(写真左上から時計回り)ダウンタウン、マツコ・デラックス、中居正広、三田佳子、浜崎あゆみ
令和の『長者番付』、ランクインするのは誰?
「『長者番付』がスタートしたころは国全体に活気があった。毎年公示される高額納税者の名前を見て、“自分も頑張ろう”と思う、そんなムードがあったと思います」
「当時から上位にいる芸能人でランクインするのはダウンタウンの2人くらいでしょう。彼らの納税額が芸能人の中でいちばん多いと思います」
「吉永小百合、渡辺謙のギャラは高いので、そんなにたびたび出ていなくても数本の作品でランクインすると思います。かつて渥美清は寅さん1本で2000万円のギャラをもらっていたと言われています。中堅の代表は米倉涼子ですかね」
「音源がなかなか売れない時代。特に演歌や歌謡曲の歌手は厳しい。ランクインできるとしたら舟木一夫くらいじゃないかな。今年はできませんでしたが、彼は今でも1か月公演を行うなどしていますから」
「AKB48や乃木坂46などをプロデュースする作詞家の秋元康さんでしょう。彼は印税などでかなりの収入を得ているとみられます。同様のプロデューサーに小室哲哉やつんく♂もいたが、秋元さんが断トツ。きっと2位を大きく引き離して不動の1位だと思います」
「HIKAKINさんやはじめしゃちょーさん、ヒカルさんら人気ユーチューバーは上位にランクインすると思います。
「上場企業となると株主がいて、お金の動きは常に監視されている状態です。しかし芸能人はいわば個人事業主や中小企業が大半。どうしても監視の目が少なく、納税への意識が甘くなることも関係あると思います」(前出・同)
『長者番付』は、その時代をうつす鏡。そこで、高度経済成長期、バブル崩壊間際に“プレーバック!”
バブル直前の80年代は
空前のトットちゃんブーム
「突然ランクに名前が挙がる俳優がいるんですが、これは本業以外にも不動産売却などで収入があったことが理由ですね」ちなみに同年、歌手・松田聖子と『2億円結婚式』が話題となった俳優の神田正輝も4位5995万円にランクインしていた。結婚を機にCM出演依頼が相次いだからだそう。
「あのころ山城さんはいつもバラエティー番組に出ていたね」
【コラム1】そもそも『長者番付』って何?
「表向きは高額な納税で社会貢献している人を明らかにしようということですが、裏では“脱税を防ぐ狙い”ということでスタートしたと言われています。
【コラム2】なぜ『長者番付』は廃止されたの?
「廃止された明確な理由は明かされていません」
『長者番付』は1947年納税分(公示は'48年)から始まり、2004年分(公示は'05年)に廃止された。
「考えられる理由のひとつは個人情報保護の観点から」
「個人情報がファンらにわかってしまうため、5ページで説明したように公示逃れをする芸能人は少なくなかったようです」
90年代、第2次お笑いブーム到来で 下克上が始まる
「いちばん印象に残っているのが'95年のこと。三田(佳子)さんがダウンタウンの松本人志に納税額で抜かれ、2位に。彼が首位に躍り出たことでしょう」
「彼女は身内のスキャンダルが原因で、あっという間に転落した。三田さんはそれまで9年連続で首位でした。いつも印象のいい役をやっていて人気でしたから」
「あの会見もまずかったですね」(前出・石川さん)
「“できたお母さん”というイメージがとても強く、ギャップも大きかった。それが原因で仕事もなくなりはじめた」(前出・同)
小室哲哉は 2年で約21億円を納税
「(明石家)さんまやタモリも番組は多かったけど、あのころのダウンタウンやとんねるずはレギュラー番組も多く、勢いがあった」(同)
「彼ら第3世代のお笑いブームのスタートですね」(同)
小室は'96年分、'97年分の2年で合わせて約21億円を納税していたから驚きだ。
【コラム3】有名なのに名前が載らない理由は?
「有名なのにランクインしていない人がいるのはなぜ?」
「ひとつは確定申告をわざと期限後に申告。延滞税や無申告加算税などで所得税プラス1割ほどのペナルティーがありますが、公示され個人情報が明かされるよりいいと考える人はいたようです。
【コラム4】実は多い『漫画家』たちのランクイン
00年代、長者番付の終局
「このころのSMAPは5人で活動するよりも個々で活動することが多かった。役者としては木村くんのギャラが高かったが、中居くんはCMやバラエティー番組にいちばん多く出演、司会者としても稼いでいましたね。今でも彼は数字を取れる司会者の1人です」(前出・石川さん)
『長者番付』から振り返る芸能界の移り変わり。まさに栄枯盛衰を表している。
芸能人の収入は厳しく 音楽業界はさらに過酷
●テレビから動画配信、上場企業からITへ──
「今、芸能人の収入は厳しい。なぜならテレビ局にお金がないからです」
「ネットの台頭で番組になかなかスポンサーがつかない。そうなれば支払われるギャラも減ります」
「視聴率を取ってくれるタレントには高額なギャラを支払わなければなりませんが、一方で予算も圧迫している。菅田将暉らよくドラマで見る若手はいますが、人気はあってよく出ていても彼らはそんなにもらえていないでしょう」(前出・同)
音楽業界は、さらに過酷だ。音楽番組もほとんどなければ、音源も売れない。1980年代ごろまでは街中でどこでも流行りの歌謡曲が流れていて、誰もが知っていたという。
「あのころは40万枚売れれば大ヒット、30万枚売れれば3000万人は知っていると言われていました。しかし、いまは買った人しかその曲を知らないという状況がほとんどではないでしょうか」(同)
「私自身もユーチューブで配信していますが、いま多くのタレントさんたちが動画配信にも進出しています。娯楽が多様化して、テレビ離れが進んでいることを表しています」
「芸能人を見る私たちの関心も多様化しています。長者番付がもし今あれば、どんな様子を表すのでしょうね」
石川敏男さん
芸能レポーター。松竹映画宣伝部から女性週刊誌記者を経て、日本テレビで番組のレポーターとなり、以後は芸能界の情報レポーターとして活躍する
田淵宏明さん
税理士ユーチューバー。ヒロ☆総合会計事務所代表税理士。税務や会計のほか、登録者数16万人超の自身のチャンネルで税金のしくみや経営について動画配信