
キートン山田 撮影/森田晃博
『ちびまる子ちゃん』『ポツンと一軒家』のナレーションでおなじみのキートン山田が、半世紀にわたる声優人生に終止符を打つ。10年前から決めていた引退の理由、今後の人生設計を直撃!
人生の後片づけを元気なうちに
「想像以上に反響がありましたね。親戚や知人から“病気や、どこか悪いのではないか”と心配され、ファンの方からもたくさん手紙をいただきました」
「10年前から決めていたことです。65歳のときに同級生が定年を迎える年齢になって、自分はいつがいいのかずっと考えていました。
(番組が)30周年を迎えたことや75歳になって今後のことも考えて、人生の後片づけを元気なうちにしようと思ったのが理由です」
「ずっと健康で元気でいられる保証があればいいけど、倒れそうになってやるのはつらいし、周りにも迷惑をかけますから。
一生やるのも素晴らしいけど、自分の生き方をしたいというのがあった。(引退まで)10年かけてきたので心残りや一抹の寂しさというのもないし、後悔はないですね」

「もともとやっていた野菜づくりを本格的に楽しみながらやっていきたいです。仕事で東京と行き来しているときは、ちゃんと面倒が見られなかったので、これからは朝、起きるのも楽しみです」
「今は土づくりをしていて、早く種を買いに行きたいです。これからは葉物を植えます。野菜がとれる時期は、スーパーで買わずにすみます。畑仕事は腰が痛くなったりして結構、大変ですけど、時間を忘れてやっています」
心揺れたラスト収録、決まり文句は“天の声”

「平常心でやろうとは思ったけどマイクの前では、そうはいかなくて心揺れながら終わりました。(収録)前日は、普通に眠れたけど、終わった日は、なかなか寝つけなかったです。ホッとしていいはずなのに、なんか眠れなかった。普段は見ない(共演)メンバーが夢に出てきましたよ。これからだんだん(いろんな感情が)わいてくるのかなと思います」
「(卒業収録では)ちょっとした仕掛けがあって、最後は主役のTARAKOちゃんと一緒にやりたいと思ってお願いしたら(収録で彼女は)泣いていました」
「そのことは、番組が始まって何年かたってから聞きました。最初は、15秒の番宣のためのナレーションだと思っていたら(後日)レギュラーです、と言われた。題名や内容すらよく知らなくて、手抜きの絵じゃない? と思うくらいでした。でもそれが、こんなに長く続くとは思わなかったです。
「番組が好きで入り込んでいたら、自然に出てきた。天の声が僕にしゃべらせたようなつぶやきだったと思う。見ている人へのメッセージ“後半に続くよ”というね。ももこさんが台本に書いてくれたときはうれしかったね。
“一生の仕事”を模索、30代半ばの挫折と改名
「19歳のとき会社勤めに慣れてきて一生の仕事は何か、ほかにあるんじゃないかと思うようになったんです。子どものころは無口で、人と話すのが苦手。思ったことを口に出せないタイプでした。そんな性格だったので会社に入ってお得意さんと会うのも、人とのコミュニケーションも苦手でした」
「テレビのない時代に育ち、年1、2回見るのが娯楽だった映画の役者になりたいと思うようになりました。積極性がない男が、どきどきしながら応募して(入団OKの)返事がきたらまたどきどきしていたので結果、入団しても何もできない。でも1年間は通うと決めていました」

「インスタントラーメンやビール、全国展開する大手小売チェーンのCMに出演しました。当時、4畳半の家賃が1か月4500円でしたが(CM出演料は)6000円でした」
「声優も役者の一部、経験だと思ってやるようになったのがきっかけです」
『タイガーマスク』でデビューして以降、『ゲッターロボG』『一休さん』『サイボーグ009』など人気アニメのレギュラー声優を担当し、順風満帆な生活を送っていた。
しかし、30代半ばに挫折を味わった。
「家の購入ローンを抱え、3人の子どもがいましたが、レギュラーの仕事がなくなってアルバイトや内職でしのぐ生活。行き詰まっていましたが、新たに就職先を探す気にもなれませんでした」
「改名することに事務所はじめ関係者は猛反対でした。子どもにも“カッコ悪いからやめてよ”と言われて、賛成する人はひとりもいませんでした。思い切ったことをしないとダメになると焦りました。葛藤があったからこそ今があると思っています」
「ここまでできたことは不思議さと感謝しかないですね。才能でもないし、声がいいわけでもない。結局は出会いと運がよかったとしかいいようがない。自分で努力したことをあえていうなら、粘り強く途中でやめなかったことだけです」
“キートン節”が聞けなくなることを寂しく思うファンには、
「申し訳ない。でもCDやDVDで声は残るので勘弁してほしい」
人生の後片づけと第3の人生を充実

「モノがありすぎるので、すっきりさせたい。寝たきりになってからでは何もできないので、動けるうちに自分で判断したいです。今の僕にとって大事なことは人生の後片づけ。それには時間がかかると思っていて、とりあえず1回ゼロにしないとわからない。
「独身時代、子育て&仕事の時期があって、これからは第3の人生。そこがいちばん短いと思うし充実させたい。最後はそこが大事で幸せが決まる。昔はよかったとは言いたくないから、今がいちばんと言えて逝けたら人として生涯現役でいられたことだと思います」

3月28放送『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ系日曜夜6時~)
「ある春の一日」
【あらすじ】ある春の日。夜桜会のことを聞いたまる子。翌日、さくら家も夜桜会に行くことになったのだが、朝から次々に起こる不運。これは出かけるなという知らせ……? はたして、夜桜会には行けるのか?