写真左から白鳥玉季、新井美羽
「才能と努力は50:50だと思います」
大河ドラマ『おんな城主 直虎』の井伊直虎の幼少期・おとわ、朝ドラ『わろてんか』ではヒロイン・てんの幼少期を演じた新井美羽ちゃん。大河ドラマのオーディションでは、満場一致で役を獲得。視聴者からも、“あの子の演技はすごい”と、神童ぶりを発揮した。
そして数多くのCMにも出演し、現在『凪のお暇』(TBS系)にて白石みすず(吉田羊)の娘・白石うららを演じる白鳥玉季ちゃんは、大人顔負けの演技で主演の黒木華とも堂々と渡り合っている。
そんなふたりをはじめ、多くの人気子役を抱える子役専門の芸能プロダクション・スマイルモンキー。代表取締役である落合すみ枝さんに、彼女たちのようなスーパーキッズの見つけ方と育て方を聞いた。
大事なのは笑顔、見た目のイメージ、話し方
「伸びると感じる子どもたちは、初めて会ったときの第一印象に惹きつけられる魅力があります」
と、スーパーキッズに共通するポイントを挙げる。
「特に“笑顔”“見た目のイメージ”“会話の話し方(内容)”。この3つは大切だと思います。美羽は面接で会ったときから明るく、裏表のない性格がすぐにわかりました。こういった子はオーディションでも個性が発揮され、審査員に、インパクトを与えることにつながります。逆に、親御さんの顔色を見ていたり、面接の練習感が出てしまうと魅力は半減してしまいますね」
数々の子役の面接をしてきた落合さんいわく、所属にいたる可能性のある子どもは、「5人に1人くらい」とのこと。しかも、スマイルモンキーの面接を受ける子どもたちの多くは、児童劇団経験者だという。それなりに練習や指導を受けている子でさえも、8割の確率で落とされることからも、甘くはない世界であることがうかがえる。
さらに、所属できたとしても、まだスタートラインに立ったにすぎない。ここから“天才”“神童”と呼ばれるようなひと握りのスター子役が生まれていくわけで、その競争は超シビア。活躍するためには、才能と努力、どちらが大事なのだろうか?
「50:50だと思います。スポーツ選手やアーティストではないので、圧倒的な才能が求められるかと問われると、そういうわけでもない。やはり本人が向上心を持って、努力し続ける力があるかどうかが大事です。そのためにも、家族を含めた子どもの環境は極めて大切だと思います」
中でも、落合さんは、
「子どもとの対話が、その子の感受性を伸ばすうえで欠かせない」と説明する。
「美味しかったら美味しい、きれいなものを見たらきれいというように、リアルな感情を伝えられる子どもじゃないと、子役は務まりません(笑)。子どもの素直な反応や感想は、日ごろの会話から養われるもの。家庭では、対話の機会をできるだけ持つようにしてあげてほしいですね」
“見られる意識”をどう持たせるか
そこで気になるのが、ステージママとは言わないまでも、親としてどれくらいの積極性を持つことが望ましいのかということ。
「頑張り屋のお母さん、お父さんのほうがいいと思います。というのも、私たちを含めた現場の人間と、きちんと意思疎通をとってくれると、スケジュール管理などスムーズに話が進みます。でも、度が過ぎないように! 立ち回りすぎるのは逆効果です」
ちなみに、大人になってもタレント活動や役者を続けたい場合は?
「私たちの事務所は、幼稚園~高校生までのタレントを専門としているため、18歳以上になった場合は本人の意思を尊重して、気持ちよく仕事を続けられるよう移籍を含めて、サポートしています。何かあれば、その都度、相談してくださいと伝えています」
ただし、「事務所、劇団によっては契約期間を結ぶため、即座に移籍できないケースもある。親御さんはそういった点にも留意して、お子さんと二人三脚で歩んでほしい」と付言する。
数々の説得力のあるアドバイス。さすが16年にわたって子役を見守ってきた第一線のプロ。「あくまで主観によるアドバイスですから、ほかの事務所は違うかもしれませんよ」と謙遜しつつも、次のような言葉を続ける。
「レッスン中に“おしっこ~”なんて言っている姿を見ると、オーディションでも同じことをするだろうなって(苦笑)。だからといって、“ダメでしょ!”と頭ごなしに怒るのはではなく、子どもたちに対して、人に見られているという基本的なシチュエーションをいかに教えてあげることができるかがポイント」
たしかに、寺田心くんの、人から見られていることを前提としたようなプロ意識たるやすさまじい! 「他事務所とはいえ、心くんの演技や立ち居振る舞いはすごい」と落合さんも感心するように、その道のプロすらうならせる子役たちは、見られているからこそ、求められているものを把握する能力に長けているのだ。
では、人から見られているという意識を持たせるにはどうすればいいのか?
「見られているときにやってはいけないようなある程度のルールを決めて、子どもらしさ、自分らしさを発揮できる態勢を整えてあげることでしょうか。単に注意したり怒ったりすると、しつけにはなるけど、厳しい子役の世界で個性を発揮するための力を育むことにはつながらないんですね。もちろん、子ども自身がそれに気がつけるかどうかも重要です」
いわば、子どもから子役になるとき、いかにギアチェンジができるかといった意識が必要というわけ。
また、子どもたちを萎縮させないように、事務所としても親近感を持って子役の子どもたちと接するようにしているそうだ。
「必ず名前は、下の名前で呼ぶようにしています。そして、親御さんもオーディションの合否に一喜一憂しますから、悩みは一緒に解決する、喜びは一緒に分かち合うことを心がけています。私は各マネージャーに、“優しいマネージャー”ではなく“尊敬されるマネージャー”になってくださいと伝えています。子どもも親御さんも、私たちを見て育っていくところも多分にありますから」
かつては、安達祐実に代表されるスター子役は、何年かに1人だった。しかし、今では毎年のように才能豊かな子役が誕生している。落合さんは、「昔と今では子どもの姿も変わりました」と話す。
「スマホが普及して以降、子どもたちのコミュニケーション能力は飛躍的に向上したと痛感します。ドラマ以外でも、子役が活躍する背景には、そういった対話力の向上があると思います。裏を返すと、親の知らないところでも子どもたちは勝手に何かを身につけてしまう。子どもに対して血の通った会話やコミュニケーションを忘れないようにしてあげてください」
「え!? あの人、子役だったの!」
実は芸歴が長い芸能人たち
えなりかずきや安達祐実のように、子役のイメージが強いまま活躍し続ける芸能人がいる一方、意外に子役出身と知られていない芸能人も少なくない。
例えば、今や日本を代表する俳優である小栗旬は、11歳のときに「児童劇団」に所属し、13歳のときに大河ドラマ『八代将軍吉宗』に出演。なんと翌年には、再び大河ドラマ『秀吉』に出演し、石田三成の幼少期という大役を演じているほど!
子役時代からスケールの大きい役を演じ続けているんだから、今の活躍も納得。ちなみに、奥さんの山田優も、11歳のときに沖縄アクターズスクールに合格。ほどなくして沖縄テレビでデビューしたというから夫婦ともに芸能エリートなんです。
大河ドラマといえば、三浦春馬も12歳のときに、『武蔵 MUSASHI』で武蔵の最初の弟子として出演。ブレイクのきっかけとなった『14才の母』出演時は、16歳だった。
同じくイケメン枠で言うなら、「劇団アカデミー」に所属し、堂本直宏の芸名で子役として舞台、ドラマなどに出演していた堂本剛も、意外に知られていない子役出身者のひとり。ジャニーズに履歴書を送らなかったら、そのままアイドルではなく俳優になっていたかも!?
アイドルつながりで意外な子役出身者は、総選挙で1位に輝いたこともある元AKB48の大島優子もそのひとり。7歳で「セントラル子供劇団」に所属すると、『ひよこたちの天使』で芸能界デビュー。その後、『アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜』などに出演している。
宮崎あおいは、中学生くらいから芸能界で目立つようになるも、4歳のときからCMや雑誌を中心に子役デビューを果たしている。海外ではジョディ・フォスターやライアン・ゴズリングなどが子役出身で大成している。
《PROFILE》
落合すみ枝さん ◎有限会社スマイルモンキー代表取締役。主に幼稚園から高校生のタレントたちが所属する芸能プロダクションとして、2003年に設立。現在、120名を超える子役・タレントが所属している。
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