ゆたぼんくんと父・中村幸也さん
「最初に彼から“学校へ行きたくない”と聞いたときは、なんとか学校に行かせることはできないかと考えました」
小学2年生までは毎日楽しく学校に通っていた
「小学2年生までは、毎日楽しく学校に通っていました。ですが、3年生になったとき、彼の中で“なぜみんな同じように通い、教室に座っているんだろう─”。大人の言い方をすれば、一律で教育を受けさせられていることに対して、子どもながらに疑問を覚えたみたいです」(幸也さん、以下同)
「怠惰から宿題を放棄したわけではなく、なぜ宿題をしなければいけないのか、宿題をする前にその理由を先生に聞きたかったんです。親として僕も、宿題をする意味を伝えたものの、ゆたぼんとしては学校から納得できる答えを求めていました。ところが、“ルールだから”という一辺倒の答えが返ってくるのみで、彼はさらに不信感を募らせてしまった」
「不登校には葛藤はありました。ですが、本人が行きたくないと言っているのに、無理やり行かせることは本当に彼のためになるのかなって。だったら、行きたくないという気持ちを受け入れて、そのうえで親ができることを最大限サポートするほうが、子どものためになるのではないかと思いました」
「これほど大きな騒動になるとは想像できませんでした」
「前例がないだけに批判は覚悟していました。賛否両論……とはいえ、7割が反対意見ですが、ゆたぼんが学校へ行かない選択をしたことに対する肯定的な意見もありました。本人がそうしたいというのであれば、親としてはサポートするのみだと励まされた」
「他人のものであれば叱りつけます。ですが、彼の卒業証書を彼がどう扱うかは自らの判断に任せます。“卒業証書なんだから大事にしろ”というのは価値観の押しつけでしかない」
「親の影響を受けて子どもが学校に行かないのであれば、娘たちも不登校になってますよね(笑)。僕は、子どもの気持ちを尊重することが大事だと思っているだけです。ゆたぼんは行きたくない、娘たちは楽しいから行きたい」
「たしかに、ゆたぼんは学校で体験できることを体験できないかもしれません。ですが、絶対に学校では体験できないことを体験している。不登校の子どもたちを集めてお泊まり会をするなど、友達をつくれるようにもしています」
毒親ではなく親バカ、強制的に命じない
「今はネットもあり、多様な学び方ができます。勉強に関しても、YouTubeや『スタディサプリ』などを使って、本人が勉強したいときに勉強しています」
「彼が中学校を卒業する年齢に達した時点で、どんな考えを持っているか。そこで、きちんと向き合うことだと思っています。学びたいのか働きたいのか、僕自身、中卒で大人になってから学びたいと思い、独学で高卒認定試験に合格した。彼が学びたいと思うのであれば、その環境をサポートします。YouTubeを続けたい、ビジネスを始めたい……、そのときに考えている気持ちを尊重したい」
「それは困るかもしれない」と笑いながらも、
「ニートなりにお金を稼ぐ生活はできないのかと提案すると思います。ニートなんだから働けという言い方はせずに、生活できるニートになればいいのではないかなって」
「勉強をしたい、社会に出たい。そういった子どもの“やりたい”という意志が大前提として必要で、最良のタイミングで親として何ができるか。強制的にあれをやれ、これをやりなさい、と子どもに言うようなことはしようと思わないです」
「サポートし続けた結果、慢心してしまったら……きっと彼の周りから人が離れていくと思うんですね。そうなったら痛い思いをして学ぶしかない。失敗させてあげるのも、後悔させてあげるのも、生きていくうえでは大事なことだと思います。
「理由を聞いたところ“自分は嫌々学校に行っていたのに自由に楽しく過ごしているゆたぼんが許せない” “俺も苦しんでいるんだからお前も苦しめ”といった、嫉妬心から書き込んだという人もいました」
「小中学生の不登校は年々増加しています。不登校の理由も、いじめだけではなく、多様化していて、学校という場所に合わない子どもが増えてきています。かつては学校しか学びの場はなかったですが、今はそうではない。自分たちが身をもって体感していることを伝え、学校以外にもさまざまな学びの機会があることを提示していきたい」
なかむら・ゆきや 大阪府生まれ。心理カウンセラーとしてLINEや電話、対面でカウンセリングを行う。YouTubeチャンネル『少年革命家ゆたぼん』(登録者数14.5万人)を配信するYouTuber・ゆたぼんのパパとしても知られる。
〈取材・文/我妻アヅ子〉