三浦春馬さん
『共感性』が働きすぎてつらくなる
《本当にショックで、ずっと落ち込んでいます》
《特に好きってわけじゃないけど、自分でも驚くほどショックが大きい。私も正直死にたいって思ってしまっている》
《あんなに才能に溢れた人がなぜ自殺したかったのか分からない。彼ほどの人間が死ぬなら自分が生きてていい理由があるのかと考えてしまう》
《ショックな訃報から1週間。ファンではないけど同い年ってこともあって、未だにネットで名前を見るたびにつらくなる》
「そもそも、知っている人が亡くなることは、人間が人生の中で受けるストレスのなかで、もっとも強いインパクトを持っています。ショックを受けて悲しんで、一度、思考を停止することにより、自分の心が混乱しすぎて壊れるのを防いでいるのです。
しかし、いちばん大きいのは私たちの中にある『共感性』、すなわち、心理的に他人に寄り添おうとする気持ちです。三浦さんの場合でいえば、自ら命を絶った彼の心境・友人や近しい人たちが受けた衝撃・現在制作中だった作品のゆくえなど、有名人ゆえに私たちは本質的な実態を知るよしがないことが多い。だからこそ、想像を膨らませる部分が大きくなり、あたかも自分がその苦しみや悲しみを体験しているがごとく、無意識に気持ちを働かせ過ぎてしまうのです」(藤井靖氏、以下同)
「生前の三浦さんのイメージは、誰からも好感を持たれるような人物でした。それゆえ、余計に“きっとかわいそうなことがあったんだ”“若くして亡くなるくらいだから、長い間、そうとう苦しかったに違いない”などと勝手に思いやすいのです。人の心の痛みがわかることはとても大事なことですが、自動的に共感性が働きすぎることで、必要以上に悲しくなったり、つらくなったり、苦しくなったりすることがあります」
誰かに胸中を話すことには大きな効果が
「三浦さんが亡くなったことで自分のなかの何かが刺激されたり、あらぬ思いが呼び起こされてしまったりする人は、まず“三浦さんの後を追う”なんてことは彼がもっとも望んでいないはずだ、と考えてほしいです。それから、自分が抱えている苦しみを話せる相手や頼れる相談先を探してみてほしいですね。
「もちろん、うまく伝えられるときとそうでないとき、両方あると思います。ただ、誰かに話を聞いてもらい、思いを共有するということは、自分の胸中を外側に出して形にする作業ですから心の整理ができますし、話している間に新たな心境や大事な何かに気づけることもあるでしょう」
もしも死にたくなったら30分耐えて
「自殺衝動が続くのは5~10分くらいの範囲だとされていて、私も“自分の衝動が抑えられない”という相談者からの質問に対しては“まず30分、耐えてみましょう。30分耐えて、できればそのまま寝てしまいましょう”とアドバイスすることがあります。
「三浦春馬さんが亡くなったことを本当の意味で受け入れるには、場合によっては年単位の時間がかかります。ですから、無理に忘れようとしないこと。私たちの人生のなかでの“ひとつの出来事”として位置づけるためには、むしろ彼のことを考え続けることも必要です。
情報の真偽はさまざまなので留意は必要ですが、ニュースに出ている情報から、生前の彼の思いを自分なりに冷静に考えてみるのもいいですし、定期的に彼の出演作品に触れるのでもよいでしょう。周りの誰かと彼の話をしてみるのも、自分の心を穏やかに保ことを助けます。そして、その過程こそが“彼は私たちの心のなかで生き続けている”ということに他ならないでしょう」
(取材・文/松本 果歩)