田村優
「誰にも見つけられないスペースを見つけられ、プレー選択の決定がすごく早い。調子のよいときは、田村選手が投げたり蹴ったりしたときに“あ、そこにスペースがあったんだ”と見てるほうが気づくような。サモア戦もそんな感じでハマっていましたね」
「私もそうでしたけど、監督業でわが子をほっぽらかして、家庭を犠牲にしている部分がある。やっぱりそのなかで田村は父親を求めたんじゃないかと思いますね。彼の父親もラグビーで忙しいんでね。だから自分からラグビーに飛び込んだ」(吉岡監督、以下同)
「うちは県内では7年半負けてなかったんです。しかし、田村がキャプテンになった春に負けてしまった。秋の花園という本番に向けて田村は親友にキャプテンを預けて、ひと夏、鍛えたんです」
「残り3分の0対3のビハインドで、田村が見事にゴールキックを決めてくれた。それで同点になった後の最後のワンプレーで、彼がカウンターアタックを仕掛けて突破し、ここしかないところにロングパスを通して、逆転のトライを演出。
「当時から大物」の声も
「授業中にうるさかったから立たされて。そんな状況なのに、先生が黒板に向かう隙を突いて、隠れて弁当を食った。田村の父親に言ったら夜中に愛知からすっ飛んで来ましたね」
「父親がブラウン管のテレビを寝てる田村に向かって投げつけて帰ったと。田村はひじで払い除けたみたいですが、それからあいつは爆睡。親父がいるわけないから、夢だと思ったそうです。当時から大物でしたね。図太い(笑)」
「プレーだけを見たときに、これはものすごい才能だとは感じました。大成するだろうとも思いました。ただ、そうなるために努力ができるかどうか、というところでした」(吉田氏、以下同)
「私は、練習で力を抜いたり、気持ちを入れない選手はいっさい使わない。それまでレギュラーだった選手だろうが関係ないという基準を就任直後に示しました。どれだけ才能があっても、練習を適当にやっているような選手は仲間から信頼されない。田村にはそういうところがすごくあったので」
「このままの状態で田村を扱っていたら将来、彼が苦労してしまう。代表の人間たちもそんな選手は使わない。ラグビーは人に評価されてこそのスポーツ。それを教えるのは今しかないと思った。そのため、練習試合にあたるオープン戦で起用しませんでした」
「W杯直前の網走合宿に行ったら、主将のリーチマイケルが田村のことを絶賛していたのを聞いてすごくうれしかったね。周りから本当に信頼される人間に成長したなって」
夢に向かう田村に音楽界からも声援
「ワールドカップでのご活躍、毎回テレビの前で見させていただいています。4年前の『君だけのStory』に出演していただいて、もうそのときから、いや、それ以前から田村選手の中でワールドカップベスト8に向かっての日々の努力が始まっていたんだなぁと。
そして、田村選手がご活躍されるたびに、“たくさんのことを犠牲にしてきた”というあの言葉を思い出し、“勝つんだ!”という強い思いとゴールキックのときの強い視線に胸を打たれます。今、夢を勇気を元気を与えてもらってる人がたくさんいると思います。私もその中の1人です」