香だけ、どうしてレーザービームを使うの? って言われた」など、オンナに嫉妬された話を必ずといっていいほどする。
また、オトコを盗ることもやぶさかでなさそうです。工藤サンは一時、中山美穂と親しいアピールをしていましたが、突然お互いの名前を出さなくなります。その理由は、トシちゃんこと田原俊彦。当時、中山美穂と交際し、結婚も秒読みと言われていました。『新春かくし芸大会』(フジテレビ系)で三人は共演しますが、なぜかトシちゃんと工藤サンが現場で手をつないでおり、それを中山美穂が目撃したことで、工藤サンと決裂したという記事を週刊誌で読みました。
自慢も多い。
『Matthew’s Best Hit TV』(テレビ朝日系)に出演した工藤サンは、「どんな料理が得意ですか?」と聞かれ「わかんなぁ~い」と答えます。料理が苦手ということでは決してなく、「だって、冷蔵庫にあるもので、な~んでも作っちゃう人だからぁ」と付け加えます。これって「なんだって作れる」「しかも、全部おいしいから、どれが得意料理かは決められない」という手の込んだ自慢と言えるでしょう。
マウンティングもする。
2児を出産し、仕事を控えていた工藤サンですが、2006年に『明石家さんちゃんねる』(TBS系)に女優・飯島直子とレギュラー出演を果たします。二人は「仲良し」という触れ込みでした。当時、飯島はTUBEの前田亘輝と離婚してバツイチだったわけですが、そんな飯島に向かって、
「ぜひ、出産と育児を経験してほしい」
「子育てに比べれば、男女の愛なんて小さい」
とのたまうのです。こんなことを言ったら、飯島がリアクションに困るとは思わないのでしょうか。飯島が笑顔ながらも、無言だったのか印象的でした。
工藤サンの最大の嫌われポイント
オトコには従順、でも、オンナを悪く言う、人のオトコを盗る。自慢やマウンティングもする。女性に嫌われる要素を結構持っている工藤サンですが、最大の嫌われポイントは、工藤サンがSMAPを解散させたと感じる人がいるからではないでしょうか。
今思い返しても、よくわからないSMAPの解散劇。国民的アイドルグループでありながら、解散の会見もコンサートもない幕切れは、長年、心血注いで応援してきたファンにとって、到底納得できるものではないでしょう。キムタクが早々にジャニーズ事務所に残ることを宣言したため、この決断は工藤サンの命令だという説が浮上し、憎悪は工藤サンに向けられます。あまりに理不尽な解散劇に、キムタクを裏切り者と見る人もいるようです。
SMAP解散で工藤サンがおとなしくしているかと思うとそんなことはなく、インスタグラムを開設。もともと見せたがりなタイプなのに、キムタクの妻ということで押さえつけられていた鬱憤(うっぷん)がたまっていたのでしょうか、人を選ぶセンスの手料理や手作りスイーツをアップしています。
SMAP解散後、自由を得たように見える工藤サンに神経を逆なでされるファンがいてもおかしくはない。また、愛娘Koki,が世界的に有名な女性誌『エル・ジャポン』(ハーベスト婦人画報社)で、いきなり表紙モデルという鮮烈なデビューを飾ったため、「娘のデビューの糸をひいている」と見る人もいるでしょう。
女性から見ればヤバい要素がてんこもりだということは理解できますが、工藤サンは「良いヤバさ」を持った人だと思うのです。
2007年に工藤さんは『SONGS』(NHK)に出演します。そこで、おニャン子クラブの生みの親、プロデューサーの秋元康氏と対談をしますが、秋元氏はおニャン子時代の工藤サンを振り返って「無理に自分を好きになってもらおうと思わないと言っていたことが印象に残っていた」と話していました。
嫌われクイーンに輝いてしまうくらいですから、工藤サンにアンチがいることは間違いありません。
けれど、オンナ受けを気にせず、ひたすらオトコに合わせたことで、キムタクと結婚できたのではないでしょうか。工藤サンはモテ女で、これまで交際をウワサされた元カレは、少年隊・植草克秀、光GENJI・諸星和己、YOSHIKIなど、その時代のトップを極めた人ばかり。女性に対して上から物を言う工藤さんですが、口ばっかり星人ではなく、ちゃんと結果を出しています。
芸能人を支えているのはファンの存在ですが、高額な料金にもかかわらず、工藤サンのディナーショーが毎年開かれ、ライブを行っていることから考えると、工藤サンを好きな人、つまり熱心なファンがいると考えてよいでしょう。週刊誌の企画に投票する人よりも、実際にお金と落としてくれるファンのほうが大事な存在であることは、言うまでもありません。
Koki,のデビューに関しても、子どもがデビューしたいと言ったときに、親が自分のコネクションを使ってサポートするのは当然でしょう。Koki,も工藤サンに深く感謝しているのではないでしょうか。
少し昔の話になりますが、工藤サンがキムタクと交際中に、種子島を旅行したことがあります。なぜか情報がマスコミに漏れ、二人は宿泊先を変えざるをえなくなります。急きょ、別荘を提供してくれた一般の人に工藤サンは深く感謝し、お礼の手紙とともに、トイレや台所など家中をぴかぴかに掃除して帰ったと『アサ芸プラス』が報じていました。
たくさんの人から好かれることは幸福への近道?
工藤サンといえば、独身時代に二世帯住宅を建て、親御さんの闘病をきっかけに同居を始めたそうです。親を含めて恩がある人、好きな人、自分に良くしてくれる人には、全力で恩を返すという方針なのではないでしょうか。
大事にしてくれる人を大事にするということは、利回りのいい人間関係を築くコツとも言えます。
SNSが浸透し、私たちは自宅にいて気軽に自分の意見を言えるようになりました。“好き”と“嫌い”が可視化される社会になっているとも言えるでしょう。
けれど、“好き”とは何か、はっきり定義できる人は少ないのではないでしょうか。SNSや人気投票における“好き”とは、単なる反射程度のもので、あまり深い意味はないように思うのです。
よく知らない人と自分が大切に思っている人、どちらに親切にされたほうが喜びを感じますか? 知らない人でもうれしいでしょうが、より強い幸福感を得られるのは後者でしょう。
私たちは「たくさんの人から好かれる」ことが幸福への近道と信じ込んでいますが、実際は自分が好きな対象を持つことが、幸福への近道なのです。ファンと家族という自分が大切にすべきものがはっきりしている工藤サンは、常に相思相愛、完全な幸福の中にいるのではないでしょうか。
あなたの大事な人は誰ですか?
その人に何をしてあげたいか、即答できますか?
工藤サンなら、「あのねぇ~」と例の口調ですぐに答えてくれる気がします。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。他に、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。
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